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魔法科高校~黒衣の人間主神~

作者:黒鐡
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九校戦編〈下〉
  九校戦八日目(1)×蒼い翼特別推薦枠フル活用とモノリス・コード初戦開始

新人戦五日目になってから、蒼い翼やCB関連の者達は警戒レベルを上げてから朝鍛錬を迎えていた。昨日起きた無能な大会委員会の所為で、織斑総司令官が二度のマキシマムドライブをしてしまったので怒りの声を上げたのだった。大会委員会としては、これ以上烈や主催者からの警告を無視しないように、いらぬ動きがないように監視者を付けたのだった。

「織斑少将に敬礼、休め!」

「全員、まずは俺の安否を気遣ってくれた事、感謝するがもう大丈夫だ。それにエリクサーのお陰でな、ところで今日から行われるモノリス・コードにて俺が出場する事になったというのは知っているはずだ。本来なら名無しで出るが、もう隠す事は出来ないので俺が名無しだと言う事を明かす」

「無能な大会委員会のお陰で、我らは我らで抗議しましたからな。今では主催者が九校戦を管理してますから、もう邪魔者はいないかと」

「そう言いたいが、例の無頭竜についての邪魔も入ると思うので諸君の職務を全うしつつ何か違和感を感じたら風間少佐殿に報告を入れてくれ。それでは解散!」

「織斑少将に敬礼、全員解散!」

解散後、俺は準備があるので行ったがモノリス・コードでは困惑な空気が流れていた。前日の予選にて、前例の無い悪質なルール違反があったので負傷・試合続行不能となった第一高校は、通常だと残り二試合不戦敗になる所を主催者蒼い翼の裁定により代理チームの出場による試合が認められたからだ。モノリス・コードの予選は一校が四試合を行い、勝利数の多い上位四チームが決勝トーナメントに進出するという変則リーグ戦となっている。

勝敗が並んだ場合、不戦勝や相手チームの失格による勝利がある場合はそれを勝数から差し引いて戦績を比較する。不戦勝・失格勝ちが無ければ、勝ち数で並んだチーム同士の直接対決で勝利していた方がトーナメント進出、直接対決がなければ勝った試合の試合時間の合計が短い方が決勝トーナメントに進む。現在の勝敗は第三高校が四勝となり第八高校が三勝、第一高校と第二高校と第九高校が二勝で並んでいるが、勝った二試合の試合時間合計は九高の方が二高より短く、一高は四高の失格による勝利が含まれている為、二勝ではトーナメントに進めない。

今日の特例試合で一高が二高にも八高にも勝った場合、トーナメント進出は一高と三高と八高と九高。二高が勝って八高に負けた試合も一高と三高と八高と九高。二高に勝って八高に負けた場合も一高と八高と九高。二高に負けて八高に勝った場合は一高と二高と三高と八高。二高にも負けてしまうと、トーナメント進出は二高と三高と八高と九高。と言う微妙な星勘定となっている。

「要するに一高が二高に勝つと、本来不戦勝で勝ち上がれたはずの二高が予選敗退となってしまう。今回の特例措置によって二高が強い不満を示しているが、それに関しては説明をしたので強制的に納得させました」

「一勝して手抜きをすれば、九高が八百長だと騒ぎ出さないためにも全勝して欲しい所よ」

「大丈夫、今回第一高校と相手するチームだけにルール変更を通達しておきましたからな。俺に任せて下さいな」

「余計な心配かもしないけど、その言葉は信じているわ」

俺と会長さんとの会話だったが、第一高校の代役が三人とも登録選手外だった事も困惑の一つだろう。実力者トップテンを揃えているはずの代表選手から代役を選ばずに、一人は技術スタッフで残りの二人は新たに招集したメンバーだ。

モノリス・コードのスペシャリストを隠し玉に持っていたかと言う憶測が飛んでいたが、それなら最初からモノリス・コード唯一エントリーメンバーとして入れれば済む話であり、各校とも第一高校の意図を測り兼ねていた。フィールドに登場した三人だったが、その姿自体も困惑の種となった。

