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ラインハルトを守ります!チート共には負けません!!

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第二話 育てる環境も重要です。

 
前書き
上手くラインハルトとキルヒアイスに接近できたイルーナ&アレーナコンビが次なる目標を設定します。10歳の子供コンビがヴァンクラフト家で戦略会議です。 

 
帝国暦475年2月1日――。
 ミューゼル邸の一室で抱えてきた本を広げながら、イルーナは言った。

「今日はローレライの話をするわね」
「イルーナ姉上の話しているローレライって何?」

ラインハルトの問いかけにイルーナはちょっと生真面目な顔を作った。どこかでこの小ラインハルトを怖がらせようと思ったのかもしれない。

「船に乗っているとどこからともなく聞こえてくる木霊で、それに従っているといつの間にか船が岩にぶつけられるという怖いお話よ」
「嘘だ~!!」

それがあまりにも断定的だったので、イルーナは「えっ?」と言う顔をした。

「どうして嘘だと思うの?」
「だって、姉上が聞かせてくれたお話はそんなものじゃなかったもの」

イルーナが「どういうこと?」というように側にいたキルヒアイスを見ると、キルヒアイスも首をかしげる。どうやらその話はラインハルトがキルヒアイスとまだ出会う前に聞かされていた話だったようだ。

「ローレライっていうのは悪魔を追い払う妖精さんの事なんだよ。イルーナ姉上。キルヒアイス」

ラインハルトの口ぶりがまるでアンネローゼそっくりだったので、思わずイルーナとキルヒアイスは笑った。

「昔一匹の悪魔がいたんだ。その悪魔は歌が上手くて、旅人を歌で誘って誘惑したんだって。けれど、それに気が付いた勇者とローレライっていう妖精が力を合わせて悪魔を退治したんだ」
「それ、どうやって退治したの?」

キルヒアイスが尋ねた。

「ローレライが歌を歌うと、悪魔の歌に惑わされていた人々が正気に戻ったんだ。悪魔が驚いている隙を狙って勇者が悪魔を斃したんだって」
「へぇ~~」
「ほんとだよ、アレーナ姉上」
「そうなのかしらねぇ、どう思うイルーナ」
「まぁ、伝承だから――」
「だからイルーナ姉上、アレーナ姉上。ローレライっていうのは僕は悪い妖精さんじゃないと思うんだ」

ラインハルトの言葉をイルーナは苦笑交じりに聞いていた。

「降参よ。あなたのお姉様から聞いた話の方が綺麗ね」

話の正誤はともかく、アンネローゼがラインハルトにした話の方がよっぽど話としては綺麗だ。だからイルーナとアレーナはそれ以上争わず、ラインハルトの話を黙って聞くだけにとどめたのだった。



マルトリンゲル地区 ミューゼル家
■ ラインハルト・フォン・ミューゼル
 今日もイルーナ姉さんとアレーナ姉さん、キルヒアイスが遊びに来た。何かと言うとこの4人、そして姉上と遊んでいる。二人とも姉上と同じくらいの年のようだ。ここに引っ越してきたときは母さんの事故のせいだと聞かされていたが、母さんのことはよく覚えていない。だが、あまりそれを悲しいとも思わない。俺には姉上がいる。父さんもいる。そしてキルヒアイス、イルーナ姉さん、アレーナ姉さんがいる。それで十分だ。
 二人とも貴族の家柄という。ことにアレーナ姉さんの方は侯爵家の出身だという。でも、そんなところは少しも感じないし、全然鼻にかけない。
 それどころか、二人ともよく貴族社会の事、平民社会の事、帝国の事、自由惑星同盟のことですら色々なことを教えてくれる。帝国の貴族社会があそこまで平民を痛めつけているとは思わなかった。同じ貴族として反吐がでる。最悪だ。俺が大きくなったら、絶対にあんなことはさせない。
 反対に自由惑星同盟のことはいろいろ気になった。アレーナ姉さんの一族の中で自由惑星同盟を研究している者がいたらしくて、資料があったんだそうだ。それをこっそり教えてくれた。もちろん秘密だ。俺たちの胸の中にしまっておく。
一応曲りなりにも平民が政治を動かすというのは、どうなのだろう?実際見ているわけじゃないから何とも言えないが、これは面白そうな話だった。家柄ではなく、能力あるものが上に立つ。考えてみれば当たり前の話の様に思えた。
二人の話はある意味学校で勉強するよりも面白い。あんなところ、自分たちに都合のいい知識しか教えないじゃないか!だが、さすがに学校に行かないというと姉上に叱られるので我慢している。イルーナ姉さんもアレーナ姉さんも、そして姉上も我慢することを覚えなさいと言う。我慢は好きじゃないが、色々な話が聞けることを思えばしょうがないと思う。
 明日も楽しみだ。

