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クラディールに憑依しました

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何とか間に合いました

 第十一層タフト、転移門広場。


「今回の狩りで予定通り。全員分の装備の代金とギルドホームを買うお金が貯まりました」
「よ。流石リーダー」
「コレで俺たちも家持ちだな」
「自分の部屋が持てるって楽しみだね」
「みなさん。おめでとうございます」


 月夜の黒猫団は午前中の狩りで目標金額を揃え、ギルドホームの購入が可能になった。
 臨時で来てくれたシリカも一緒に喜んでいる。


「それじゃあ、早速だけど借金返してギルドホームを買ってくる」


 ケイタはメニュー画面をいくつか操作して最前線の転移門へ飛んで行った。


「なあ、ケイタが戻ってくる前に迷宮区に篭って、新居の家具を全部揃えないか?」
「それ良いね。ついでに新居祝いのパーティー資金も倍にしようぜ」
「あ、家具を買うの?」
「それじゃあ。あたしも手伝ってサチさんにプレゼントします」


 一ヶ月前のサチの失踪以来、どこかぎこちなかった黒猫団が此処まで賑やかになったのなら、もう心配は要らないな。


「いつもより上の迷宮区に行って見ようぜ、一つ上なら楽勝だろ?」
「え? 第二十七層の迷宮区は、トラップのレベルが跳ね上がるから行かない方が良いって言われましたよ?」
「シリカの言うとおりだ。今までどおり二十六層の迷宮区で狩りをした方が良い」

「大丈夫だって、もう二十六層の敵も楽勝だし、一つぐらい上がったってどうって事ないぜ」
「でも、キリトとシリカが反対してるから止めた方が良いよ?」
「今の俺達に倒せない敵なんていないって、もし出てきたら全員で逃げれば良いんだしさ」


………………
…………
……


「おや、噂をすればウチのシリカからメールが来ました。
 ――――これから月夜の黒猫団と一緒に第二十七層の迷宮区に潜るそうです」
「…………え!?」
「おや、ご存じではない?」


 シリカのメールをコピペしてケイタに送る――――ついでにアスナとリズにも。
『これから黒猫団の皆さんと第二十八層から第二十七層のボス部屋を通って迷宮区に潜ります。』


「待ってください――――嘘だろ!? 全員と連絡が取れない――――まさか本当に迷宮区へ!?」
「第二十七層の迷宮区はデストラップが格段に増える…………多少強化した所で、あの装備で生き残るのは無理でしょう」
「そ、そんな!? た、助けてください! みんなを――――お願いしますッ!!」
「――――アスナ様、聞かれましたか?」


 同じようにシリカのメールを確認したアスナが立ち上がった。


「ええ、血盟騎士団副団長として命じます。わたしと共に団員竜使いシリカと月夜の黒猫団の救出しなさい」
「――――アスナ様の仰せのままに…………緊急事態です、コリドーを使いましょう」
「か、回廊結晶!? 俺達の為にそんな…………第二十八層から降りれば良いじゃないですか!」

「此処で死ねば、死体は残らない、それでも?」
「――…………分かりました、お願いします」
「では行きましょう。コリドーオープン」


 空間が歪み第二十七層の迷宮区に繋がった。
 コリドーを潜ると同時に俺の左人差し指からレーザーライトが照射された。


「行きましょう、この先にシリカが居る筈です」
「あんたのそれって、前にシリカとペアで出した指輪なの?」
「そのとおりです。流石はアスナ様のご友人」
「――――――早く行きましょう。此処は転移結晶も無効化するトラップも多いわ、急がないと」


………………
…………
……


「言ったろ。俺達なら余裕だって」
「もう少しで攻略組の仲間入りだな――――あれ? シリカちゃん? その光は何?」
「えッ!? あ、これは――――近くにクラディールさんが来てます!」


 シリカの薬指から蒼い光が伸びていた。暫くすると何かに気付いたのか、一度メニュー画面から指輪を外し人差し指に変えた。


「どうかしたの? 光が消えちゃったみたいだけど?」
「いえ、何でも無いんです。もう少しでクラディールさんが来ると思いますから」
「お? みんなちょっと来てくれ」


 シーフスタイルのダッカーが壁に触れると隠し扉が現れた。


「――――そこまでだッ!!」


 怒鳴り声の発生源は血盟騎士団の団員からだった――――そして。


「…………アスナ」
「…………あなた達の装備でこの迷宮区は危険です、速やかに離脱しなさい」
「そうだ、早く此処から離れるぞ」

「――――ケイタ!? 何で此処に!? ギルドホームはどうしたんだよ!?」
「お前達が迷宮区に潜るって聞いて、慌てて追いかけて来たんだよ――――俺達の装備じゃ此処は危険だ、直ぐに出よう」
「何言ってんだよ! 此処の敵は俺達でも楽勝だったんだぞ! そんなの嘘に決まってる!」

「ほら、見てくれよ。隠し部屋だ――――開けてないトレジャーボックスまであるんだ!」
「――――それなら、嘘かどうか全員でその部屋に入って確めようじゃないか」
「ちょっとッ!? あんた本気なの!? コリドーまで使って此処に来たのに、自分からトラップに入ろうって言うの!?」
「そのとおり。この部屋は――――各階層の迷宮区には上の階がクリアされると、ランダムでトラップ部屋が出現する」


 クラディールはメニューを操作して俺を除いた全員に迷宮区のマップを配布する。


「コレが今現在、攻略組が持っている第二十六層迷宮区のマップだ、この部屋は存在しなかった。明らかにトラップだ」
「そ、そんなの入って見なくちゃ判らないじゃないか、開いてないトレジャーボックスだぞ、見逃せって言うのか!?」
「だから全員で入ると言っているのだ――――アスナ様が居ればこの様なトラップ恐れるに足りず」
「待ってくれ、いや、待ってください。せっかく見つけた宝箱の中身を遣せとか…………無いですよね?」
「所有権はそちらで構わない、良い物だったら相場で買わせてもらおう」


 隠し部屋の扉を潜ると、中は意外に広かった。そして開けられていないトレジャーボックスが中央に一つだけ。


「い、意外と広いんだな。隠し部屋だからもっと狭いのかと」
「全員、宝箱を背に戦い易いパートナーと陣形を組むのだ。恐らく、隙間無く敵が沸くでしょう。
 シリカはサチの後ろへ――――任せた」
「――――ッ、はい!」

「あ、あの、本気で此処までする必要あるんですか? 流石に俺達を驚かせる冗談ですよね?」
「宝箱を開けて見ると良い、冗談かどうか解る。こう言うトラップは一人以上殺さないと、設置する意味が無い。
 そこから予測される事は――――この部屋は一部のアイテム、解毒や転移などの結晶アイテムは使えないだろう」
「ま、マジで…………?」


 全員で取り囲んだトレジャーボックスに、ダッカーがフラフラと近付く。


「開ける前に獲物を抜いておけ――――全員戦闘準備は良いな?」
「――――あ、開けるぞッ!!」


 ダッカーがトレジャーボックスを開けた瞬間――――――視界を覆い尽くす程の大量のモンスターが部屋を埋めた。


「――――戦闘開始ッ!!」 
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