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面影

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第三章


第三章

「誰でも警戒するよな」
「ああ」
 だからすぐに頷くことができたのだった。
「そういうことだよ。だからまだなんだよ」
「それにだよ」
 彼等はさらに智哉に言ってきた。
「付き合ってまだ二ヶ月かそこらか?三ヶ月か?」
「三ヶ月だよ」
 流石に付き合っている本人だけあってどれだけ経ったのかはきちんと把握していたのだった。
「四月に声かけてだからな」
「御前本当に手が早いな」
「とんでもない奴だ」
 四月ということを再認識した二人の多少意地の悪い突込みが入ったがこれはほんの一瞬だった。
「まあそれはいいとしてだ」
「いいのかよ」
「とりあえず今の話の本題じゃないからな」
「話戻すぜ」
 こう言って彼等のペースで話を戻してきた。話しながらコーラを飲む。今彼等は街の自動販売機の前でそれぞれコーラを飲みながら話をしているのである。
「まあ三ヶ月だよな」
「ああ、そうだけれどな」
「それ位じゃキスまでは普通はいかないな」
「高校生だとな」
「そんなものか」
 智哉は彼等の言葉を聞いて納得できたようなできないような顔になって首を傾げさせた。
「キスまで二時間胸まで五時間って歌があったけれどな」
「随分古い歌だな」
 友人は今の智哉の言葉に少し呆れた顔になった。
「そりゃ遊び人の歌じゃなかったか?」
「確かそうだったな」
 彼も記憶を辿ってそれに頷いた。
「この歌は。確か」
「だったら参考にはならないぜ」
「あとエロ漫画とかもだぜ」
 友人達はコーラ缶片手に話を続けていく。
「あんなの殆どじゃなくて完全にファンタジーだからな」
「歌にしろそうだぜ」
 歌についてまた言われた。
「そうそう上手くいかないさ」
「それはっきりとわかっておけよ」
「漫画や小説もか」
「当たり前だろ」
「本物は創作とは違うんだよ」
 これがさらに強調される。智哉は二人の話を聞いて今まで自分が抱いていた恋愛に関する考えがかなり幻想的なものだと思い知らされたのであった。そしてそれは顔にも声にも出てしまっていた。
「ううむ」
「呻くな呻くな」
「別にそんな必要はないからな」
 そしてこれもすぐに二人に突っ込まれたのだった。
「現実は甘くないってことだ」
「そういうことだよ」
「そう考えればいいんだな」
「ああ、そうさ」
「わかったら焦るな」
 今度は焦るなと言われた。釘を刺すようにだ。
「いいな。絶対にだ」
「まずこの三ヶ月順調だったと思うんだな」
「順調か」
「だってあれだぜ」
「なあ」
 二人は顔を見合わせそのうえで彼に言ってきた。
「コクってオッケーだったんだろ、最初は」
「ああ」
 その通りだった。まず最初の滑り出しは上々だったのだ。
「それから何度もデートしてるよな」
「食ってばかりだけれどな」
「食えば食う程いいんだよ」
「実際のところはな」
 キスもまだだというのにやけに詳しい二人であった。何故かはわからないが。
 
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