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~異世界BETA大戦~ Muv-Luv Alternative Cross Over Aubird Force

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閑話  勇者タケシ異世界冒険譚(入江剛少尉の大冒険)

 
前書き
ロドリグ攻略作戦の時にエレミア星系へ転移して来た日本帝国軍の中で唯一の行方不明者である入江剛少尉のその後です。
ちゃんと生きていたようです! 

 
――――――っ!!あれ??
どす黒い爆発が起こって激震もろとも吹き飛んだかと思ったのに・・・・・。
「何でこんな森の中にいるんだろう??」あまりにも変化した周囲の光景に入江は思わずあたりを見回す。
すると、急に目の前が光りはじめやがてその光が人の形になる。
「え??なにこれ??」彼は少し怖くなって後ずさってしまうが、その眼はしっかりと目の前の現象を見極めようと凝視する。
『・・・イリエタケシさん・・・。』光が収まり始めた時に人の姿の光がそう話しかけてきた。
「え??あ、はい?」な、なんで僕の名前を知ってるんだ??知り合いなの??
『いいえ、知り合いではありませんでしたよ?私はあなたの事を今しがた知ったばかりです。』光が入江の考えた事に対してそう答えると、徐々に光が薄れていき、そこにはうっすらと光をまとった綺麗という表現ではとても言い尽くせそうにないほどの絶世以上と言っていいほどの美女が現れた。
「僕の考えている事を読んでるのか??」入江は腰を抜かしそうになるほどびっくりした。
『そうですね、驚かせてしまいましたか?それでしたらごめんなさい・・・。』
「い、いえ!・・・・ちょっとびっくりしただけなんです・・・・こちらこそすみません。」入江は混乱の極地にいた。

そして今目の前で起こっている事のすべてが信じられない・・・・というよりも今見えているものやコトすべてが死後の世界なのでは?と思った。
すると『この世界はあなたの思うような死後の世界ではありません。実際に存在する世界ですよ。』
「そうなんですか?・・・あ、ええと僕と一緒にいた他の仲間の姿が見当たらないのですが、ご存じありませんか?」
『あなたはこことは自然の摂理や法則の少し異なる世界から飛ばされてきたみたいですね?・・・・その時にあなたのお仲間さん達は別の場所に飛ばされたのでは無いでしょうか。』
「別の場所?・・・ですか。」依然として入江は状況がうまくつかめず、困惑してしまう。
『何らかの力が働いていくつかの別世界の扉が開き、あなたはその一つに、そしてお仲間たちは別の扉に吸い込まれた、と言えばわかるでしょうか?』女性は丁寧に噛み砕いて説明をしてくれたようだ。

入江もやっと理解が追いついたが、それと同時にここはどこなのか?そして今目の前にいるこの女性は何者なのか?疑問がわいてくる。
『ここはテルラという世界です。そして私はこの世界を見守る者です。』女性は優雅にそしてにこやかにそう言い切った。
「ええと、ここはテルラ星という星で、あなたは・・・・世界を見守る者?・・・・もしかして神様?なのですか?」
『私は自ら名乗る名前を持ちませんが、ありがたいことに人々からは“メリルの神”と呼ばれ、信仰を受けていますね。』
「やっぱり神様・・・・なんですね?・・・・それで、その神様はなぜ私に会いに来てくださったのですか?」入江は質問しながら、神様ってほんとにいたんだ?!とちょっと感動したのだった。
『こちらの時間で今から2時間ほど前に急にあなたのイメージが浮かんできました・・・きっと何かの(えにし)が生まれるのだろうと思い、待っていたところ、ものすごく力強いオーラが生まれるのを感じてこちらに来てみたら、あなたがいたのです。』
入江はオーラが何かはわからないけど、神様っていうくらいだから、超能力みたいなものがあるんだろうなぁ、と感心した。
『オーラというのは、人が発する魔力の大きさや強さを表す現象です。そして、あなたを感じたのは魔力感知というスキルのうちのひとつですよ。』
だが、「魔力??スキル??全然わかんないです・・・・。」入江は理解できずぽかーんとしてしまった。

メリル神が丁寧に説明してくれたにもかかわらず、Muv-luv世界の地球には魔力は存在しなかったし、早くからBETAの侵略を受けた影響で娯楽を発達させる余裕がなく、ラノベのような剣と魔法の世界の物語などもほとんど存在しなかったので、予備知識など皆無であった入江にとって、魔力やスキルという単語はちんぷんかんぷんだった・・・・。
その後、メリル神は時間をかけて魔力やスキルの概念などを更に基本からひも解くように丁寧に説明した。
このテルラの世界は、地球と違い魔素が存在する為、魔法を使う事が出来る世界である事、そしてこの世界の生物は、人間種、亜人種、魔人種の知的生物のほか魔物が存在する事。
亜人とは、エルフ族、ドワーフ族の事であり、魔人とはいわゆる魔族の事である。
エルフは精霊魔法をはじめとした魔法全般に通じており魔道具の作成を得意とし、ドワーフは鍛冶などの武器防具の作成が得意な種族と説明された。
入江は知る由もないが、これらは大輔や優奈のいた地球ではラノベやゲームなどでおなじみの背景設定である。
そして、魔族は他の種族に比べて身体能力や魔力が高めであることや、魔物の中には知性が高い個体も存在するが、総じて知性は低く攻撃的であるという特性があるというところも変わりがなかった。

