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とある3人のデート・ア・ライブ

作者:火雪
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第四章 炎
  第7話 最後のデート

 
前書き
今日だけで3話も投稿。なんか疲れた…… 

 
士道「あー……」

小さくうなりながら手で額をおさえる。

結局、昨日はあのまま気を失ってしまったのち、寝込んでしまい、目覚めたのは〈フラクシナス〉の医務室だったのである。

神無月『大丈夫ですか、士道くん』

士道「はい、なんとか」

と、インカムから神無月の声が聞こえてくる。

当然ではあるが今日は琴里が指揮をとるわけにもいかないため、神無月が司令代理になっていた。

一方『ま、せいぜい頑張れよ』

と、インカムから一方通行の声が聞こえてきた。

士道「……何で一方通行までそっちにいるんだよ?」

一方『普通に考えればそうなるだろォが』

士道「まあ、いいけどさ」

神無月『プランは頭に入ってますね?こちらからもサポートを入れます。大丈夫、あなたは複数の精霊をデレさせた稀代の救世プレイボーイです。自身を持ってください』

士道「……はぁ」

神無月の激励 (?)の言葉に苦笑する。なんというか、あまり嬉しくない称号だった。

と、今度はインカムから、令音の抑揚のない声が聞こえてきた。

令音『琴里を地上に送ったそうだ。もうすぐそちらに着くだろう。頼んだよ、シン』

士道「……っ、は、はい」

と、大きく深呼吸して、琴里を待つ。

すると、可愛らしいフリルに飾られた半袖のブラウスに、裾の短い焦げ茶色のオーバーオールという出で立ちで、手には水着が入ったと思しき鞄を提げている。

そして、長い髪を2つに括るのは使い込んだ黒のリボンだった。

士道「お、おう、琴里」

琴里「ん、待たせたわね」

そして、しばしの沈黙が流れる。

令音『シン、何を黙っているんだい。まずはーー』

と、それとほぼ同時に琴里がため息をしながら、言ってきた。

琴里「おめかしした女の子と会って一言もなし?いの一番に教えたと思ったけれど?」

士道「!あ、あぁ……おめかし……してくれたんだな」

琴里「……ふん、まあね。一応はデートって形式を取っているんだもの。……まあ、褒められるのは嫌な気、しないし」

士道「え?」

琴里「なんでもないわ。さぁ……私たちの戦争を始めましょう」

士道「お、おう」

聞き覚えのあるフレーズ。士道はゴクリとのどを鳴らしながらうなずいた、

と、

「うむ!」

「は、はい……っ」

『やー、楽しみだねー』

「そうですね!」

琴里の返事のあとに余計な声が4つ続いて士道は首を傾げた。

振り向くと、自分の身体が硬直した。なぜなら、

士道「十香、四糸乃、佐天さん、それによしのん……ッ!?なんでこんなところに……」

十香「ぬ?何を言っているのだ?これからオーシャンパークとかやらに行くのではないか?」

士道「何でそこまで……!」

十香「なんでと言われてもな……」

士道のリアクションが意外といった調子で十香が眉をひそめる。

それを補うように四糸乃がたどたどしく声を上げてきた。

四糸乃「その……令音さんに、言われて……来たんです、けど……お邪魔、でしたか……?」

士道「……ッ!?」

士道が息を詰まらせる。するとインカムから声が聞こえてきた。

令音『言ってなかったな。今日のデートには彼女らも同行するよ。その方がいいのではないかと思ってね』

士道「でも……本当に大丈夫なんですか?琴里の機嫌とかは……」

言いながら琴里の方を向く。

琴里の表情は先ほどと変わらぬ顔を……作、って……

琴里「……へぇ、なかなか思い切ったことをするのねぇ、″士道″。今から楽しみだわ」