マルトリンゲル地区 キルヒアイス家
■ ジークフリード・キルヒアイス
 ミューゼル家の人たちが越してきてから2年くらいたつ。越してきた当初柵の際であの
金髪のラインハルトと出会った時、最初はちょっと生意気な子だと感じた。けれど話してみるととてもいい子だと思った。まるできれいな冷たい水を飲んでいるような気分になる。そして同じころに友達になったイルーナさんとアレーナさんもとても素敵な人だ。僕たちに色々と帝国の事、社会のことを教えてくれるので、学校みたいだ。とても面白い。でも、ラインハルトが学校の授業をつまんないといいだしてアンネローゼさんを困らせている。学校も友達に会えるからとても楽しいところだけれどなぁ。
そして、ラインハルトのお姉さんのアンネローゼさんは一等素敵な人だ。とてもおいしいお菓子をつくってくれる。そしてとても優しい声で話しかけてくれる。それだけでとても幸せな気分になる。
 明日もラインハルトのところに遊びに行く。とても楽しみだ。


ヴァンクラフト家のイルーナの私室 
■ アレーナ・フォン・ランディール
 今日もイルーナのところで会議よ。10歳の子供が膝つき合わせて会議なんて、はたから見ればとってもおかしな光景に見えるけれど、でも、これも超リッチなバカンスのためだもの。それにこれ、結構面白いわね。天才を育てるのってイルーナのアイディアだけれど、いつもながら彼女の考えには感心するわ。

 原作においてラインハルトの欠点と言えるところは、他人をあまり評価しなかったところ。まぁ、そもそも原作の帝国においては優秀な人材はラインハルト派閥以外にはあまりいなかったのだけれど、でも、あのミュッケンベルガーさえ評価しないのはどうかと思うわ。一応元帥にまでなったのだから、相応の力量はあるだろうし。あ~でも、第四次ティアマト会戦で敵の「陽動部隊」に引っかかったところは「愚かな。」だけれどね。
 だからイルーナと二人してラインハルトに「我慢」を「視野の広さ」を教え込んでいるところ。でも、それがききすぎてせっかくの美点を損なうことのないように注意しないとね。その辺の加減は難しいわ。

「だいたいは今のところ順調じゃない?ラインハルトとキルヒアイスに今の帝国や同盟のことを教え込むのはとてもいいと思う。これ、将来にとっても役立つ知識よね」

 と、私が言うと、イルーナが、

「教えすぎるのはよくないから、ほどほどにするべきね。きっかけを与える程度がちょうどよいと思うのよ。後は興味があれば自分たちで調べようとするでしょうし。自分たちで積極的に調べた方が、より帝国の実情をわかってくれると思うから」

 という。まったくその通りだわ。あまり押し込んでもかえって逆効果だもの。
 さて、と私はお茶のカップを下に置き、こっそりともってきたポータブル端末をペラペラのカーペットの上に置く。冬は分厚い電熱カーペットの方がいいわよ、イルーナ。冷え性になるもの。後で送ってあげようかな。

「あなたのところには端末はないわよね、だから私の方でいろいろと調べてきたの」

 残念ながら、帝国には万人が使えるインターネット的なものは普及してない。一部の富裕層化特権階級だけが使用できるネット環境があるだけ。まぁ、情報が流通すれば色々と平民に都合が悪いことになるという腹積もり?幸い私のところは侯爵家だったので、ネット環境はばっちり整っていたし、両親は私の10歳の誕生日にポータブル端末をプレゼントしてくれた。もっとも家の中での仕様限定だけれど。 それをこっそり改造して今日持ってきたってわけ。
 ラインハルトとキルヒアイスを「教育」する傍ら、当然この世界に生まれた『チート共』を調べ上げることにも抜かりはないわよ。

