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マイ「艦これ」「みほ3ん」

作者:白飛騨
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EX回:第33話(改2)<いつか靖国で>

 
前書き
敵機動部隊が接近する中、司令は機内の艦娘たちを迎撃させるか否かという判断を迫られる。それは永遠の別れになる可能性があるのだった。 

 

「司令。いつか靖国で……」

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マイ「艦これ」「みほちん」(第3部)
 EX回:第33話(改2)<いつか靖国で>
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「言い忘れたが……」
技術参謀は言った。

「我々が元の時代に帰る一つの方法が来たときと同じ嵐に突入することだ。幸い前方には嵐が接近中だ」
機内の全員が前方の大きな積乱雲を見て息を呑んだ。

彼女は続ける。
「だが敵の空母機動部隊が接近中でもある。我々は新しい情報を何としても日本へ……我々の時代へと持ち帰らねばならない。そのため多少の犠牲が出ることも覚悟して欲しい」

私は、とても嫌な予感がした。

参謀は艦娘たちを見ながら淡々と続ける。
「戦艦と空母……そうだな。金剛は、まだ戦闘には不慣れだから比叡を出そう。そして補佐に日向。攻撃の主軸は赤城で。押さえは龍田というのはどうだろうか? 司令」

振り返った技術参謀は無表情だった。

私は振り絞るように言った。
「それは艦娘を盾にする、という意味ですか?」

「そうだが」
参謀の、あまりにも感情が見えない顔つきに私は思わず境港で出会った深海棲艦を思い出した。

「承服……致しかねます」
苦しい口調で応える。

しかし参謀は淡々と言う。
「これは、あくまでも提案だ。最終判断は現場の指揮官である、お前がすべきだ。私も強制するつもりは無いが」

(嘘を言うな……)
と思った。艦娘たちも固唾を呑んで、こちらを見ている。

参謀は続ける。
「我々の使命、今の状況……たった一機で敵機動部隊に立ち向かえるか? 早急に判断せよ。後出しで手遅れになるのは分かるな?」

「……」
それは痛いほど分かる。そして艦娘の犠牲も出したくない。

轟沈せずとも下手をすれば別の時代に取り残されるのだ。
過去ならともかく未来だから……実質的に永遠の別れと、なり兼ねない。

寛代が祥高さんに何かを伝え秘書艦も索敵範囲を広げたようだ。

一瞬の間があったが直ぐに頷いて報告をした。
「報告します司令、前方に敵影確認しました。敵空母2、戦艦2、駆逐艦多数。距離15000。また敵機の出撃を確認」

技術参謀が強い口調で叫ぶ。
「どうする司令。時間が無いぞ!」

「司令」
日向が声をかけてきた。

「私たちは艦娘です。敵が居れば戦う。それだけです。躊躇(ためら)わずに、ご判断を」
泣けるなら泣いてしまいたい思いだ。

「分かった」
私は、ようやく決断した。

「これより本機は迎撃作戦を行う。着水後、前方の敵機動部隊に対し我々は、比叡、日向、赤城さん、龍田さんで部隊を構成する、以上だ。準備かかれ」
『ハッ』
全員、敬礼をした。

海上で戦闘中の艦娘は最悪の場合そのまま置いていくことになるのだ。彼女たちは分かっているだろうが、ずっと無言だった。

私は機長に指示を出す。
「機長、着水を」

「了解」
応えた機長は低気圧が接近して、うねりの出ている海上へと、ゆっくり着水した。

ザザザという水の音と同時に水しぶきが上がる。水上に浮かんだ機体は鉛色の波間で大きく揺れていた。

窓の外の大きな波を見ていると、ふと舞鶴で敗北した作戦の悪夢が蘇る。あの時の敵は荒れる海の中を縦横無尽に攻撃してきた。恐らく今回の敵も海上からは探知できない潜水艦も引き連れているだろう。

だが私たちには潜水艦娘は居ない。まして今回は作戦立案そのものが初っ端から非情なのだ。

 ただ幸い、やみ雲な特攻作戦とは違って彼女たちは逃げ場の無い戦いをするわけではない。もし、この闘いで生き残れば……の話ではあるが別の時代、未来において生き続けることも可能なのだ。

(それだけが唯一の救いか)

 時間と共に海上は荒れてきた。

さらに天候が悪化すれば戦闘の結果に拘らず艦娘たちの回収も困難になるだろう。

「時間が無いぞ、急げ!」
技術参謀は急かす。

(分かってるよ!)
内心叫びつつ私は夕張さんと夕立に指示をして艤装を準備させる。
艤装は演習用の簡易型しかないが仕方が無い。各自、機内で装着する。

その作業を見ながら気象状況の索敵をしていた技術参謀が付け加えた。
「あの嵐だが様々な状況からして我々の帰還への扉となる可能性が高い。その場合は、どうなるか……分かるな?」

「……」
もちろん分かっている。

参謀は淡々と言う。
「我々は海上での交戦よりも帰還を最優先させる」

『……』
艦娘たちも黙っていた。

私は思わず出撃する一人ひとりの手を握ってまわった。みんな泣きそうだが我慢しているのが痛いほど分かる。

私が日向の手を最後に取ったとき彼女は言った。
「司令。いつか靖国で……」

それ以上、彼女の口からは言葉が出なかった。

私も涙が流れるのを防ぐために何も言わず手を離すと直ぐに命令を出した。
「迎撃隊、出撃せよ!」

『出撃します!』
夕張さんが扉を開けると荒れる外洋独特の潮の香りがした。強まった風と水しぶきが機内に入り込む。

「この潮の香りも、久し振りだな」
私は自分の緊張を誤魔化すように呟いた。

艦娘たちは髪や服を棚引かせながら次々と海上へと降りていく。私は扉の横で敬礼しながら一人ひとりを送り出した。

「来るよ!」
寛代が叫ぶと鉛色の雲の隙間に敵機が目視できる。

機長が叫ぶ。
「本機は退避します」

「了解!」
扉を閉めると機体は直ぐに加速して空中へと舞い上がった。

私は直ぐに窓から外を見る。海に降り立った艦娘たちが、あまりにも小さく見えた。そして直ぐに砲撃の灯が見えた。

「皆、死ぬな!」
私は窓から敬礼を送るしかなかった。

あとは湿気による曇りか涙だろうか? 彼女たちの姿が、ぼやけて見えなくなった。

 
 

 
後書き
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※これは「艦これ」の二次創作です。
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サイトも遅々と整備中~(^_^;)
http://www13.plala.or.jp/shosen/

最新情報はTwitter
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PS:「みほ3ん」とは
「美保鎮守府:第三部」の略称です。

 
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