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【IS】何もかも間違ってるかもしれないインフィニット・ストラトス

作者:海戦型
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闖入劇場
  終幕 「さようなら、間違IS」

 
前書き
プロローグで気付いた人もいたかもしれない。
山田先生の勇気推しで疑問に思った人もいたかもしれない。
鈴のくだりで気付いた人も1人くらいはいたかもしれない。
他にもヒントはちらほらと。気付かれないだろうと思いつつ。
実はベルーナと友達3人の名前も・・・・・・いやいや流石にこれは誰にも気づかれていない筈だ。 

 
 
ベルーナ奪還作戦に当たっていた自衛隊あさがお部隊は、誘拐犯を発見するも同時に無人ISと思しき機影の迎撃に当たらざるを得なくなった。隊長である祇園寺は逡巡の末、部隊の3人を無人ISの迎撃に向かわせ、自分は所属不明機を駆るテロリストを抑える決断をした。

今、陸上自衛隊第一空挺団特務中隊は未だかつてない苦境に立たされようとしていた。



「おらぁぁぁぁぁぁぁッ!!」

D型装備の黒田が、展開した追加シールドをナックル代わりに無人ISの巨体を吹き飛ばす。瞬時加速を用いた拳は黒田が好んで使う戦法であり、その威力は生半可な武器を使うより余程有効打になりうる。腕に伝わる確かな手ごたえ。PICで吸収しきれないその拳で、吹き飛んだ敵ISは山に激突して土煙を上げる。

その攻撃の隙をついて左右から二機の無人ISが唸りを上げて飛び込んできた。不気味なほどに巨大なその両碗は異様な圧迫感を生み出し、無骨な腕がそのまま黒田にぶつかろうとする――が、そんな無人機を追い払うように一機のISが飛来した。

「副隊長のフォローは部下の務めぇ!ブッ飛んじまえーッ!!」

――清浦のA型装備打鉄がそのうちの一機を蹴り飛ばし、その反動で逆方向へと跳躍。展開したIS用の槍「御手杵(おてぎね)」を叩きこむ。槍の先端がギャリリ、と火花を散らしながら無人機の表面装甲を抉る。怯んだ隙を逃すまいと、そのまま清浦はA型装備の特徴でもあるミサイルランチャーの発射口を無人機に向け、躊躇いなく発射。連続で4発の小型ミサイルが次々に着弾して無人機は吹き飛ばされた。

同時に、C型装備の加藤が後方から発射した80口径大型ライフル「天駆(あまがけ)」の容赦ない狙撃が蹴り飛ばされたISに次々命中して火花を散らす。象の堅い皮膚さえ撃ち抜ける貫通力を誇る徹甲弾が着弾したISは、見えない誰かに殴られたように後ろに弾き飛ばされる――が。


敵を叩き落として起こった土煙の中から大型ビームが放たれる。照準は荒いがその火力はあさがお部隊の所持する火砲と比較しても非常に高い。同時にミサイルの爆炎から大きな機影が飛び出し、清浦に向かって連射ビームを発射。数発が装甲を掠り、避けそこなった清浦は苛立たしげに舌打ちした。加藤の射撃を受けたISも、その漆黒の装甲を貫くことは叶わず、のっぺりした頭部がぎしりと音を立てながらこちらを見た。

「チッ・・・あっちの方が図体がでかいな。こんなことならB型装備持って来ればよかったぜ」
「なんちゅう重装甲・・・・・・直撃したのに目標健在ですねぇ・・・軽くショック」
「出来るだけ口径の大きい80口径を持ってきたのに、装甲は抜けませんか・・・」

目標は三機とも健在。武装や装甲の欠損も一切なく、依然として無機質な存在感を振りまいてこちらににじり寄ってくる。その姿は図体の所為か異様な圧迫感を醸し出していた。
はっきり言って不味い状況だ。あのISが市街地の攻撃を最優先にしている訳ではないから足止めできているが、逆を言えばあの3機はこちらを行動不能にするまでいつまでも戦うだろう。火力と装甲ではあちらに分がある。装甲が厚ければその分絶対防御は発動しにくくなるが、そもそも人を必要としない無人ISに絶対防御の発動が起きるのかも眉唾だ。
清浦が黒田に耳打ちする。その表情は決して明るくはない。

