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ソードアートオンライン〜魔術士と呼ばれた破錠者〜

作者:フォズ
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1 悪徳商法、俺は悪徳商法を見たbyエギル

 
前書き
これはソードアートオンラインの二次創作であり、本作品は原作とは違う独自の解釈を用いる場合があります。

基本的に原作に沿いますが所々本編と異なる状況が出てきます。
先にご了承ください。

にじふぁんからの移転作品となります 

 
VRMMOというものを知っているだろうか。略さずいえば仮想現実大規模オンラインといったところか。
それはゲームに関わる者達――愛好家、制作者に関係なく――にとって究極の夢であった。それはゲームの世界に入り込めるということと同義であったから。
どうして過去形かと疑問に思うだろうか。答えは簡単。一人の天才の手によって実現したから。
この先の制作者達はどのような夢を描くのだろうか。一抹の不安が残るがそれは心配することではないだろう。




全ては達成されたのだから。



――――――――――――

ユラユラと白い影が乱雑とした下町を通り過ぎていく。誰が干したのか洗濯物が時折風に揺らめく。
それを一瞥しながらも影は足を止めず、速くも遅くもない速度で進んでいく。その歩みに迷いはない。
影は急に足を止める。向き直った先には一軒の店。
ドアに手をかけ、開ける。
遮られていた音が解放され中の喧騒が耳に届いてくる。

「いや、それはいいけどよ……俺達ダチだよな?な?俺にも味見くらい――」
「八百文字で感想書いてもってきてやるよ」
「そ、そりゃないだろ!」
「でも、料理はいいけどどこでするつもりなのよ?」

そこまで聞き届け、影は中へ滑り込む。ドアの閉まる音に雑談に興じていた人々の視線が集中する。
白い影は、にこりと笑った。

「こんにちは。キリトにエギルさん」
「よう、シラ」

白い影――シラはうざったそうに頭に被せていたフードを取り払った。その内から出てきたのはフードよりもさらに純白の髪。そして影に隠れていた整った顔立ちが顕になる。
少年というには達観した雰囲気を持つそれには紳士という言葉が似合うのではないだろうか。

「おや、そちらは『閃光』アスナさんでは?」
「白い髪に白いマント……あなた、魔術師!」

美しい長髪を持つ美少女アスナは一瞬の躊躇の後、まさかといった表情で指を差す。それに対し、シラは苦笑を呈した。

「あなた程の美しい方が人を指差すのは如何なものでしょうか」
「うつくっ!?」

予想外の返しにアスナは固まる。隣で全身――背中の剣までも――真っ黒の少年は直球には弱いのかと、ぼやくが聞こえていないようだ。

「そうですね。周りには『魔術師』と呼ばれていますね。シラと申します。一介のソロプレーヤーです。どうぞお見知りおきを」

そのまま胸に片手を当て礼の姿勢を取る。アスナは未だ再起動は完了せず、言葉にならない謎言語を発している。

「そういえばアスナはシラと話すのは初めてだったんだな」

先程の黒い剣士の少年、キリトがシラに声を飛ばす。シラは笑顔のまま頷いた。

「今日の収穫はどうだった?」
「まあまあですね。キリトはどうでしたか?」
「聞いてくれよシラ!」

そこへ中年のオッサンと言うべきか。この店の店主、エギルが口を挟んできた。

「キリトのやつはな、ラグーラビットの肉取ってきたんだ!」
「ラグーラビットですか」

シラは驚いたように目を見開いた。そのまま続きを促す。

「それでだな、あまつさえアスナに料理を頼んで俺には一口もくれる気がねえんだよ」
「なるほど。それで先程まで騒いでいた訳ですか」

納得がいったとシラは頷く。
そこでキリトは迷うような素振りを見せ、それから口を開いた。

「それでさ、シラにはいつも世話になってるから――来るか?」
「俺には世話になってないって言うか!」
「キリトも意地悪ですね」

エギルは叫び、シラは笑みを更に深くした。
そして言葉を続ける。

「ならお言葉に甘えてアスナさんに調理を頼みましょうか」
「あ、シラてめぇ!お前も抜け駆けか!」

もはや半狂乱になり店を吹き飛ばしてしまいそうな勢いのエギルにシラはいえいえと首を振る。

「エギルさんも一緒に如何ですか?」
「本当か!?」
「おいシラ……ラグーラビットの価値分かってるよな?」

嫌そうな声をあげるキリト。それはそうだろう。三分の一にするかで迷ったのだ。四分の一は流石に少ない。

「大丈夫です。キリトのラグーラビットを取るなんて言ってないじゃないですか」
「え」
「おい、まさか」

一転いたずらっ子のような顔をし出したシラにエギルはまさかという。想像できるのは一つしかなかった。

「私もラグーラビットの肉、持ってますから」
「やっぱりか!」
「……マジか」
「美しい……美しい……」

エギルは別の意味で半狂乱。キリトは頭を抱え、アスナは未だ再起動叶わず。
シラは子供のように笑った。






――――――――――――

「まさかラグーラビットが一日に二つ肉落とすとはな」
「もう二度とないだろうな」
「そうねぇ……本当に奇跡」

さて、所変わりアスナ宅。
ちょうど、贅沢にラグーラビットの肉を二つ使ったシチューを食べ終えたところ。
各々満足し、夢見心地でそう会話する。

「シラには感謝だな。次の商談じゃ二割くらい付けさせてもらうぜ」
「それは嬉しいですね。ありがとうございます」
「もしかしてエギルさんを誘ったのってこのため?」
「ばれましたか」

