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日向の兎

作者:アルビス
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1部
  2話

屋敷を出て私の故郷である木の葉隠れの里を散策していると、恐らくこの里でもっとも有名であろう少年が教師達から逃げ回っていた。見たところ、里の長である火影の顔を掘った岩にまたもや落書きを行ったようだな。
ふむ、明らかな強がりでしかないとはいえ、あそこまで自己アピールができるというのは中々結構なことじゃないか。私個人としては好意を持てる人間だが……少々力不足ではあるな。
「ナルト!!」
私は彼の名を呼び、私の存在に気付かせる。すると、彼はこちらに一直線に来た。
「ウサギのねーちゃん!?今、おれってば逃げてるんだってばよ!!用事があるなら……」
「少し静かにしていたまえ、いつもの場所で待っていろ」
ナルトの口を塞ぎ路地裏に押し込んでから、私は変化の術をかけてナルトに化ける。
なに、普段は離れで本を読む耽っていり私とてたまに体を動かしたい時もあるのだ。白眼を使用し、自分の体を確認する。
そして、体の具合を確認して一目散に駆け出す。教師達は私をナルトだと誤解したまま私を追い続ける。
さて、楽しい鬼事の始まりだぞ、鬼さんこちら、手のなる方へっと!!
単純な速さ比べとなると私のような子供の脚力では勝てる道理はないが、子供には子供なりの強みがある。具体的に挙げれば、小回り、身軽さ、小柄さだ。
それを活かす環境となると人混みが最適なのだが、ナルトの姿ではその人混み全てが敵となってしまう。
数年前九尾の妖狐がこの里を襲い、里を崩壊させかける事件があったらしい。それを収めるにあたり、四代目火影が命を対価に何かの術をもってして九尾をナルトに封じ込めたそうだ。
で、その時の九尾がナルトの中にいるということで彼は迫害を受けているのだ。全く愚かな話だ。
少しは他国へ目を向ける事を学ぶべきだなこの里の人間は。他の里は九尾のような化け物、尾獣を封印している人間を人柱力と呼び軍事力して考えている。
当然の話だ。そこに尽きぬ泉があるというのに、それを恐れて遠ざけるなど愚か者以外の何者でもない。そこから湧き出る水がいくら血に染まっていようと水は水、使い方次第でいかようにもなる。
それに下手に人柱力を迫害し、何かの拍子に自害でもすれば九尾は解放されて元の木阿弥だ。加えて、恨み買うような真似をすれば仮に尾獣を手懐ける手段を得た時、尽きぬ泉は明確な意思を持って敵対者を飲み込むだろうよ。
……いかんな、頭に血が上りかけた。こんな人の多いところで我を忘れてしまう訳にはいかん。
こういう時はヒナタの事でも考えて気持ちを落ち着けよう。まったく……我が事ながら私は実に人間ができていないな。もし仮にヒナタはいなければ今頃私はただの殺人鬼になっていた可能性が……いや、なっていたな確実に。
そんな益体のない事を考えている内に私は目指していた小さな森に辿り着いた。
道中幾つか拾った石を周囲の他の木の枝にぶつけてから、木の枝に潜り込み教師達を上から見下ろす。タイミング的にはギリギリだったようだな……あと僅かに遅れていれば隠れるところを見られていただろう。
森の中では気配を探ろうにも他に複数の生き物がいるため気配では探知できない。チャクラの流れでも見えれば話は変わってくるのだろうが、そんなものができるのは白眼の持ち主だけだ。
となると自分の足で探さなければならない訳だが……先ほど投げた石によって多くの木から葉が舞い降り、どこに人がいるなど分かる訳もない。
あとは何食わぬ顔で私は変化を解いて、この森から悠々と立ち去ればいい。彼らが探しているのは、うずまきナルトで日向ヒジリではないのだからな。
仮に呼び止められたとしても仮にも日向の者だった私だ、そう長く調べられることもなかろうよ。



