| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

カンピオーネ!5人”の”神殺し

作者:芳奈
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

いいことを思いついた・・・!

「・・・あ♪」

 キュピーン!

 そんな音がした気がした。それまで幸せそうな笑顔で、弁当をパクついていた鈴蘭が、この上なく怪しげな顔で笑い始めたのだ。
 瞳も輝き、時折クックック・・・と笑うその様は、明らかに悪いことを思いついたという姿であった。

「・・・・・・ど、どうしたんだよ・・・?」

 当然、近くにいた護堂たちはそれが気になって仕方がない。彼自身としては、余りにも厄介事を思いついた感じの鈴蘭に話しかけたくはないが、ここで放置しておくと後が怖い。彼女が思いついたことに、完全に巻き込まれる運命しか見えないのだ。
 それならば、彼女が何を思いついたのかを今ここで問い詰めて、自分の不利益になるようなら真っ向からNOを叩きつければいい。自分は、NOが言える日本人なのだ、と彼は考えていた。

 甘い。

 砂糖菓子のように甘い考えである。

 獲物を目の前にした獣が、説得をされたからといって立ち去るだろうか?少なくとも、言葉では聞いてもらえないだろう。暴力により、自分は容易く喰われる存在ではないと教えなければならない。
 そして、面倒くさいとは思っていても、別に嫌っている訳ではない鈴蘭に対して、最初から暴力でいうことを聞かせる、という選択肢を最初から除外している彼に、鈴蘭の魔の手から逃れる術などなかったのだ。

 エリカや祐里は、そもそも鈴蘭に意見する、という意思がないし。

「うん、そうだそうだよ!なんでこんな簡単なことに気がつかなかったんだろう!」

 そんな彼らが見つめる先、鈴蘭は自分の考えにとても満足したようで、その素晴らしい笑顔を護堂たちに向けた。それは、事情を知らない人たちが見れば、見惚れてしまいそうな笑顔だが、当事者たちから見れば、自分たちを破滅へと引き込む悪魔の微笑みにしか見えなかった。

「コンクリ詰めにしちゃおう!」

『・・・・・・・・・は?』

 しかし。しかしである。

 彼女が何を言い出すのか、数通りのパターンを考えていたエリカでさえ、彼女の一言は意味不明であった。
 この一言が何を意味するのか。護堂たちは、次の言葉に恐れおののくことになった。

「そもそも奴らは、私たちの土地にやってくる侵略者な訳だし?ぶっちゃけ、手心を加える必要なんかなかったよね!いい加減面倒臭いし、皆で囲んで(ボコ)って、コンクリ詰めにして東京湾に沈めて来よう!昔から、不死者に対する究極の対抗策は封印か世界からの追放と相場が決まっているからね!」

 いくら彼らが護堂に興味あるからと言って、彼らが護堂一人を差し出す必要がどこにあるのか?何故わざわざ、厄介事を持ってくる疫病神相手に、下手に出る必要がある?希望を叶えてやる必要性などどこにもない。

「【鋼の加護(マン・オブ・スチール)】を持つドニはもしかしたら死なないかもしれないけど、別にあれは筋力を増強する権能じゃないしね!剣さえ奪えば、何もできずに沈むしかないでしょ!・・・まぁー、それでも生きて脱出するかもしれないけど、これに懲りて面倒事を起こさなければよし。まだ懲りないようなら、もっと強烈なのをお見舞いしてやる!」

 最古参の王であるヴォバン侯爵も、知られていない何らかの権能で死なないかも知れないが、知ったことではない。最古参だろうとなんだろうと、敵対するなら叩き伏せるのみだ。
 自分が負けるかも、など欠片も思わない。この自信こそ、彼らが人類最強の王であることの証明なのだ。

「・・・勿論、護堂君も手伝ってくれるよね?」

 自分の考えを語り尽くした鈴蘭が、期待するような視線を彼に向ける。護堂はそれに気圧されながらも、自身の考えを口にした。
 ・・・つまり、NO!である。

「いやいや、戦力も揃ってるんだし、そっちでやってくれよ。」

 だが、甘すぎる反論であった。

 鈴蘭が、護堂を頷かせる為の切り札を切った。

「え~いいのかな~。ドニは兎も角~ヴォバン侯爵は~そこの祐里ちゃんを誘拐したこともある犯人なんだけどな~。」

 祐里たちに聞こえないように護堂の耳元に囁きかける鈴蘭。言い方が何だかムカついた護堂だが、無視できない言葉を聞いて、囁き返した。
 傍から見れば、恋人同士がキスをするようにも見える姿勢で、二人は言葉を交わす。エリカと祐里は、気が気ではなかった。

「・・・どういうことだ?」

「祐里ちゃんは、ヴォバン侯爵に誘拐されているんだよ。まつろわぬ神を呼び寄せる・・・所謂、生贄ってやつで。」

「・・・!」

 詳しい話を続ける鈴蘭。その言葉に、段々と顔が強ばっていく護堂。その様子に、ただ事ではないと感じた残りの二人も、固唾を呑んで見守る。

 ・・・・・・やがて。

「・・・分かった。協力する。」

「さっすが護堂君!じゃあ、私は準備があるから早退するね!またあとでー!」

 屋上の出入り口へと向かう彼女。恐らくこれから職員室へ行き、早退を伝えるのだろう。彼女の権力なら、早退くらいはどうとでも出来るだろうし。

「・・・・・・よし、やってみるか。」

 そして屋上には、覚悟を決めた護堂と、それを不安そうに見つめる二人が残されたのだった。 
 

 
後書き
三ヶ月ぶり?です。
いやー、本当は少し違う構図を考えていたんですけど、ちょっと難しくなりまして。本当は違うまつろわぬ神を出すつもりだったんですけどね。
ちょっと書けなくなったんで、その神は後のお話に出すことにして、ここの話は書き直しました。遅くなってすいません。

・・・言えない。PSO2の大型アップデートが楽しみでレベル上げに時間食ってたなんて言えない・・・ 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