ハイスクールD×D異伝 異なる兵士の物語
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縋る者と応える者
前書き
悪魔のお仕事其の一!原作がコメディー調なので僕はシリアスに!
長いですよ!自分本来の文章全開なので少し幸生がブレるかもしれません!でも構わない!
悪魔といっても様々、俺の様に元々は別の生き物が転生を受け悪魔となった者は転生悪魔といわれ、主人を持ちその主人に従い命じるままに仕事をこなす…主たるものとして契約という物が存在する
人を対象としたものであれば簡単に例えれば対価を得て契約を交わし、その者の欲望を叶えるという物がある
欲望とは多種多様な物で、彼女が欲しいだとかお金が欲しいだとか考え付きやすい物だったり特別な力が欲しいとか別の生物と会話がしたいとか、世間一般の考えから言えば叶う筈も無い物もある
悪魔の力の大きさによって可否は分かれるが相応の対価を得れば今挙げた例はどれも叶えられる物に分類される
そして今、俺はその契約を得る為に召喚の呼び声に応えたのだが…
「お兄ちゃんに会いたいの…」
俺を呼んだのはまだ幼さの残る少女だった、何処から知ったのか悪魔に頼る様な娘には思えない呼び主に俺は困惑していた
「本当に君が俺を呼んだのかい?それにお兄ちゃんに会いたいって…?」
「ママとお出かけした時に綺麗なお姉さんからこれを貰ったの…お願い事を聞いてくれるって…」
少女が持っていたのは一枚のチラシの様な紙、俺達悪魔が活動しやすい様にと先輩が眷属を使って配っていた物だ、友達が同じことをしていたからマネをしたとか言ってたな
「それで…俺を?」
「うん…」
何がどうなって召喚が成立してしまったのか、少女は悪魔を呼び寄せてしまった、本来であれば対価の払えそうにない者の願いは聞き入れられないのだが
「会いたいの…お兄ちゃんに…」
今にも、泣き出しそうな彼女に君の願いは聞けないと突きつけることは俺には出来なかった、話を聞くだけ聞こうそう思った
「お兄ちゃんに会いたい、それが君のお願い事なんだね?」
「うん…」
「どうして?」
「ずっとお家に帰って来ないの…また一緒に遊ぼうねってお約束したのに…帰って来ないの…」
「君のお母さんお父さんはその事を知っているのかな?」
「…帰って来られないんだって…今は教えてもらえないけど、ちゃんとしたりゆうがあるんだって」
予想はしていた、だが実際彼女自身の口から聞くと流石にくる物があった、部屋を見回すと勉強机だろうか仲の良さそうな家族の写真が飾られている
彼女の兄は恐らく亡くなったのだろう、彼女の両親もまだ幼い彼女に兄の死を告げることは出来ず、結果彼女は待ち続けていた
「…お兄ちゃんに会いたい」
健気に待ち続けていたのだろう、だがどれだけ待った所で彼女の兄は彼女が待つ家には帰らない、死者が甦る事は俺達の様な例外を除いてあり得ないことなのだ…あり得ない事なのだが…
「それじゃあ、俺と君のお兄さんを探しに行こうか?もしかしたら意外と近くにいるのかもしれないよ?」
「ほんとに…?一緒に探してくれるの…?」
「あぁ、でも先ずは君のお兄さんの事を知らなくちゃ探しにも行けないから、一緒に探しに行くのは明日でも良いかな?」
「うん!」
可能ならば、叶えてあげたい…無理は承知の上で先輩達に相談しよう、もしかしたら良い案を思いつくかもしれない
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「…死者との面会は今の貴方はおろか、私の力でも無理な話だわ」
「…やっぱり、そうですよね」
「お亡くなりになった方に会うには何かしらの許可を得なくはなりませんから~、その許可もそれ相応の方では無いと話を聞いても貰えません~…」
「お気持ちは痛い程わかりますが…杏達にも出来る事と出来ない事があります…」
「幸生君…今からでも遅くはないから、彼女に謝りに行こう?僕もついていくから…」
「謝りに行くって…何て言えば良いんだよ…君のお兄さんは死んだからもう会えないってそう言うのか?…俺にはそんな酷な事は出来ないよ…」
彼女の両親も、そうだったのだろうだからこそ兄の死を告げれずに彼女は知らずに帰らないという言葉だけを受け彼女は今も待っている
「…時が解決してくれる事もあるわ」
「そんな!」
「無理な約束をして…貴方は彼女に叶いもしない希望の光を見させたのよ?事実を告げる以上に残酷な事をしていることに気付かないの?」
「…俺だって分かってはいます…無理な話だって」
「ならどうして?…同情なら、おやめなさい」
「…俺も、あの娘と同じ気持ちでしたから」
「幸生…貴方…」
