ソードアートオンライン〜魔術士と呼ばれた破錠者〜
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2 こんなのSAOじゃないよbyアスナ
「結局シラも来たのか」
「仕方ないじゃないですか。世間体もありますから」
74層転移ゲート前。
そこにはキリトとシラの姿があった。シラの格好は嫌でも目立つため視線がちらちらと向けられている。
「シラも大変だよな」
「キリトといるから余計に目立つんですよ」
「俺真っ黒だもんな」
自分の姿とシラを見比べそう感想をもらす。白黒の彼らは否応なしに傍にいるだけで目立ってしまっている
「どうして行く気になったんだ?お前が世間体を気にするとは思えない」
「気まぐれですよ、と言いたいところですが少々アスナさんの持ち物に用がありまして」
もちろんPKするとかではないですよ?と付け加える。アスナとは昨日会ったばかりだから何か頼むとも思えない。
「どういうことだ?」
「アスナさんが来れば分かりますよ」
転移門が光る。
「きゃああああ!よ、避けて!」
「はい」
「はいってわあああ!」
転移門から誰かが叫びながら突撃してきた。
場所的にシラの位置はキリトと転移門の間。声の願いに答え、ひょいと横に跳び避ける。
そうなれば必然的に突撃はキリトへ。避け切れず、地面へと転がった。
「いくら圏内だといっても危ないですね」
倒れたの人物らを尻目にシラは一人ごちる。
あたりで今一瞬消えなかったかとかあれが魔術師かとか囁きが飛び交っているが完全に無視だ。
「や、やーーー!」
キリトを倒した人物がまた叫ぶ。
それからキリトをもう一度ひっくり返し、胸を隠すように自身を抱きしめた。
シラはそれの一部始終をまじまじと眺める。それからふむとため息なのか面白がっているのか、わからない行動をとった後に口を開いた。
「アスナさん、遅刻です」
「掛ける言葉違うでしょ!」
顔を真っ赤に染めたアスナがシラを睨む。またふむと鳴くシラ。
「お楽しみのところ大変申し訳ないんですが――」
「どう見たら楽しんでるのよ!」
「好きな男性に胸を――」
「何で知ってるの!?」
「エギルさんに聞きました」
「後で覚悟しておくように伝えてくれる?」
「はい」
即座にエギルにアスナさんが許さない、絶対にだと言っていると伝言を飛ばす。速攻でなんで!?と返ってくるがシラは華麗にスルーした。
「や……やあおはようアスナ」
「キリト、良かったですね」
「良いわけ……なくもないか」
「キリト君!」
「ごめんなさい!」
シラが二人を弄っていりと再び転移門が起動した。
そこから出てきたのはシラは見たことのない顔だ。
神経質そうだとシラは直感する。
「ア、アスナ様!勝手なことをされては困ります」
「嫌よ、今日は活動日じゃないわよ!だいたいあんたなんで朝から家の前に張り込んでるのよ」
「昨日、撒いたからじゃないですか?」
「うっ……」
「シラ、どっちの味方だよ」
「面白い方の味方です」
今日のシラはアスナを弄るのが面白いらしい。来訪者には敵意を向けられていることに気が付いているだろうに。
「悪いが今日は貸し切りなんだ。本部にはあんた一人で帰ってくれ」
「黙れ!貴様らのような雑魚プレーヤーにアスナ様の護衛がつとまるか!」
気を取り直してキリトが言い返すも来訪者は引く気配はない。
すかさず付け加える。
「あんたよりはまともにつとまるよ」
「ガ、ガキ……」
来訪者は憤怒で顔を真っ赤にし、ウインドウを操作した。デュエルだ。
キリトはアスナに目線をやった。
「いいのか?ギルドで問題にならないか?」
「大丈夫。団長には私から報告する」
承諾。キリトは頷きデュエルを受諾する。
「御覧くださいアスナ様!私以外に護衛がつとまる者がいないことを証明してみせますぞ!」
キリトと来訪者は互いの愛剣を引き抜き、決闘を開始した。
「大丈夫かな……」
アスナがキリトを心配そうに見つめる。その様子は年相応でシラは柔らかい笑みを浮かべる。
「キリトは負けませんよ。負ける要素がありません」
「でも」
睨み合っている両者を映す目は変わらない。
「信じてあげなきゃ勝てるものも勝てませんよ」
「……うん」
一度の交錯。
たったそれだけで雌雄は決した。
――――――――――――