先ほど異なり″にこやか″に言ってくる。

士道「駄目じゃないですか!い、今の琴里の機嫌メーターと好感度はどんな感じなんですか!?」

しかし、令音はしばらくの間黙ると……

令音『……ん、まあ、その、なんだ。……頑張ってくれ』

いつになく無責任な調子でそう言った。

士道「ちょっ………一方通行!お前から見て琴里の好感度はどんな状態だ!?」

一方通行にフォローを求めるが。

一方『………………さァな』

士道「その間はなんなの!?ねぇ!それほどヤバイ数字が出てるの!?」

と思わすつっこんだが、返事はなかった。よほど悪い数字なのだろうか。

そんな不安な状態でデートはスタートした。


ーーーー
ーーー
ーー



士道達はオーシャンパークに着き、着替えをした。

十香、四糸乃、佐天は昨日、士道が勝った水着だった。

十香も四糸乃の佐天も頭に『絶世の』だの『傾国の』だのがついてもおかしくない美少女である。

もし、なんの予備知識もなくあの姿を披露されていたとしたら、琴里そっちのけで3人を見つめていたかもしれない

と、急に十香が大声を上げた。

十香「シドー!あの湖には入ってもいいのか!?」

湖というのは恐らくプールのことだろう。士道は快く答える。

士道「あぁ、もちろんだよ」

十香「よし!行くぞ四糸乃、涙子!」

四糸乃「は、はい……っ!」

佐天「あ、待ってくださいよー!」

元気良く3人が駆け出して行く。

琴里「元気ね、2人とも」

背後から声が聞こえた。

士道「お、おう、琴里」

言いながら振り返ると、そこには白いパレートタイプの水着を来た琴里がいた。

その姿を……ぼーっと見つめてしまった。

令音『何をしているんだね、シン』

と、右耳から令音の声が聞こえた。

士道「え?」

令音『さっきも言われただろう?女の子をオシャレしているんだ』

言われてみればそうである。士道は軽く咳払いして改めて琴里に向き直った。

士道「こ、琴里」

琴里「?何よ」

士道「その、なんだ……似合ってるぞ、その水着……」

琴里「……っ。あら、ありがとう。令音や神無月あたりから褒めるよう指示が出たのかしら?」

図星をつかれた。しかしここで黙ってはそれを認めてしまう。なので士道は間を開けずに反論した。

士道「いや、そんなことねぇよ。本心だ」

琴里「へぇ、光栄ね。で、具体的にはどこがどう可愛いと思ったのかしら?」

士道「え……えっと……」

令音『ん、ここは我々の出番かな」

令音の声音が響いてきた。









時に士道の叫び声も聞こえつつ、十数秒後、士道が発した言葉は、







士道「えっと、その……全部かな。琴里は何着ても可愛いし」







だった。

琴里「……っ、あ、ありがとう」

琴里はそっぽを向きながら言った。

さて、どうしてこの選択肢になったのか。〈フラクシナス〉で起こったことを説明しよう。



ーーーー
ーーー
ーー



フラクシナスにて。

神無月「さあ諸君、我らの腕の見せどころです!」

と、神無月の声と同時に、プールの様子を映し出していたメインモニタに、3つの選択肢が表示された。

①『全部さ!琴里は何を着ても可愛いよ』

②『シンプルに見えるけど、なかなか凝った意匠をしてるよな、その水着。いいセンスだ』

③『あぁ。膨らみかけの胸が特にたまらないよ』

神無月「総員、選択肢をお願いします!」

神無月が叫ぶと、すぐ手元の端末に集計結果が表示される。

過半数が①。次いで②。③は一票も入ってなかった。

神無月「ふむ、皆さんは①ですか。まあ、順当ですね……一方通行くんはどう思いますか?」

一方「……①でいいンじゃねェか?シンプルだしよォ…… (ていうか何で俺はこんなマジメに答えてンだ?)」

一方通行はこんなことを思いながらも普通の答えを選択していた。