また、個人の能力のレベルも地球とは違い、スキルで可視化が出来、脳内変換でわかりやすく数値化されるのだそうだ。
そしてメリルの神が言うには入江は異世界から来た為か、総じて能力が高いという。
この世界の最強の戦士でも力のステータスパラメーターは99が限界だそうだが、入江は既に200を少し超えているらしい。
それは力だけでなく体力や、魔力、そして敏捷性なども同様という。
『不定期に生まれる邪悪なるものがこの世界を破壊しようとするのですが、そのたびに時を同じくしてこの世界の住人の中から英雄が現れ、その命と引き換えにそれを阻止します。しかし数百年毎にあなたのような存在が迷い込み、圧倒的な力を持つ“勇者”として邪悪なるものを退けて、この地を平穏に導く事があるのですが、あなたはその中でも特に能力が高いです。』
何故かはわからないが、神様がそう言うのだから本当にそうなんだろうな、と入江は素直にそう思う。
あれ?でもそうすると僕もその邪悪なるものと戦う事になるのだろうか・・・・。
『ええ、実は本来その必要はなかったのですが、今から数年前に現れた邪悪なるものは今までの個体よりもはるかに強く、この世界の英雄はなすすべもなく敗れました。そしてその直後にあなたと同じく異世界から来た勇者が戦ったのですが、結果は相討ち・・・・というよりも邪悪なるものに致命的な被害を与えましたが、その時に勇者は戦死しました・・・。』メリル神は悲愴な表情でうつむいてしまった。
「ええ?!その・・・勇者でも止めを刺せなかったのだから、自分でも無理なのではありませんか??」
『・・・いいえ、今のあなたは既に、何か月もの修行の後にレベルアップした先代勇者達よりもはるかに強いのです・・・ですから、おそらく勝てるでしょう。』
入江は正義を成すことについての疑義は全くなかった。
だが、今の彼にとって一番の気にかかる問題は、元の世界へ帰れるか、もしくは同僚たちが飛ばされたという別世界へ渡ることが出来るのか・・・・であった。
『それについては、今は出来ない、としか申し上げられませんが、邪悪なるものを討つとわずかに空間に歪みが生じます。ただ、今までの邪悪なるものの歪みでは人一人がやっと入るような空間の歪みがほんの数分現れる程度ですが、今回の邪悪なるものは強大ですので、その歪みの力も相当なものだと思います。実は過去にその歪みに勇者が入って行って元の世界に帰還できた人もいますので、そこに望みがあるかと思います。』
「そうなんですね・・・・では僕が戦ってその邪悪なるものを倒さないことには話が始まらないと?」
『はい。ただ空間の歪みについては100%元の世界へ帰れるという保証はなく、あくまでも可能性がある、とだけお伝えしておきます。』
「わかりました!とにかく可能性があるのなら、今の状況ではそれに賭けない手はありませんから、そうします!」
『ありがとう、タケシさん!そうしたらまずはこの収納バッグをお渡ししておきます。このバッグは無限に収納が出来る空間魔法の応用で作られています。とりあえず必要最低限の装備、そしてポーションやお金を入れておきますので活用してください。』
「はい、ありがとうございます。」無限に収納出来るってむちゃくちゃなパフォーマンスだなぁ・・・・後で色々確認しなくちゃ。
『あと、この世界での生活についてですが、普通タケシさんのように力のある方の場合は冒険者ギルドというところに所属をして色々な依頼を受けてその報酬で生活しています。』
「冒険者ギルド?ですか。」入江は聞きなれない単語だったので、念のために確認の復唱をした。
『ええ、生活や魔物の事など、もう少し詳しい事は街にあるギルドで聞いて確認するとよいでしょう。』
「わかりました!では早速街に向かってみます・・・・ってどっちに行ったらいいかわかりません・・・。」
そんな困惑するタケシの事を予想していたかのようにメリル神は次の事を教えてくれた。
まず、ワールドマップと念じると目の前には自分のいる位置からある程度の距離までの地図が表示される事(それを見た入江はなんだか網膜投影を見ているような感じになった)と、メリル神とはいつでも連絡が取れて、その方法はただ跪いて祈りを捧げるだけで呼び出せるという事。
そして先代の勇者により深手を負った邪悪なるものは、あと半年かからずに復活してくると予想されているのでそれまでに装備を揃え、同時にスキルを上げる必要がある事。

『それではタケシさん、いえ勇者タケシよ、また会いましょう。』メリル神は気さくに手を振りながら光の粒となって消えていく・・・・。
「勇者ねぇ・・・さてまずは最寄の街へ向かうとしますか!」入江はいつまでもくよくよ考えても仕方がないと思いなおす事にした。
こうして勇者タケシ(入江剛)の異世界冒険の旅が始まったのだった。
 
 

 
後書き
ハイテクの異世界へ転移出来ず、剣と魔法の異世界へ転移してしまうなんて・・・・さてどっちが良いのでしょう。 
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