「どうします副隊長?このまんまじゃプロレスになっちゃいますよー?」
「そうは言うがな・・・あそこまで硬いと集中攻撃で壊せるかも怪しいもんだ」

清浦の言うプロレスとはIS同士の消耗戦のことだ。互いに決定打を欠いたまま戦闘を続行し、どちらかが根負けするまで続く泥仕合。ことISはバリアエネルギーの所為で戦いが長期化しやすい。そしてプロレスになれば、そのバリアエネルギーの消耗が少ない方が勝つ。今この状況下に置いては――おそらく敵側に軍配が上がるだろう。

せめてもう一機。向こうのISの装甲を貫通するだけの装備があれば――
そう考えた刹那、加藤が通信。

「副隊長!戦闘宙域にIS反応!認識コードは更識のものです!」
「援軍か?通信回線を――」
『もう繋げてるぜ、副隊長さん!こちら学園所属IS”夏黄櫨”、吶喊させてもらう!!』

その途端、レーダーが捕捉した機影が、爆発的な速度を以て一気に3機の合間を駆け抜けた。

「「「ッ!?」」」

そのISは太陽の光を浴びて煌めく白銀の装甲を晒し、その手に持ったハルバードを肩に構えて飛び――


「時間がないんでな・・・一発で沈みやがれぇぇぇッ!!!」


真正面から音速を超えた速度で振り下ろされたその刃が、一撃のもとに敵ISを「両断」した。
どうやら人間の介在しない無人機には絶対防御が存在しないらしいことは分かったが、それでも80口径の弾丸を装甲で弾くような堅牢さを誇るその装甲を、障子を破るように両断するなど――あり得ない。

崩れ落ちる敵ISを一瞥したその青年は、振った刃を肩にかけて残り2機を睨みつける。2機のISのAIは、どのような攻撃によって突如僚機の反応が消失したのかを判断しかねたように動きが鈍っていた。残った2機をねめつけるように、牙を剥いた。

「ベルをそのまま連れて行かせる訳にもいかないし、お前を放置するわけにもいかん。さっさと片付けさせてもらうぞ?」

普段は軽い口調で戦うジョウの背中からは、普段は感じられない濃密な闘気が溢れ出る。
一刻の猶予もない今、本気の瞳がそこにあった。



 = =



ゆらり、ゆらり、交錯線が揺れる。

虚ろなるものが、這い出る。

『現れるか、白き月の末裔が』
『戻るべき形も失い、自らがヒトであったことさえも忘れた存在よ』
『哀れなり。死を恐れるが故に、絶対運命の従属に成り果てるか』
『だがその身に宿す永遠は、頂いた』
『計画のピースがまた一つ』
『既に8番は手に入れた』
『10番も11番も技術屋が始末した』
『次に現れるは12番か。どうする?』
『覚醒を促す良い機会だ。また連中に始末させればいい』
『スコールよ。傀儡を下がらせろ』
「御意。神子はどうしますか?」
『捨て置け』

果たして壁がどこにあるかも定かではない部屋に響き渡る声。
虚空に浮かぶモノリスたちの淡々とした会話を聞かされていたエージェント・スコールは、感情を表に出さずに命令に従った。スコールはそのモノリスの正体を未だ知らない。だが連中の掲げる計画の最終目的とやらには一応ながら賛同している。故に、如何に内容が不鮮明であれ命令には従う。

だが――これでいいのだろうか。

そんな漠然とした不安から、彼女は個人的にこのモノリス達が語る「計画」を調べていた。頑なにその実態を明かそうとしない、人かどうかも定かではない存在の会話に不信感が芽生えたからだ。あまり安全な橋でないことは承知しているが、それでも気になりはした。

このモノリス達は亡国機業のほぼすべてを掌握している。それだけ強大な力を持っているという事だ。意にそぐわない駒はいつ処分されるかも分からない。慎重に慎重を期した綱渡りを続けて、それでも分かったことは決して多くない。とても断片的な、繋がりがあるとも思えない情報群。

