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一人のカタナ使い

作者:夏河
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SAO編 ―アインクラッド―
第一章―剣の世界―
  第7話 第一層攻略会議開始

 どうやら僕らがいた場所は近かったらしく、数分歩くと会議がある場所に到着した。……道に迷わずにすんで良かったと思う。カグヤに悪いしカッコわるいし。
 到着したのは会議が始まるちょうど十五分前。
 まだ時間は余裕があるのに既にたくさんの人が集まっていた。
 残念ながら女性はカグヤだけのようであとは男性のようだ。いや別に他意はないですよ。カグヤ以外に女の子がいたらカグヤも楽だろうなって思っただけですはい。
 でも強いて言うならもう少し華が欲しい。野郎ばっかりだから男子校みたいだ。こんなとこに女子が一人放り出されるなんてあまりに可哀想に思える。やっぱりオンラインゲームは女性はそんなにやらないのだろうか。まぁ、男子の僕だってオンラインゲームはSAOが初めてだし、そんなに違和感はないけど。
 ちらっとケープを身につけたお隣さんを見てみると、僕が思っていたよりもなんとも思っていないようで、なんでもないかのような顔をしていた。 

「もっと緊張するかと思ってたんだけど意外だね。もう少し焦ったりするのかと思ってたよ」

 そう言うと、カグヤは少しだけ首を上に傾けて小さく唸りながら、

「まあもう始まってから一ヶ月ぐらい経っちゃってるからね。嫌でも慣れるよ」
「そういうもんなの?」
「そういうもん。それに多少は慣れてないと私ここまで来れてないし」

 ふむ、確かに。この男しかいないと思ってしまっても仕方ないこの世界にいるのだから、男とコミュニケーションを取れないと先に進むのは不可能かもしれない。それにカグヤはさっきまで顔を隠していなかったからかなり大変だったはずだ。

 そんなことを思いながら黙っていると、カグヤは周りを見渡してふうっと息を漏らした。

「けれど、ここは男性をさらに集めたようなところだよね、ちょっと私は息苦しいわ」
「はは……多分女の子はカグヤだけだろうしね。そこは攻略のために我慢してよ」
「わかってるけどさ~、なんか普段見てるのよりも更に濃度が高くて……」

 まあこの一ヶ所にこれだけの人数が集まったとなるとさぞ濃度も濃ゆいだろう。男の僕でだって少し思うところがある。

「それ置いといて……そろそろ二人と合流しないとね」
「さっき言ってた人のこと?」
「そうそう。じゃあ、少し移動するよ」

 そう言って僕はコウと決めていた待ち合わせ場所の会議のある場所から近い位置にあるこの街に植えてある中では大きい部類に入る木に向かった。

「あ、いた」

 待ち合わせの場所に近づくと、見慣れた二人の少年が見えた――カイとコウだ。
 向こうもこっちに気づいたらしく、カイが元気よく手を振ってくる。恥ずかしいからやめてくれないかな。ほらっ、周りにいる人たちがびっくりしてたり迷惑そうにしてるでしょ? 隣にいるコウとか居心地悪そうにしながらため息してるよ? 僕も一応二人に対して小さく手を振る。

「おう、さっきぶりだな」

 僕が二人と会話できるぐらい近くに来るとカイは笑って手を上げながらそう言った。

「うん、どうだった? フリータイムは」

 僕はそう返しながらカイの上げた手を叩く。パチンという軽快な音が周囲に響いた。コウともハイタッチを交わす。僕の言葉にカイが顔をしかめながら口を開いた。

「それがさー聞いてくれよォ、この街にある食べ物を見つけたとこから片っ端に食っていったんだけどさ、ほとんどといっていいほどうまくなかったんだよ!」
「ああ、だいたいハズレが多いよねSAOの食べ物って。僕もさっきカグヤとここに来る途中にあった露店で焼き鳥のようなものを食べたけど、全然おいしくなかったもん」

 食べられないってほどではなかったけれどお世辞でもおいしいとは言えなかったな。

「お前も俺と同じ目に遭ってたのか……」
「うん、むしろハズレの方が少ないと思ってたんだけど、どうやら違うみたいだね」
「そうだなあ、食べるのは好きなんだけど、まずいのが多いとわかるとあんまり食べたくねーな」

 うんうんと僕とカイで共感しあっていると、今まで黙っていたコウが口を開いた。

「……どうでもいいが、お前の口から出た『カグヤ』っていうのは誰だ?」
「あ、あ~そうだった」
「……自分から呼んでおいて忘れるなよ」

 コウは「はぁ……」とため息をつきながらやれやれといった風に目をゆっくりと閉じた。カイも「おお……そういえば」と手を打っていた。

「お前の後ろにいるその顔隠してる人がそうなのか?」
「そうそう、この人が……」

 そう言いながらくるっと後ろに上体を振り向くと、足が震えていた。……なんでよお。さっきまで慣れたとか言ってたじゃん。
 僕は体ごとカグヤの方に向け、小声で話しかけた。

「ど、どうしたのカグヤ」
「いえ、ちょっと緊張してるだけ」
「男は慣れたんじゃなかったの?」
「う、うんそのつもりだったんだけど。それにこんなにがっつり絡むことなかったし」

