IS―事務員ですが、何か?―
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スピンオフ クリス・ファーチュナの思い出
前書き
お待たせしました!本来はもう少し後で投稿する予定でしたが面白そうな話を思いついてしまったので投稿します。
なんか甘い話になった気がします
あたしの名前はクリス・ファーチュナ。職業は歌手をしてる。
皆世界の歌姫なんてあたしを持ち上げるけどあたしはまだそんなレベルじゃないと思ってる。何故ならまだあたしは3年しか活動してないから自分ではまだ未熟な部分は多いと思うから自分からそんな名前は言わない。
一時期ほんとひどかった。毎日毎日世界を飛び回って歌ったのはほんとに疲れるんだ。けど、それ以上にあたしの歌を聞いてくれる人が本当に嬉しそうな顔をしてくれるからあたしはこの仕事を続けられるんだ。青い考えかも知れないけどあたしはそう思ってるんだ。
んで!今日はあることを言おうと思って事務所にいったんだ。
「プロデューサー」
「なんだいクリスちゃん」
「ひと月休みます」
「そうか………………ってええええええええええええ!?」
あたしは無邪気に笑っていた。
あの後なんでいきなりひと月休むんだ!?どこか具合が悪いのか!?何か私に不満があったのか!?あったなら教えてほしい!改善するからって泣きつかれて凄く引いたけどまあ理由は去年1日も休みがなかったからそろそろ休ませてほしいって言ったらプロデューサーがそ、そうかって納得して休みをくれた。その後なんか言ってたけど。まああたしは気にしない。
「だから私は休ませるべきだと言ったんだ。クリスちゃんのこれからを考えたらやはり上のジジイ共を引きずり落とすのが一番か……なら、クリスが休んでる間に落とす、確実に」
うん、何も聞いてない聞いてない。あたしは何も聞いてない。
気分転換に空を見上げてみたら物凄い快晴だった。
「そう言えば、あたしが蓮に恋したのもこんな晴れた日だったかな…」
あたしはあたしの初恋である犬林蓮に恋をしたあの騒がしくも楽しくて混沌としていた藍越学園での日を思い出した。
あれはパパとママが亡くなってあたしが荒れてた時におばさんが日本の学校を受けてみたらどう?って勧めてくれた事がきっかけだったんだ。あたしはそんなおばさんの気遣いをバカみたいに勘違いしてあたしは見捨てられたんだって思ってさらに荒れたんだ。それであたしは転校というか留学した時、クラスメートとちょっとした問題を起こしてそれで流石にこれ以上の問題は起こされたくないと学園が判断したのかあたしにお目付役を生徒会から送って来たんだ。それが、蓮との最初の始まりだった。
「あのー、クリス・ファーチュナさん、であってますか?」
「なんだよ、あたしがクリスだけど」
「ああ、良かった。僕は犬林蓮って言うんだ。生徒会の仕事で君のサポート役になりました。よろしくお願いします」
このときあたしは正直むかついた。この学校もあたしを厄介者にするのかって。
「サポート役?要はあたしを監視する奴だろうがふざけやがって」
「僕としてはそういうつもりは一切ないんだけど」
「そんなの信じられるかよ」
「あらら。僕何にもしてないのに嫌われちゃったかな」
「ふん」
それから毎日毎日休み時間になったらあたしのところに来て蓮は話しかけてくるようになった。
最初はもうほんとにウザくてウザくてしょうがなかったけどある日を境にちょっとだけ考えが変わったんだ。
それはみどり奏の管理人さんが風邪をひいて寝込んであたしが弁当を遠慮した時だった。その日の休み時間昼食を取ろうと思って財布を取り出そうとしたら最悪なことに財布を忘れたんだ。
「くそ、ついてねぇ」
あたしが中庭のベンチで座ってるとそこにあいつが、蓮が来たんだ。
「今日はここにいたんだ」
「なんでここにいんだよ」
「何でって教室にいなかったから仕方なくここで久々に食べようと思ったらあなたがそこにいたんだよ」
「マジかよ…」
ついてねぇ…。なんでこいつなんかと同じ場所にきたんだよ…。
「ファーチュナさんはなんでここに?」
「別にいいじゃねえか!あたしがどこにいようがあたしのあたしの勝手だろう!」
そうさけんだのが悪かったのか、あたしのおなかからぐうううううううと情けない音がしたんだ。
「もしかして、弁当ないの?」
「わ、悪いかよ……」
あたしは恥ずかしくってあんまり大きな声が出せなかった。
「んー、じゃあこれあげる」
そういってあいつが差し出してきたのはメロンパンだった。
「い、いいのか?」
「もちろん」
「返せって言ってもかえさねぇからな」
「もちろん」
あたしはメロンパンを受け取ってかぶりついた。
そのメロンパンは冷めてるのにとてもおいしかった。クッキー生地はそこそこ固くて、パンはふんわりとしていた。
「おいしい…」
「それはよかった」
あたしが夢中になって食べてる隣にあいつは少し笑って座ってから自分もメロンパンを食べ始めた。
「ごちそうさま」
「お粗末様でした」
え?
「あのメロンパン、お前が作ったのか?」
あたしは驚いた。こいつ料理できたのかと。
「まあ今日朝早く目が覚めちゃって時間もたくさんあったから昨日のパンを作ったあまりの生地で作ってみたんだ」
なんだか負けた気分だった。
「そ、そっか…なあ普段どんな生活してるんだ?」
「僕?僕は」
それから今まで話さなかったのに沢山の事を話した。自分のこと、相手のこと、アメリカはどうだったとか、ここのなにが美味しいとか、たわいもなくて、あたしがここのところずっとしていなかった、楽しい、楽しい会話だった。
「なあ」
「なにかな?」
「なんであんたはあんなにつっぱなしたのに毎日あたしのとこにきたんだ?」
「単に、ほおっておけなかったからかな」
「ほおって、おけなかった?」
「うん。だって口では酷いこと言いながらも目は寂しそうだったからね。だから」
そう言って、あいつは、蓮は笑ったんだ。そこが、あたしの恋の始まりだったんだ。
それから由紀や会長に会って、生徒会に入って、皆で馬鹿なことをやった。そして、競い合って、蓮は由紀を選んだ。
あたしはたまたま近くを通りかかったパン屋に並んだメロンパンをみた。
「あたしは絶対諦めないからな、蓮」そう言って、あたしは由紀の店に向かった。
後書き
由紀のスピンオフの前話でした
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