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ラインハルトを守ります!チート共には負けません!!

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第十六話その3 後方支援体制構築も大切です!

 
前書き
 アルフレート坊やとカロリーネ皇女殿下を取り逃がしたアレーナたち。でも本人たちはあまり気にしません。だって神様じゃないんだもの。全部予測なんて無理無理なのです。 

 
帝国歴480年12月2日――。
帝都 オーディン ランディール侯爵家邸 
■ アレーナ・フォン・ランディール
 うう寒ッ!!もうすっかり雪景色ね。こんな寒い日は中で本を読んでいるかネットサーフィンしているに限るわ。
 しかしまぁ、皇女殿下もアルフレート坊やも思い切った手をうったものね。私の情報網に引っかかったのもある意味偶然からなんだけれど。
 皇女殿下奪還は予測していたけれど、まさかブラウンさんリッテンさんの攻勢で、バウムガルデン公爵家が解体して、息子が皇女殿下つれて亡命するとは思わなかったわ。(ちなみにアルフレート坊やのお父様お母様はどうなっているか不明。爵位没収の後、帝都を出たっきりどこに行ったのかはわからない。でもたぶん自由惑星同盟に行くんじゃないかな。)
 あのまま辺境にいてくれればよかったんだけれど。でも、亡命という手は、それはそれで一つの解決方法にはなったのかもしれないのか。

 あぁでもくっそ!!(なんて汚い言葉遣い!!)ファーレンハイトやシュタインメッツが向こうに行っちまったのは大、大、大損害だわ!!

 それにしてもねぇ~・・・。一番私が心配しているのは、あの二人の事。自由惑星同盟って原作だと帝国に、ローエングラム公に滅ぼされることになるのだけれど。それを知らない『チート共』じゃないのに。あえて亡命したってことは、自由惑星同盟でまたぞろ台頭するつもりなのかな。
 そんなことはしてほしくはないわ。普通に一市民として生きていてほしいってのが本音。そうすれば相手を殺さなくて済むんだもの。

 そんなわけで、とりあえずはブラウンシュヴァイクとリッテンハイム侯爵の2大貴族の栄華という、原作に近い状況に逆戻りなわけで。超最悪なのは、バウムガルデン公爵領内にいる、今回の事態と何の関係もない人たちが、新領主に抵抗してひどい目に遭っているということ。

 だから、これだから貴族ってのは!!!!しかし、こうなった原因は私にあることは承知の上。今更責任逃れなんてしようとは思わないわ。でも、下手に私が動けばかえって逆効果、それに益々立場が悪くなる。そんなわけで、見て見ぬふりです。ごめんなさい、数千万を犠牲にして、数百億が幸福になれるとしても、犠牲は犠牲なのよね。後でヴァルハラで帳尻合わせてもらおうかな。

 ブラウンシュヴァイクやリッテンハイムがとんでもない「イイ子」になるか、新たなチートが味方するか、それともあの人たちの部下たちが「チート化」するか、まぁ、要するに原作からかい離しない限りは、大丈夫でしょう。まだ油断できないけれど。

 ま、それはそれとして、これはチャンスよ。どうせブラウンさんやリッテンさんは自分の事しか考えないんだから、今のうちに私の方ではラインハルトのために地ならしをしておこうっと。それも早急な改革ではなかなか実現しづらいことをね。
 私の方でいくつかプランを考えて、それをイルーナ、ティアナ、フィオーナに見てもらいました。三人からの修正意見を加えたものは、だいたいこんな感じかな。基本的には時間がかかる「人の養成、新型艦船の開発・建造、法律の整備」の三本柱よ。



1:帝国ニ公務員法ヲ制定シ、帝国ノ官僚養成学校ヲ設立ス。
 原作だとシルヴァーベルヒくらいしか官僚ですごい奴はいなかったからね。独創的ではないにしても実直でわいろを取らないような法整備を行って、公務員を育て上げることにするの

2:艦隊ノ制御ソフトウェア開発・整備並ビニ、次世代旗艦開発ヲ着手ス。
 現状だと同盟軍に艦隊運動では負けているからね。ヤン艦隊を攻略するのにはフィッシャーが鬼門だと思ってるかもしれないけれど、同盟軍艦船そのものも機動性は高いのよね。だからそれを上回る艦船を開発しなくちゃ。次世代艦はアースグリム級の超砲撃能力を備えた戦艦がいいかな。それを15000隻頭そろえてぶっ放せば、さすがにヤン艦隊も一発で消滅するでしょ。な~んてね。そんなわけないけれど。