神子。
門。
永遠。
マジン。
知恵の実。
死と新生。
とこしえの安寧。

『あの少年』といい、神子といい、この連中が踏み込む世界は最早オカルトのそれに近い。そしてスコール自身、既にそのオカルトの一端を覗いてしまった身である。だからこそ――末恐ろしくなる。この連中に隷属していることが。

『あの異端者はどうする?』
『劇物は、制すれば薬になる。処分するのは機を見てからが良かろう』
『デストルドーの引金に丁度良い』
『だが、技術屋も大いなる炎も動きを見せないのが気にかかる』
『3のしもべが先決だ』
『すべては一つにならねばならぬ』
『ヒトにとこしえの安寧を』
『ヒトにとこしえの安寧を』
『ヒトにとこしえの安寧を』

それを最後に、ぶつりと音は途絶えた。
異端者――IS学園に所属する特筆することもないあの少女。どうやら計画にとってワイルドカードたりうる存在らしい。もし万が一、機業の計画とやらが聞くもおぞましいものだと分かった時は――その一手が結果を大きく変えるかもしれない。

現地で戦闘を行っているエージェント――エムに撤退命令を送りながら、スコールは思案を巡らせた。



 = =



「――ふむ。これは流石に予想していなかったな」

エムは『それ』を見つめながら苦々しげに唸る。

戦闘は終始こちら優勢で進んだ。技量がどうであれスペックの差は腕だけで埋める事ができない。そして、エムの操縦技術は決して素人には真似できない域へと達している。俗に言う天賦の才という奴だ。相手が数年かけて積み上げた鍛錬が、その才能の壁に当たって砕ける。
粘りはしたものの、祇園寺とかいうパイロットに勝ち目はなかった。数分間ねばった末に――祇園寺はシールドエネルギーを使い尽くして近くの山へと落下していった。
最初はそこそこだったがつまらない幕引きになった、と思って目標を回収しようとしたその刹那に――状況が一変した。

「スコール、本当に撤退していいのか?対象は『あれ』に呑まれてしまったようだが」
『上のお達しよ。捨て置け、ですって』
「ふん、攫わせておいて捨てろとは勝手な連中だ・・・・・・まぁいい」

彼女が『あれ』だの『それ』だのと呼んでいる物――その正体は、100メートル以上あろうかという球体だった。レーダーには一切その質量が映らず、肉眼でだけ確認できるそれは、白い縞のようなものが規則的に表面を走り、どのような原理で浮いている何なのか、とんと見当がつかない。

いったい何時そこに出現して、何をしたのかも分からない。人工物にも見えるが、これだけの大きさであるにもかかわらずISの視覚情報を除く一切のセンサーで検知が出来ないのもまた摩訶不思議だった。果たして飲まれたものがどうなるのかさえ定かではないそれに、心当たりが全くないわけではないが。

「――ひょっとして、浅間山で回収したあの化物のお仲間か?」
『でしょうね。12番目、だそうよ』

8番目は知っている。だが1番から7番までは存在したかどうかすら知らない。この番号は、ただ単に順番を表すものではないのかもしれない。その情報をする権利はエムにはないが。9番から11番とて、いたのかもしれないが詳細は知らない。彼女が目にしたのは8番と目の前のこれだけだ。

「おかしな話じゃないか?最初に現れたのが8番で、次に現れたのが12番か?・・・まぁいい。今回は回収しなくていいわけだな」

そう言いながら、レーザーを無造作に構えてその球体に一発放つ。レーザーはその球体に突き刺さり――黒い球体が突如消失した。レーザーは何事も無かったかのように反対方向へ貫通する。いなくなった球体は、気が付けばエムの真上へと移動していた。
続けて、その球体の影にレーザーを発射した。レーザーはそのまま黒い――不自然なほどに真っ黒い影に命中し、特に何も起きずに終わった。熱量が呑み込まれたかのようだ。通常ならばそこにあるはずの地表に命中して地面が焦げる筈なのだが、着弾した音すらしなかった。その破壊力と熱量がどこへ消えたのかは分からない。