 それは慣れたと言わないんじゃない? そんな意見を消すために鼻で深く息を吐いた。ていうか、完全なソロだったんだな。それはそれですごいけど。

「まあ大丈夫だって。二人ともいいやつだから」
「………うん」
「なにその間! もう少し信用してもいいじゃん!?」

 結構傷つくんだけど!
 そう心の中で叫んだ瞬間、フード越しに向こうが笑ったのがわかった。

「冗談だよ。でも、もし何かするつもりなら全力で悲鳴上げるからね」
「おぉう……それは本当に信用してるの?」

 まあ別に何か起こるわけでもないから大丈夫だろう。信じてるぜ! 二人とも!
 心の中で祈りながら僕は振り返り、カイとコウにカグヤを紹介した。

「えーと、この人がカグヤだよ。一人でブラブラしてたら知り合ったんだ」
「……そうか」
「で、カグヤ。この二人がさっきまで言ってた僕の友達。片手剣を装備して無表情なのがコウっていう名前で、槍を装備してるバカっぽいのがカイっていうんだ」

 紹介すると、カグヤは喋らずにフードを被った頭をこくこくと頷かせた。

「さりげなくお前は俺を罵倒しなかったか?」
「してないしてない」

 真顔で首を振りながらそう言うとカイは「……そういう事にしといてやるか」と小さく呟きながら頭を掻きながら顔を下に向けた。
 少し言い過ぎたかな、と反省してるとカイがゆっくりと頭を持ち上げた――しかも、ニヤニヤしているという形容が似合いそうな笑顔でその顔を染めながら。

「しかし……ユウさんもなかなか隅に置けませんなあ~」
「な、なにが……?」

 嫌な予感しかしないその嫌な笑顔に思わずたじろぐ。そんな僕を見て面白いのかさらに笑みは深くなかった。

「いやいや~、俺こういうゲーム初めてだけどSAOで女の子とお友達になるなんて滅多にないことだと思いますぜ~」
「んなっ!?」
「えっ!?」

 僕とカグヤは全く同じタイミングに驚きの声をあげた。
 僕はまだカイにカグヤが女の子だと伝えてないはずだ――もちろんコウにも伝えていない。なのになぜ知っている!?

「ん? そんなの簡単だよ。何となくその子の雰囲気が女の子っぽかったから」
「雰囲気? そんなの判んの?」
「判るっていうか……まあ勘だな。俺の勘って結構当たるんだよ」
「お前は超能力者か!」

 少しだけゾッとしたわ! もう隠し事とかできないよ。

「……ついでにコウは気付いてた?」
「……何となくはな。でも俺は確信はなかった」
「そうなんだ。じゃあもうネタばらしするけどカグヤは女の子だよ」
「やっぱな。カグヤよろしく、俺はカイっていうんだ」

 そう言ってカイは右手を差し出した。異性だというのに全く緊張していない。……少しだけ尊敬しちゃうな。
 対してカグヤは恐る恐るといった感じで手を握った。

「えっと、よろしくね」
「おお、声を聞くとやっぱ女の子だな。へへっ!」

 さっきの嫌な笑いとは違い、ニカッと爽やかに笑いながらカイは言った。いつもその笑顔だったらいいのに……たまに怖いんだよ。

「コウもしといた方がいいんじゃない?」
「……コウだ。よろしく」
「うん、よろしく」

 カイの時と同じように二人は握手を交わした。ていうか……

「コウ、もう少し愛想良くした方がいいんじゃない?」
「……やり方がわからん」
「コウは昔からそんな感じだからな。たまにしか感情が表に出ねーし」
「……すまん」
「いや、別に責めてねーけどさ。まあカグヤ、コイツこんな無愛想だけど頼りになるしいい奴だから全然問題ねーぞ」
「わかった、二人ともよろしくね」

 そういった彼女の口は少しだけど確かに笑っていた。よかった、これなら仲良くやっていけそうだ。

 なんて思って少しほっとしてると、

「 はーい! それじゃ、五分遅れだけどそろそろ始めさせてもらいます! 」

 というよく通る声と一緒にパン、パンというまるで先生が生徒たちを注目させるときにする動作と同じ音が聞こえた。

「……どうやら始まるみたいだな」
「そうだね、いよいよだ」
「じゃあ、私たちも会議に参加しよ?」
「うん、行こうか」

 そう言って足を踏み出そうとした瞬間、肩をツンツンと指でつつかれた。後ろを振り向いてみるとカイがいつになく真剣な眼差しでこっちを見ていた。

「……どうしたの?」
「いや、少し気になったことがあってさ」

 何を聞いてくるんだろう? こいつがこれだけ真剣な雰囲気で聞いてくるってことは結構重要なことなのかな?
 少しだけ僕も真剣になりながら言葉を待つ。

「カグヤの顔お前見たんだろ? どうだった? 可愛かったか?」
「…………」

 こいつに少しでもシリアスさとか真剣さみたいなものを期待した僕が馬鹿だった。

「うん、超絶に可愛かったよ」
「マジか! よーし、テンション上がってきたーー!!」

 馬鹿は放っておいて先に行った二人に追いつくことにしよう。
 僕ははぁ……とため息をついて小走りで少し先にいる二人の背中を追いかけた。 
 

 
後書き
カイさん絶好調ですね!(笑)
こういうキャラは自分はすごく好きなのですが、皆さんはどうですかね?

次からシリアス展開に入っていく予定です。 
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