3:農地法及ビ商法、民法等ヲ整備ス。司法権ヲ独立サセ、公務員裁判官ニヨル裁判ヲ実現ス。
 改革をするには、まず基本的な法整備をしなくちゃね。それも粗削りなものをね。あまり細かすぎても駄目。そこらへんはラインハルトに任せるわけ。裁判員制度はまだできないもの。だから裁判官を養成するの。だっていまだに裁判は貴族の裁量か、秘密裁判所だなんてところで行われてるんだから。

4:帝国歌劇団ヲ結成ス。
 今のオーディンには娯楽が少ないもの。だからね、美少女をそろえた劇団を作っておけば、男どもは喜ぶわけ。地球教なんかにはびこる隙は与えないわ!!しかもこの劇団、ただの劇団じゃないわよ。畑アイドルとして庶民で編成するの。おいおい成功してきたら貴族にだって道を開いたげるけれどね。将来的にはね、ラインハルトとヒルダさんの結婚式の時に、出し物として出演させるのが夢なのよね。
 これ、私がプロデュースしてみようかな。うん、そうしよう。

5:サイオキシン麻薬ノ根絶ヲ断行ス。
 一番厄介なのがこれなのよね。しかも大本がわからないから、地道に捜索するしかないわけで。これはグリンメルスハウゼン子爵閣下の情報網を活用するとしましょうか。
 
 あ~~!!それにしても私一人では手が足りない!!誰か応援頼めないかなぁ・・・。って、あれ!?あそこ、あそこの道端を歩いていく長い水色の髪をした冷たい青い目をした綺麗な女の子、まさか!?



■ ヴァリエ・ル・シャリエ・フォン・エルマージュ
 どうやらこの世界でも私は監察官的な役割を担いそうね。

 私の前世は、騎士団監察官だったけれど、何の因果かこの世界での私の父親は憲兵隊副総監。憲兵隊と言ってもその内情は腐敗しているから、私の前世のものとは比べ物にならないけれど。生まれてしばらくして、エルマージュ侯爵家は代々憲兵隊を指揮してきた家柄で、社会秩序維持局ともつながりがあるということを知ったわ。そのおかげか、帝国内で発禁されている図書も私の家にはあった。ジークマイスター提督のようね。私は亡命はしないけれど。

 この世界での父親は職務熱心、それに反して母親は遊び好き。いつも家にはいなかった。子供の頃の私は使用人を相手にして暮らしてきたようなものだったわ。
だからこうして外に出られるのだけれど、それにしてもここでアレーナ・フォン・ランディールと会うなんて・・・・。
 上から呼ばれた時はびっくりしたわ。道端に誰もいなかったのがせめてもの救いよ。仮にもここの世界で貴族ともあろう者があんな大声を出すことはおかしいもの。

「ヴァリエ、久しぶりね~。いくつになったの?」

 13歳よ、と答えた私に、じゃあフィオーナやティアナと同じ年ね、と言われたわ。そう、フィオーナもティアナもこの世界に来ていたのね。彼女たちと私は前世では騎士士官学校同期だったから、きっと同い年だろうとは予想はしていたけれど。

 私はアレーナ・フォン・ランディールに対してあまりいい感情を持ってないわ。あんな飄々としてつかみどころがない人は見たことがないし、話していてもいったいどこが本心なのかわからないから。まるでウナギよ。

 アレーナ・フォン・ランディールはひとしきり私の身辺のことを聞き、自分のことをざっと話した後、今現在の状況を整理して話した。

「私もこの世界に転生した目的はラインハルト・フォン・ローエングラムを助けることだとは知っているわ」

 私は言った。正直なところ、転生だなんて有難迷惑だったけれど、またフィオーナとタッグを組めるのなら、悪くはない話だと思っている。

「なら、話は早いわ。私一人だと正直手が足りないのよね~。今イルーナ、フィオーナ、ティアナは帝国軍に入っているわ。将来の艦隊司令官候補としてね。一方の私は帝都に置いて下地を作ってるっていう寸法よ。あんたは前世は監察官だったでしょ?剣の腕もすごかったけれど、どっちかっていうと内政向きなタイプよね?だからあんたも帝都組として、私に協力してくれると助かるんだけれど?」
「私はあなたには協力しないわ。ラインハルト・フォン・ローエングラム若しくはフィオーナのためになら協力する」
「どっちでも一緒だけれどね」