クルーの意見としては①は言っても悪い気はしない。②は水着に目がいってしまってるのが気になる。③は論外というものだった。

神無月「そうですね」

神無月は小さくうなずくと、マイクに口を近づけた。

神無月「士道くん、③です。『ああ、膨らみかけの胸がたまらないよ』」

と、一泊おいて、

『……ええッ!?』

一方通行を除く〈フラクシナス〉のクルーたちと、プールにいる士道の声が見事にハモった。

「ふ、副司令!正気ですか!相手は五河司令ですよ!?」

「③は論外って言ったばかりじゃないですか!」

艦橋から非難……というか悲鳴じみた声が飛んでくる。しかし神無月は……

神無月「五河司令だからこそ……ですよ」

「え……?」

クルーたちが頓狂な声を出した。

神無月はそんなクルーの人たちを見つつも、声を発する。

神無月「だって、ご覧なさい。あの華奢で、美しい、未成熟な肢体を。13歳中学2年生といういっしゅんの輝きを。もうたまらないでしょう。それ以外にないでしょう」

「だっからあんたはもう……ッ!」

もはや敬語を使うことを忘れ、クルーたちが頭を掻きむしる。

その時、

カチッという嫌な音がその場に響いた。

一瞬でその場が静まり返る。

皆がある人物の方をゆっくりと振り向く。

その人物は頭を掻きながら言った。

一方「そォいや俺がなンで佐天と一緒に五河兄妹の護衛をしてないか言ってなかったなァ……」

一方通行はニヤッと笑い、そして告げた。

一方「俺はよォ、五河琴里から頼まれてたンだわ。神無月恭平が変な選択肢を選んだり、変な行動をしたらそいつを止めろってなァ……」

神無月から嫌な汗がダラダラと流れた。

確かに琴里からのお仕置きは好きだが、相手が学園都市のLevel5で、その中の1位となれば話は別だ。

一方「てなわけで……あンたにはちょいと眠ってもらうぜ」

一方通行が地を蹴り、神無月に向かう。

ベクトル操作で足の蹴りのベクトルを変えた一方通行を捉えることはできなく……

神無月「ぐはっ!」

神無月は一方通行によってみぞを殴られて、その場に泡を吹いて倒れた。

一方通行はすぐさまマイクに近づき、

一方「オイ、①の『全部さ。琴里は何を着ても可愛いよ』にしとけ」

と言った。

すると、すぐに士道から返事があった。

士道『ほ、本当に大丈夫なのか!?ていうか今、神無月さんの明らかに大丈夫じゃない声が聞こえたんだけど!?』

一方「ほォ……テメェは③の選択肢がいいのか。なら俺は止めはしねェよ」

士道『……いや、①の選択肢にする』

士道が紳士な男で良かった。そう思った一方通行であった。


ーーーー
ーーー
ーー



という経路であった。



その後、四糸乃がつけていた右手のよしのんが流されて、プールが氷漬けにされたというのはまた別の話……



と、

ここで気づいたのだが琴里は一度もプールに入ってないのだ。

令音『シン、そうしてるのも何だ、琴里を誘ってみたまえ』

と令音の声が聞こえてきた。

士道「そうですね………な、なぁ琴里、せっかくだしウォータースライダーで遊ぼうぜ」

と言ってドーム内にそびえる巨大な岩山を指さす。

琴里「ベタな気がするけど……まあ、妥当なところかしらね。いいわ行きましょう」

と、ウォータースライダーの方へ歩き出して行く。そのようすに気づいた十香と四糸乃と佐天がこちらに視線を寄越してくる。

十香「シドー、琴里。どこかに行くのか?」

士道「あぁ……ちょっとウォータースライダーでも滑ってこようかと」

十香「うぉーたーすらいだー?」

十香が首を傾げた。それを士道は苦笑して岩山を指さす。

士道「あれのことだよ」

十香「おお……!人が流れてくるぞ!私も、私も行きたいぞ!」

士道「え、ええっ!?」

士道は困った。