俺の両親は俺が幼い頃に事故で亡くなっていた、亡くなっていたというのは俺が小学校を卒業した際に身元引受人であった祖父母から詳細な話を聞いたからだ、まだ幼く泣き虫だった俺には両親の死を告げられなかったと謝罪されたのを覚えている
俺も彼女と同じく帰らない人の帰りを待った、あやふやな記憶だが優しく接してくれる祖父母に両親の帰りはまだか、何処へ行ったのか聞いた様な気もする
「あの娘は…多分お兄さんの死も何処かで感づいているんだと思います、だけどそれを受け入れたくは無いから…」
「…幸生、貴方はどうしたいの?」
「会わせてあげることが無理なら、あの娘の受け入れられる様な状況を作った上で、きちんと真実を受け入れさせてあげたいです」
「貴方のお兄さんは死んだのだと…」
「突き放したり、押し付けたりするんじゃなくて…あの娘が受け入れやすい様にしてあげたい」
「真実は残酷な物だわ」
「残酷な事だとしても、このまま知らず受け入れず待ち続けるよりは…何倍もマシです」
「…その娘のお兄さんの事はこちらで調べるから貴方は彼女の気持ちを第一に考えて行動してちょうだい、それからこの一件を契約を取るために受けた依頼であるとは考えないで…良いわね?」
「先輩?」
「その娘の想いも、貴方の想いも…悪魔の契約とは無関係…だから対価は必要ないわ」
「っ!有難うございますっ!」
やれる事を全力でやろう
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「ここが、一緒に鬼ごっこしてもらったとこ!」
「そうなんだ、利香ちゃんは鬼だったの?それとも逃げる方かな?」
「利香は逃げる方だよー!」
お互いに名前を教えて、俺達はお兄ちゃん探しというなの思い出巡りをしている、彼女の両親には先輩がうまく話をつけてくれたらしい
「ここで一緒に猫さんを見たのー!」
「その猫さんはどんな猫さんだったのかな?」
「えっとねー…真っ黒な猫さん!とってもかわいくてねー!」
「もしかしてあんな感じ?」
「あー!猫さーん!」
俺も両親が帰って来なくなった時期、周囲の人達は触れず接さずといった感じだった、唯一祖父母が優しくしてくれた、機会をくれたのは間違いなく祖父母だ、子供ながらに帰らないという事はどういう事かを察する機会を
「ここは皆でごはん食べたとこ!」
やはり、利香ちゃんも何かを感じているんだろう、繋いだ手はしっかりと握っているし常に何かを気にしている様な感じもする
「ここでピクニックしたの!」
「確かにピクニックするには丁度良い場所かもね!風も気持ちよくて…眠く…」
「利香もぉ…」
利香ちゃんに案内されるままに色々な場所に行って、今は夕暮れ時、彼女も疲れたのか口数が少なくなってきた
「お兄ちゃん、見つからないね、ごめんね、利香ちゃん」
「うぅん…いいの…」
結局、俺は何も出来なかった…彼女に真実を告げるしか無いのか?いや、それは彼女を傷つける事になってしまう…彼女を第一に思うんだ
「…楽しかったの」
「うん?」
不意に利香ちゃんが足を止めた、手を繋いでいた俺の脚も止まり彼女に視線を合わす
「こうせーお兄ちゃんと遊べて、楽しかったの」
「うん」
「お兄ちゃんと遊んでたときと一緒で」
「…それなら良かったな」
「あのね」
「うん」
「ほんとはね、利香、知ってたの」
「うん」
「お母さんとお父さんがお家でお話してて」
「…うん」
今にも泣きだしそうな彼女を抱きしめる、祖父母がそうしてくれた様に優しく包み込む様に
「でも、利香は、そんなのやで…」
「うん」
「あの、ね?、お約束、したから、ね?」
「うん…うん」
「おにぃちゃん、が、しんじゃ、たんだって、」
「利香ちゃん、大丈夫だよ…」
辛かった筈だ、誰も教えてくれない事実を偶然知ってしまって信じたくなくて、小さな子供の身体に沢山の悲しみを抱えて
『お前は、何も心配しなくて良い…』
あの時俺には爺ちゃんと婆ちゃんが傍にいてくれた、だからこそ抱え込まずぶつける事も出来た
「おにぃ、ちゃ、ぁぅ、」
賢い娘だ、両親の様子を見て遠慮してしまったのだろう、我儘を言ってはいけないと自制していたのだろう
「ぇぅ…っ!わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
両親の前で泣く事すら我慢して、兄の死を受け入れられずにいたのだろう
俺が今出来るのは、彼女が泣き止むまで傍にいてあげる事、彼女が泣き止むまで抱きしめてあげる事、そして
「利香ちゃんは、何も悪くないんだよ…」
優しく語りかけてあげる事
後書き
長いっ!すいません!この話、実はずっと前から考えていた話でして…主人公を精神的に成長させたいなと…
そんなもんで話を分けます!次話で主人公の目標を確かな物にしたいっすねー。
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