 一緒?!一瞬カチンと来たが、当の本人は飄々としていて一向に気にしていない様子だった。

「一緒じゃないわよ、私の気持ちの問題なの!!」

 私の剣幕がすごかったのか、アレーナはすまなそうな態度になった。

「あ~~ごめんね」

 なによ、ずいぶんしおらしいじゃないの。まぁ、前世と違って私たちはあったばかりだし、この世界でのことに関してはまだ恨みつらみもないから、いいけれど。

「わかったわ。協力する。それで、どうするの?」

 アレーナは嬉しそうにありがとうと言うと、何やら書類のような物をわたしに提示してきた。目を通すと、今後数年で構築すべき事柄が書いてある。なるほど、ラインハルト体制に備えて、長期的に改革が必要なものは今からするということか。

・・・・・・・・。

 私はしばらくじっと書類に集中していた。その間アレーナは何をしていたかというと、窓の外の白銀の世界を見ているだけ。うるさく干渉されるよりはありがたいけれど。

「大筋はこれでいいと思うわ」

 私は書類を示しながら、賛同した。4はちょっと「えっ?」って思ったけれど、まぁ、そういうのはあっても別に害にはならないから。

「でも、これらはどうやってするつもり?」
「1については、女性士官学校からの派生という形で提案するの。現状あまりにもワイロや汚職が多いことは、マインホフおじいさまも常々愚痴っていたわ。『皇帝陛下の御ために!!』っていう魔法の言葉を唱えて、ゴリ押ししていけばまぁ行けるでしょ」
「いっそ、全省庁の手入れを行って、汚職者を摘発するというのはどうなの?」
「それも一つの案だけれど、それについてはまだ時期が早いんだな」

 なるほど、それをラインハルトにやらせて、彼の見地の向上と出世につなげるということか。あるいは・・・まぁ、いいわ。

「2については、ラッキーなことにね、この世界じゃグリンメルスハウゼン子爵閣下の部下のウルリッヒ・ケスラー少佐が兵器開発部開発課の主任になっているのよ。びっくりしたけれど。そこにね、私が設計案を提出してそれを作ってもらおうかなと思ってるの」
「具体的には?」
「ワープ機能の強化、艦隊運動能力・索敵通信能力の強化、さらに無人艦隊システムの開発、次世代ワルキューレの開発、そして、超強力型主砲の極秘開発。さらに余力があれば次世代戦艦の開発にも着手してほしいと思っているわ」

 なるほどね、あまり目立つようなことをせず、現場で役に立つようなものをコツコツと作り出すわけか。

「3については、早急にはできないから、草案だけは作って開明派の貴族たちにそれとなく提示しようと思うの。結構サロンにはそういう前衛派の人が集まるところがあったりするのよ。ホラ、原作だとカール・ブラッケとかそうだったでしょ。4については、まぁ、これは私の趣味ね。でもね、これにも一応戦略的な要素はあるからね。おいおいわかるわ。そして5なんだけれど・・・・」

 5は厄介だと思うわと、私も述べた。何しろ範囲が広すぎるし、現時点での私たちにはそれを取り締まる力もまだまだないのだから。

「アルレスハイム星系でのカイザーリング艦隊の敗北は、サイオキシン麻薬のせいだということになっていたけれど、おそらくは軍、政財界、そして地球教と、かなりの広範囲にわたって麻薬は広まっていると思うわ。なにしろ帝国と同盟とが秘密裏に結託して調査したというくらいだから。さて、いったいどこが総本山なのかしらね」
「それについては、グリンメルスハウゼン子爵閣下の情報網を広げて調べているけれど。まだ確証はつかめないのよね。これについては数年がかりの地道な作業が必要だと思うわ。いずれ一斉摘発を行うつもり」

 私はうなずいた。しかし、考えれば考えるほど難しい。私たちがラインハルトに代わって覇権を取るのであれば、まだ簡単なのだけれど、今回難しいのは「ラインハルトの偉業を助け、なおかつ反ラインハルト転生者たちからラインハルトを守り、さらにラインハルト本人から睨まれないようにする」という様々な縛りがあるところなのだから。

「そうよ。私たちが単なる転生者だったら、いっそ楽だったけれど。この世界に転生するにあたって『ラインハルトを守ります!チート共には負けません!』なんて銘うってるからね。あのヴァルハラの爺様、とんでもない課題を私たちに押し付けてくれたわね」

 アレーナが私の考えを読み取ったのだろうか、そう言ったが、どこか楽しそうだった。

 まぁいいわ。それでこそ前世以上に腕の振るいがいがあるというものだから。
 
 

 
後書き
 後方支援体制構築は、ガチに固めすぎてもラインハルトの出番がなくなって駄目ですし、全然やらないのも後々悪い。非常に微妙なさじ加減が必要なのです。 
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