シラも笑顔が明るい。やはり食べ物の力は偉大である。
そんな人物を眺めながらアスナは食器を片付けながらそういえばと続ける。

「あの魔術師さんが私の家に来ることになるなんて」
「あの、と呼ばれる程ではないですよ」
「シラは十分あの呼ばわりされるよ」


まさかと笑い飛ばすシラにキリトはどうしたものかと諫めにかかる。

「容姿といい、やることといい、強さといい、コツとかないのか?」

キリト押してそう言わしめる存在、シラ。アスナは今日初めてまともに話した人物へと身震いする。
日本人が多い中で注目を集める穢れ無き白。それはまだ外見的特徴というだけ。二つ名がつく以上攻略組であることは想像に難くない。
この剣のみによって生きなければならない世界にて魔術師という名を抱く、その特別さ――異様さと言うべきか――が彼の異端性、そして強さを端的に表しているのだ。

「コツは経験ですね」
「鬼か。これ以上どうやって戦えって言うんだよ!」
「わざとアラームトラップに引っ掛かるとかどうでしょう」
「鬼だ!」

アスナは思う。話すかぎりただの普通の少年なのにと。

「話し方が変わってる気がするけど」
「ロールプレイってやつなのか、元々ああいう話し方なのかどうだかな」
「私にはわからないよ」

無理なものは無理。アスナはいつかシラ自身が語るだろうと自己完結しておく。
現実リアルについて言及しない。それはネットゲームにおいて基本的な規則――特にこの世界においては暗黙の了解――だ。
見切りを付け、未だに戯れあっている二人へ声をかける。

「二人ともギルドには入らないの?」
「ギルド?」
「ギルドですか?」

かけられた言葉にキリトは何かを思い出すよう顔を伏せる。シラはといえば疑問の表情をすぐに引き締めた。

「ギルドはちょっとな」
「私も遠慮したいですね。戦闘中に気を使いたくないです」
「ずいぶんな自信ね」
「初めからずっとそんな感じだったぞ、そいつは」

拒否とエギルの補足を聞き、アスナはやれやれとため息をつく。

「いいわ。なら二人ともしばらく私とパーティー組なさい」
「な、なんだそりゃ」
「お断りします」
「君たちは良くても私には君たちの強さを確かめる必要があるの」

血盟騎士団副団長としてね、と最後に付け加える。
それはもはや決定事項通達発言である。
キリトが慌てて立ち上がる。それにあわせてテーブルが微かに揺れた。

「ギ、ギルドはどうするんだ」
「私のギルドは別にレベル上げノルマなんてないし」
「護衛は」
「今日みたいに撒いてくるし」

そんなやりとりを続けるのを横目にシラはエギルに話を振る。

「思っていたよりもお転婆というか」
「ありゃキリトがいるからだ」
「なるほど」

そこで不意にシラの指が動く。
それはSAOプレーヤーなら馴れ親しんだ動作。即ちウインドウを開く動作だ。

「こんなとこで開いて何する……商売か」
「ええ、そうですよ」

トレード申請が飛んできたためすぐに理解する。だが食後すぐというのは少しばかり面倒だった。

「店に戻ってからでもいいんじゃないか。もうちょっと幸せに浸らせてくれよ」
「いーえ、だめです。開いて下さい。今じゃないと困ります」
「たく」

仕方なくトレード欄を開く。シラの提示してきたアイテムは一種類、一つ。食材アイテムのようだ。
何気なく品名を確認する。

「…………」

「はあ!?」
「な、何!」
「どうした!」

痴話喧嘩を繰り広げていた二人がビクリと肩を震わせ、エギルの方を振り返る。

「シラおまえ!」
「どうしたの?」
「……これを見ろ」

顎でトレード品を指す。キリトとアスナがおずおずとそれを後ろから覗きこむ形になる。

「嘘……」
「あり得ない」

「「ラグーラビットの肉!?」」
「ラグーラビットの肉が一日に二つ手に入るなんて、本当に奇跡ですよね」

先程のアスナの言葉をそのまま使い、魔術師は機嫌良さげに笑った。





――――――――――――

オマケ

「500kでどうだ」
「エギルさん、あなたの欲はそんなものですか。分かりましたなら他の店に――」
「ま、待て!分かった600k出す」
「先に他の店にも見せてきたんですが800k出してもらったんですが。エギルさんならもっと値をつけてくれるかと……」
「ぐぐぐ、801だ」
「ふむ」
「805」
「820」
「810」
「……まあそんなところですか」
「よし!」
「ところで」
「ん?」
「二割付けてくれるんでしたよね?」
「どちくしょう!」


「鬼だな」←キリト
「商人の方がいいんじゃない?」←アスナ

 
 

 
後書き
早速クラディール達を消しましたw
こんな感じに所々あれ?という部分が出てくるかと。
 
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