琴里の好感度を上げるために2人で遊ぼうとしているのに、十香に参加されては、ややこしいことになってしまう。

士道「ぬ……駄目なのか?」

士道の言葉にしょんぼり肩を落とした十香。

と不意に右耳から令音の声が響いた。

令音『シン、構わない。十香も連れて行ってあげたまえ。むしろ好都合さ』

士道「え……?わ、分かりました」

理由は分からないが、令音が言うのだから何か考えがあるに違いない。

士道「ん、分かったよ」

十香「おお、いいのか!?」

十香は目を輝かせていた。士道は四糸乃に目線を変えた。

士道「四糸乃はどうする?」

四糸乃「あれは……怖いです。よしのんが……また、流されちゃいます……」

佐天「なら私も四糸乃ちゃんと待ってますよ」

士道「そっか。なら十香の浮き輪もお願いできるか?」

四糸乃「はい……任せてください」

その言葉を聞いて3人はウォータースライダーに向かった。


ーーーー
ーーー
ーー



数分後、

佐天「どうしてこうなったんですか?」

四糸乃「分かり、ません……」

状況を確認しよう。

とりあえず、士道と琴里と十香が同時に滑った。そして急なカーブのところで勢いよく3人の身体はコースを外れ、ぽーんと宙に投げ出された。琴里は黒いリボンがとれて、士道に抱きついている。十香はなぜか楽しそうな表情だった。

以上。

簡単に説明するとそうなる。

その後なんだかんだあって昼食をとることにした。

その直前の士道と琴里の会話を佐天は聞いていた。



士道『今日はどうして黒のリボンなんだ?』

琴里『何よ、これじゃ不服なの?』

士道『や、まあ、別にそういうわけじゃないんだが』

琴里『駄目なの。白の私は弱い私だから。黒の、強い私じゃないと、今は、駄目なの』

士道『え?何だ、弱いとか、強いとかって』

琴里『なんでもないわ』







佐天「(強い私、か……)」

そんなことを思いながら昼食をとっていた佐天。

十香「うむ、うまいなシドー!」

四糸乃「お、美味しい……です」

豪快にサンドイッチを食べる十香と小さな口で少しずつサンドイッチをかじる四糸乃。

士道「そ、そうか。そりゃよかった」

そんな2人の様子を見ながら、乾いた笑みを浮かべる士道。

そして、

つまらなそうに手と足を組んだ琴里。

琴里の好感度を聞いたところ、上昇もせず下降もせずということだった。

一方通行に何か会話をした方がいいと言われたがーー

琴里「ッ、けほっ、けほっ……」

士道「大丈夫か、琴里」

琴里「……ええ、少し気管に入っただけよ」

士道「琴里……?どこ行くんだ?」

琴里「レディが席を立った時に行き先を訊くだなんて真似、私以外にしたら死ぬわよ」

士道「……肝に銘じるよ」

士道はトイレの方へ歩いていく琴里の背を見送ってから、はぁ……と大きなため息をついた。

十香「シドー?」

士道「ああ……悪い。食事中だったな…………ん?どうした?」

士道は目をしばたたかせた。十香と四糸乃、よしのんまでもがジッと士道の方を見ている。

士道「な、何だ?」

十香「いや、いつものシドーに戻ったと思ってな」

四糸乃「琴里さんと……喧嘩、しました……か?」

よしのん『琴里ちゃんがいなくなった途端気が抜けるんだもん。わっかりやすいなー士道くんは』

士道「え?そんなにか?」

2人+1匹はうんと頷いた。

士道「別にそういうわけじゃ……ってあれ?佐天さんは?」

十香「む?そういえばいないな」

四糸乃「おトイレ、でしょうか……?」

士道「お、俺もちょっとトイレ行ってくる……」

十香「あ、シドー!」

十香の呼び声を聞きながら士道はそそくさとその場から逃げ出した。









 
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