時間は少しばかり進み、ダンジョンへ向かう道中だ。無論、先の勝負はキリトの圧勝。来訪者――クラディールとかいうらしい――は憎々しげな言葉を残して去っていった。
「さっきのはすばらしいですね」
「さっき?」
「もしかしてクラディールの武器を壊したやつ?」
「そうですとも。アスナさん。考えたことはあっても実行はできませんからね」
シラは惜しみない賞賛をキリトに。キリトは若干照れたように頭を掻いた。それからすぐに気をとりなおして言葉を紡ぐ。
「コツは経験かな。一日中デュエル吹っかけて歩いたらどうだ」
「おや、昨日の反撃をされてしまいましたね」
ニヤリと視線を交換しあう。仲間外れにされたアスナが若干つまらなそうな顔をしていた。
「二人共仲いいね」
「序盤で宿が隣でさ。よく話してたんだ」
「そうなんだ」
付き合いは意外と長いようだとアスナは判断する。
それからシラへと話を振った。先程渡した、彼の新しい武器を思い出しながら。
「シラ君って団長とも仲がいいの?」
その武器を渡されたのは、つい二時間前。
うきうきと出立の準備を進めていたアスナへ血盟騎士団団長ヒースクリフ直々の召集メールが届いた時の落胆と衝撃はあまりに記憶に新しすぎる。
そこで手渡されたのがシラへの届け物だった訳だ。
「贔屓にはしてもらっていますね。たまに情報と引き替えに装備を譲っていただいたりする程度です」
「団長とも顔見知り……」
シラの友人関係はどうなっているのか。アスナとキリトは顔を見合わせ青い顔を確かめあった。
「今回、私がパーティーを組んでいる理由もヒースクリフさんに頼まれたからですし」
「頼まれた?」
キリトが聞けばシラは声を若干変えて――恐らくはヒースクリフの声を真似て――喋り出す。
「『アスナ君の勉強の為に君の戦い方を見せてあげてくれないか。対価として74層のモンスタードロップ武器をアスナ君経由で譲ろう』というメッセージが来たんですよ」
「太っ腹だな。一回パーティー組むのに最前線モンスタードロップか」
それほどの価値があるのだろうか。いや、あるのだろう。
この目の前の男は剣の世界には存在しないはずの魔術師なのだから。
シラの歩みが止まる。それとほぼ同時にキリト、一歩遅れてアスナも止まる。
「一匹いますね」
「どうする。立候補いないなら俺がやるけど」
「……この戦闘マニア」
ギリギリ影が見えるか見えないかの遥か遠くにいるモンスターを一瞥――プロテクションボア、一階層のフィールドに出現していたフレンジーボアと同系統のモンスターだ――アスナがやれやれと何とも言えない視線を向ける。それを受けてぎこちなくなった笑顔でシラに尋ねる。
「シラは?」
「私がやります。ヒースクリフさんからの条件はアスナさんに戦いを見せることですから」
それだけ言うと戦闘体制に入る。
彼の取り出したのはピック。指に挟み込み構えをとる。
キリトはよく知っている投剣基本スキル「シングルシュート」の構えだ。
「こんなところから届くの?」
「ギリギリ射程に入ってます。実はシングルが投剣スキルの中で一番射程が長いんですよっと!」
スキルが発動。誤たず、遥か遠くのモンスターに直撃しHPが十分の一程削れる。相手も攻撃されたことでシラをターゲット。こちらへと突っ込んでくる。
「どんどん行きますよ」
今度は両手にピック。投剣スキル「ダブルシュート」が発動。更にプロテクションボアに直撃。既にHPは半分か。
「最後はこれですね」
構えるのは槍。重戦士タンクが持つような無骨な大槍だ。
スキル発動。投槍上位スキル「ブレイブランス」
黄色の光を帯びた大槍が凄まじい速度でボアの額に命中。残りHPは消し飛び、ポリゴンとなり砕け散った。攻撃すら許さない圧倒的勝利。
「ね、ねぇキリト君」
「何?」
「SAOってこういうゲームだったっけ?」
「違うと思う。思うけどシラを見てると揺らぎそうになるよ」
シラは悠々と投げた武器を回収に向かっている。
その背を見ながらキリトはため息をついた。
「あれが、シラが魔術師って呼ばれる所以だよ。他のゲームだと魔術師系って遠距離大砲だろ?」
後書き
誰にも頼らないでスキル名考えた結果、御覧の通りだよ。
……誰かどの武器のスキルでもいいのでアイデア下さい(泣)
で、出来れば短剣、投槍のを……!
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