 私とイルーナが話し合った結果、『チート共』にはだいたい次のパターンがあるんじゃないかっていう結論になった。

1:オリジナルの登場人物チート
2:原作の登場人物に憑依しているチート
3:1及び2の影響を受けて『チート』化したチート人

 2はちょっと探すのは難しい。私もざくっとしかオリジナルの登場人物の性格覚えてないしね。それに猫かぶりされていたら探すのが難しいからね。3はもっと難しい。それにくらべて1はまだ探しやすい。そして、そのなかで20代以下に絞り込むことにした。これまでの帝国の動きは原作と離れちゃいない。(小さな動きまではわかんないけれどね。)ということは今まで何もしていないことになるわよね。たぶん。
 さすがに30過ぎるまで何もしてない人は転生者じゃないでしょ。そんなわけで帝国のデータベースにハッキングして探し出しましたよ、いましたよ、ちゃんと。

 候補者№1は帝国の33代皇帝オトフリート4世の晩年の末娘であるシルヴィア皇女の娘、カロリーネ・フォン・ゴールデンバウム。帝国歴470年生まれだけれど、これ、要注意よね。原作には登場なかったし。母様が早くに亡くなって、本来は修道院に入れられるところ、バウムガルデン公爵家の口添えで、銀河帝国皇帝のところに転がり込んで育てられているようだから、ラインハルトに目の敵にされてもおかしくないわ。
 候補者№2は、そのバウムガルデン公爵家の一人息子、アルフレート・ミハイル・フォン・バウムガルデン。さすがに父親のほうは年50近いし、違うと思うのよね。この子は、帝国歴467年生まれ、ラインハルトと同じ年齢ね。バウムガルデン家は原作にはなかったけれど、皇帝一族に連なる名門公爵家だそうよ。これも要注意ね。
 さて、どうしようか?

■ ヴァンクラフト家のイルーナの私室 イルーナ・フォン・ヴァンクラフト
 まずはアルフレートを要注意よ。おそらく帝国貴族の家柄を利用して幼年学校、あるいは士官学校に進むでしょう。そしていきなりの私設艦隊の司令官になるかもしれない。それとコネクションを利用してラインハルトの提督たちをスカウトすると思うから、それを阻止しなければ。そしてもう一人のカロリーネ。まだ5歳だからそれほど大きな動きをしないと思うけれど、人気とりの政策や体制構築でゴールデンバウム王朝の滅亡を阻止しようとするでしょうから、監視を怠らないようにしなくては。それと、宮中の裏の事情を知り尽くしているグリンメルスハウゼン子爵に接近するかもしれないわね。


 私たちの大まかな戦略は、二つよ。

 まずは、ゴールデンバウム王朝の盤石体制の構築を全力で阻止すること。
きっと原作にはない様々な改革を転生者たちは行おうとするでしょう。でも、ラインハルト自身に改革をやらせるの。それがひいては彼の覇道を形作り、ゴールデンバウム王朝の滅亡を早めることになるから。
 そして二番目として、ラインハルト麾下の有能な提督たちを転生者たちに引っ張らせない事よ。
でもね、アレーナ。今思ったのだけれど、転生者ってこの二人だけなのかしら。私にはそうは思えないのだけれど。となると、いちいち頭をつぶしていてもキリがないから、ラインハルトの陣営に連なる人物や有益な人物には、いっそこちらから近づいてしまった方がいいのかもしれない。先手必勝よ。


 後、アレーナ。一つお願いがあるのだけれど。以前あなたが話してくれたところだと、あなたの家は軍務尚書フリードリッヒ・フォン・マインホフ元帥(エーレンベルク元帥の前任者のようね。)に近しい家柄だったわね。マインホフ元帥はあなたを実の孫同様にかわいがっていると。
 そこで、元帥に、女性の軍士官学校を設立するようにお願いしてほしいの。これ、さっき話したゴールデンバウム王朝の盤石体制構築阻止と矛盾するだろうとあなたは思うかもしれないけれど、ラインハルトの覇道成就のためには、そして私たち自身のためにも必要不可欠なのよ。理由はおいおい話すわ。

 
 

 
後書き
ちなみに、ラインハルト家での遊びはチャンチャンバラバラが流行りなのです。疲れたらアンネローゼお姉様の作ったお菓子を食べて、ひと眠り、なのです。 
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