「ウサギのねーちゃん、一体なにして来たってばよ?」
「なに、私だって大人をからかって遊ぶ程度には子供ということだ。そう気にするような事はない」
里の外にある森でいつもの様にナルトは待っていた。どうやら準備はできているらしいな……
「今日こそねーちゃんの素顔を見て、ラーメン奢ってもらうってばよ!!」
そう、私は時々ナルトとこうやって組手紛いのことをしているのだ。ナルトは私に面に触れれば勝ち、私はナルトは動けなくなれば勝ちのルールを設けている。
最初はナルトの事を面白いと感じての気紛れだったが、こうも熱意をもって応えられると私としても応えないわけにはいくまいよ。
ナルトは私を捕らえようと必死に動くが、当然考えなしの動きなど白眼を使うまでもなく処理できる。ナルトも徐々に単調な動きではどうしようもないということを理解し始め、動きにフェイントや強弱のアクセントをつけるようになった。彼は理屈を学ぶよりも実戦でその身に刻み込んでいくタイプのようで、こうして度々組手するとその成長速度は目を見張るものがある。
無論、この手合わせには私にもメリットがある。私は動きを模倣し、それを自由に使いこなせたとしても加減が効かないのだ。それ故に私は殺さない程度まで力を抑えて、尚且つ技量を損なうことなく振るうそれは私にとって是非とも身につけたいものなのだ。
理由?言うまでもないだろう、ヒナタと稽古ができるじゃないか!!
「動きは悪くないが、体力と攻め時を考えろ。肝心要の時に体力がないというのは大問題だぞ?」
「そういうねーちゃんは底無しじゃねーか!!」
「当たり前だ、姉は強いものだからな」
「意味分かんねぇーってばよ!!」
真っ直ぐ伸ばしてきたナルトの腕を片腕で掴みこちら側に引き寄せながら、足払いをかけてナルトを転ばせる。途中で掴んだ腕を離す事なくナルトの手首の関節を外した上で、倒れた彼の顔に掌底を寸止めする。
「さて仕切り直しだ、それとも少し休憩を挟むかね?」
「まだまだいけるってばよ!!けど……手首嵌めて欲しいってばよ」
「ああ、すまない。ネジとの癖でな……あれはいつも勝手に嵌めてまた挑んでくるからな」
「ネジって誰だってばよ?」
「なに堅物の弟だ……と言っても同じ年に産まれたので年齢自体にそう差はないが、私の方が産まれが若干早いので弟ということになるな。いやはや優秀ではあるのだが向上心が無いというか生真面目というか……」
アレももう少し素直さがあれば中々いい男なのだが、いやはや人の世とは上手くいかんな。
「ねえーちゃんも愚痴とか零すんだな……意外だってばよ」
「何を言う、私とて君とそう年齢に差はない悩み多き少女なのだ。愚痴くらいいうことはあるさ」
「いや、だってねえーちゃんってば俺よりもっと年上な雰囲気だし、そう言われてもあんまり信じられないってばよ」
「ふむ、女性に対してそういう物言いは良くないぞ。そんな事を言われると傷付いてついうっかり加減を誤ってしまうかも知れないじゃないか」
「ねえーちゃんが言うと洒落にならないってばよ。それよりさねえーちゃん、俺に必殺忍術とかも教えて欲しいってばよ!!この組手もいいけどたまにはそういうのもやりたいってばよ!!」
「必殺忍術か……では、二の打ち要らずという言葉を教えてやろう」
「二の打ち要らず?忍術の名前か何か?」
「いや、とある書物に載っていた言葉でな。とある拳法家の逸話のようなものでな、牽制やフェイントの為に放ったはずの一撃ですら敵の命を奪うに足りるものであったというものだ。
言ってしまえば必殺忍術など必要ない、全ての一撃を必殺にすることを目指すべきという話だよ」
「それが凄いってのは分かるんだけど、やっぱり派手な一撃とかの方が俺ってばカッコイイ気がするってばよ」
「派手な一撃ね……いいだろう、我が未熟さを晒すというのも修練と諦めよう」
私は近くの小さめの木に掌を当てて、意識を集中させる。そして、脚、腰、肩、肘、手首、あらゆる関節を活用し接着した状態で掌底を打ち込む。
すると、木は一瞬膨らんだ後にそのまま破裂した。
「本来は人間向けなのだが……どうする?」
「いやいや、いいってばよ!!もう十分だってばよ!!」
そうか、それは残念。近くを探せば山賊くらいならいるんじゃないだろうか?






 
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