「見ての通り回収不能なものだから困ってたんだ。対象もあの影にずぶりと沈んでそのままだ」
『薄気味悪いわね・・・・・・ともかく、一度帰ってらっしゃい。今回はここまでよ』
「了解した」

通信が途絶する。少し遠くに近づくIS反応があるが、このまま離脱すれば出会う事も無いだろう。久しぶりに暴れられると思っていたが、奥の手を使う程の危機も無かったことが少々フラストレーションを溜めさせた。

――姉さんにも会えず、その弟にも会えず、か。

その胸中に抱く、強くも複雑な感情を抱きながらも、エムはその場を離脱した。



 = =



そしてそれと時を同じくして――

臨海学校旅館において、一人の少女が目の前の現実に愕然としていた。

「・・・・・・信じられんが、あの円形はどうやらただの虚像。そして下の影が本体ということらしい」
「ちょ、ちょっと待ってください・・・・・・じゃあ、あれは何なんですか?何者かが作り出した空間操作装置なのですか?だとしても、何もかも説明がつかないままなのですけど・・・ワームホール?ESウィンドウ?重力の井戸?ゲート?どれにしても意味が分からないんですけど・・・・・・?」
「・・・・・・・・・・・・宇宙人かもしれんぞ?」
「先生!?思考を放棄しないでください!?」

現場に到着したという(あや)のハイパーセンサーを通して送信されるその現場。
そしてその隣に映し出される、箒たちが持ち帰ったアンノウンの映像データ。

彼女はたった今その部屋に踏み込んだだけであり、まだ一夏が意識を失ったことも、アンノウンの存在も、ましてやベルーナの誘拐事件についても何一つ知らない。知らないのに、彼女は目の前の現実に理性が吹き飛んだ。2人の会話もまた、強い衝撃を与えた
真耶と千冬がこちらを見ていない隙にこっそり忍び込んで情報を収集しようとした彼女の双眸が限界まで見開かれ、瞳孔までもが開く。愕然とした彼女は身を隠す事すら忘れてその映像を食い入るように見つめた。


――あの球体は、前世の記憶が正しければ『第十二使徒レリエル』。

――あの赤い飛行機は、前世の記憶が正しければ『ゴーストX-9』。


「――え?」

何で、そんなものが目の前にあるの?
レリエルは、「新世紀エヴァンゲリオン」に登場する敵じゃないの?
ゴーストは「マクロスプラス」に登場した飛行機だよね。
私、ゲームやアニメで見たことがあるよ。

でもおかしいよね?
この世界にはエヴァもマクロスも似たものは存在しても、同じものではなかったもの。
じゃあ、あの映像は誰が作った作り物なの?それとも本物なの?
私と同じ、前世の記憶がある人が作ったなんて考えられない。
両方とも、私のいた世界の人が作ろうと思って作れるものではない。

ありえない。存在する訳が無い。似ているだけの見間違いだと思いたい。
でも、それには両方とも見覚えがあった。
ありえないものが、目の前に映っていた。


彼女――佐藤さんの知るインフィニット・ストラトスに、存在してはいけないものがあった。


それもと。






『私が思い込んでいるだけで、実は似てるだけの全然違う世界だったりして!そりゃないか・・・・・・』






嘗て自分の放ったその言葉ばかりが、頭の中を反芻した。まさか、もしかしてという思いが体を雁字搦めにして、しりもちをつく。教師の2人に気付かれてしまったことさえも意識できないほどに、心が(うごつ)く。


『ここはインフィニット・ストラトスの世界である』という前提そのものが、間違っていた?
  
 

 
後書き
すまないみんな。ずっと黙っていたけど、この小説は「##ネタバレのためブロックされました##」とのクロスオーバーだったんだ。佐藤さんやみんなを騙すために今まで黙ってたんだ。本当にすまない。
クロスオーバーとは言っていますが、実はこの物語の実質的メイン主人公たる佐藤さんでさえクロス先の原作知識はないに等しいです。だから佐藤さんに状況を知らせるためにもなるだけ必要な説明はするつもりです。

それと、以前のお知らせ通り、今年の更新はこれにて終了です。この後しばらく……最低でも1か月くらいは投稿の手を止めて続きを執筆します。 
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