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ロボスの娘で行ってみよう!

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第6話  卒業式の和解


ワイドボーン矯正。
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第6話  卒業式の和解

宇宙暦787年6月30日

■自由惑星同盟首都星ハイネセン テルヌーゼン市 同盟軍士官学校

 初夏の青空の中、第783年度士官学校生の卒業式が執り行われていた。
主席は10年に一人の逸材として名を馳せた。マルコム・ワイドボーンであった。
彼は2年時のシミュレーションで、自分より遙かに成績下のヤン・ウェンリーに破れたことを長い間まぐれであり正攻法で来ない卑怯な手と思っていた。

しかし昨年より始まった全校生徒による、応用を持ってするシミュレーションで、
ヤンだけでなく、3年生のリーファ・ロボスや2年生のダスティー・アッテンボローに次々に破れ、考えを変えていた、所謂戦場では常識的に敵動くわけがないと、

それが判った後は、持ち前の戦略戦術眼で的確な指揮が執れるようになり、
シミュレーションでも好成績をあげられる様になった。

考えが変わった為に、人付き合いも良くなり同級生は元より下級生にも優しい先輩として慕われることになった。ワイドボーンが後に士官学校の最終学年が自分の人格構成に多大なる影響を与えたと語った事はワイドボーン語録に記録されている。

ヤン・ウェンリーは本人の好む好まないに関わらず、ワイドボーンを破ったと言う実績を買われ、同級生や下級生に対して戦術での突発的な事態や奇策を臨時講師として教えてくれるようにと校長に頼まれ渋々請け負い教えることになっていたのである。

その為、同級生は元より下級生からの信頼も厚くなり、
校長以外の教官からも信頼を得ることになった。
シトレ校長は最初からヤンを買って居たからこそ任せたのである。

結果ヤンは、原作では卒業時の席次は4840名中1909番であったが、
この戦略戦術の評価により、4840名中983番に1000番近くランクUPしたのである。

新戦略戦術シミュレーションはリーファの話を聞いた、ロボス提督がシトレ校長と話し合い、自分たちの出来る範囲での士官教育の変更を行った結果であった。

「ヤン先輩、ラップ先輩、卒業おめでとうございます」
「ラップ先輩は違いますが。ヤン先輩も卒業できるんですね」
「ラップ、ヤン、卒業おめでとう、ヤン教育者としてのお前を見たかったんだがな」
「ラップ、ヤン、卒業おめでとう」
 
「「ジェシカ、リーファ、アッテンボロー、キャゼルヌ先輩、ありがとう」」
みんなの心からの祝福に嬉しがる2人である。
そこへワイドボーンがやって来たのである。

「ヤン」
「ワイドボーン」

喧嘩でもしに来たのかと思うがそれは勘違いであった。
「ヤン、俺はお前に負けた時まぐれだ、汚い戦法だと思ったが、
それが間違いだと判った。お前の戦法は凄く勉強になった。すまなかった」
頭を下げるワイドボーンに慌てるヤン。

「ワイドボーン、そんな頭を上げてくれ。私は気にしていないし同期じゃないか」
「ヤン、ありがとう」
「ワイドボーン」

がっちり握手する2人を見ている。キャゼルヌ、リーファ、アッテンボロー、ジェシカの横へシトレ校長がやって来て、しみじみと見ながら話し出す。
「ワイドボーンもヤンもラップも一皮むけて一回り大きくなったな」
「「「校長」」」

「貴官達は此から実戦の中へ向かう、今日の事を忘れずに行くことだ」
「「「「「はっ」」」」」
「校長も前線勤務へ復帰だそうですね」
キャゼルヌが思い出したように話し始めた。

「「「「「おめでとうございます」」」」」
「ありがとう、第八艦隊司令官を拝命したよ、後任にはロボス提督が成ることになっている」
「あ”親父から聞いてないぞ!そんな話」
「リーファ、落ち着け」

「まあ、ロボスも驚かせようとしているのと、娘と義息子の在籍中の学校での立場を考えたんだろう」
「なるほど、あとで親父に詰め寄ってみます」
「ロボス候補生、程々にしてやれよ」

「了解しました、校長」
「アッテンボロー候補生、夫らしくフォローするようにな」
ニヤニヤしながら校長が言ってくるので、
からかわれているのが判るアッテンボローであった。
「了解しました、校長先生」
「では私は此で失礼するよ」

「流石校長だな」
「全くですね」
「威厳が違うや」
口々に校長の威厳の凄さを話していく。


「ヤン、卒業式後に飲もう」
「ワイドボーン、お前も大部柔らかくなったな」
「みんなほどじゃ無いけどな」
笑うワイドボーン。

「先輩方、飲むとのお誘いなら,無論奢りですよね」
「ロボス、普通それは後輩が先輩を慰労してくれるモノだと思うが」
「あーら、ワイドボーン先輩は統合作戦本部作戦課へいきなり配属ですよね、
その位の奢りは出来る勤務手当が付きますよ」

「リーファにかかればワイドボーンも形無しだな」
「ヤン先輩も、宇宙艦隊総司令部付きに決まっていますからね」
「おい!それは聞いていないよ、確か先月の内示では統合作戦本部記録統計室だったはずだが?」

「ヤンは知らんと思うが、さるお偉方2名がヤンの見識を買って士官学校教官と宇宙艦隊総司令部へ綱引きを行って、宇宙艦隊総司令部付きに決まったのが先日だからな」
「私は、電話で聞きましたー」

「本来なら守秘義務違反なんだが、リーファなら仕方が無いわけだな」
「キャゼルヌ先輩、酷いですよ。折角資料の山に埋もれて過ごせると思ったのに」
「それはそれ、お偉方2名は貴官の見識戦略戦術眼を高く評価していてな、資料室へ放り込むのは勿体ないと言う考えなわけだな、シミュレーションでワイドボーンを破っておいて、それに臨時教官を引きうけておいて、楽をしようとは甘かったな」

キャゼルヌはニヤリと笑い、ヤン以外のみんなも笑い出す。
「酷いな、此なら臨時教官なんか引き受けなければよかった」
「まあ、むくれなさんな、行きたくても行けない連中が大勢いるんだ、精々頑張ることだ」

「そうですよ、今のヤン先輩には自業自得という言う言葉がピッタリですね」
「アッテンボローそれは酷い」
「ヤン、良いじゃないかハイネセン勤務なんだからな、俺は最前線のエル・ファシル警備艦隊司令部付きだぞ」

「ラップは内地だと思ったんだけどね」
「まあ仕方ないさ」
「ジェシカさん気の毒ですね」

「えっ、未だそこまでは」
「ラップ赤く成ってるぞ」
「ええ、まだそんな」

「ジェシカさん大胆発言ね」
2人して真っ赤になるが、ヤンは浮かない顔であった。

「まあ、みんなでパッーと飲もうや」
「お供します先輩」
「行こう」

その話を聞いて、学友達や後輩達が駆けつけ、あっという間に100人を超えた連中が町へ繰り出し、卒業式の夜は更けていったのである。
翌朝シコタマ飲んだ連中が二日酔い悩まされたのは、言うまでもないだろう。

「ウゲー、頭いたいー!!」
 
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