「・・・・何か目立ってる気がするんだけど」

「そりゃそうさ、何せレオのそれが気になるんだからな。目立つに決まっているが、二人はメモリを差したか?一応隠す必要性があるのでな」

「おうよ。既にこいつの柄の先にメモリを差してあるから問題ないし、もしもの為にと用意されたメモリを隠す被せ物のお陰だぜ」

「僕のは見える位置だけど、ゼロのお陰で外から見えないようにしているから問題ないよ」

視線の意味を察知した俺達三人だったので、三人の目線はレオの腰にある剣だった。俺らの推測通り、客席の声が裏付けるようにしていたが俺らから声は聞こえていない。最も防護服に身に纏ったので、ヘルメットを被った姿だけは他校のチームと同じ。

「剣?直接打撃は反則だろ?」

エレメンツビットの存在が観客席のざわめきを誘っているような感じであったが、レオが腰に差した剣が武装一体型のデバイスである事を知っている者は少数派である。昨日見ていた深雪達などだが、通常の武装一体型デバイスの使用方法とは大きく違うと見ていた。普通は一体化した武装は、『武器』の性能を高める魔法を編み上げるものなので、『刀』切断力で『槍』ならば貫通力で『棍棒』なら打撃力で『盾』ならば防御力。

例えを挙げるなら、『高周波ブレード』であったり『加速』であったり『慢性増大』であったり『硬化』であったり『リフレクター』であったりするのだが、いずれの場合も通常であれば武装部分が本来持っている武器としての性能を高める魔法が武装一体型デバイスには組み込まれている。

『剣』であるならば切断力か貫通力かで、いずれにしても直接物理攻撃効果の増幅する魔法が組み込まれているはずであり、モノリス・コードのルール違反とされている事がデバイス面に詳しい者ならそのように考える。

「注目を浴びるのは、レオだけでは無さそうだな」

「そりゃそうだぜ、俺もそうだが一真が表に出ているからな。それも試合前に名無しだとバラすから、防護服を着ているのだろ?」

俺はまあなと言ったが、今の格好はレオらと同じ防護服を着ている。試合前に烈からバラす手筈となっているからだ。

「出て来たね、彼が」

「そうだな。選手として出て来るとは思わなかったが」

「二丁拳銃スタイルに加えて、右腕にブレスレッド・・・・同時に三つのデバイスなんて、使いこなせるのかな?」

「アイツがやる事だ。伊達やハッタリじゃないだろう。特化型は左右のレッグホルスターにロングタイプの拳銃形態か」

「隠し玉じゃなくて、最初から二つの特化型デバイスを同時に操作するスタイルだね。異なる系統の魔法を使いたいだけなら、普通は汎用型をチョイスする所だけど」

「複数デバイスの同時操作、その狙いを見せてもらおうか」

ここにいる一条と吉祥寺の会話で象徴されるような視線が、各校選手とスタッフから俺に注がれていた。担当競技で尽く上位独占した忌々しいスーパーエンジニアで、俺が二科生である事を知らない各校メンバーの認識でもあり、彼がまたまた疲労したイレギュラーなスタイルは、相手校の警戒を招き入れたがそれを嘲笑する輩はいなかった。

唯一の例外は、他ならぬ第一高校選手団が観戦しているスタンド一角。一年女子選手達の熱狂的な声援と対照的な一年男子選手達の冷ややかな視線は、相手チームに対する声援と無数の好奇心だったが、まもなく一高と八高の試合が始まる前に主催者である蒼い翼本社副社長からの通達があった。

『この場にいる全ての観客達に各校の選手団に警告をしておこうと思うが、私の名は青木雄一郎。主催者蒼い翼本社副社長をしている者だが、モノリス・コードにて代役をしている技術スタッフの正体をここで発表したいと思う。彼の名は織斑一真、蒼い翼特別推薦枠を持っていて選手兼エンジニアとして選手団の一員となった者。これで分からぬ者もいるので言っておくが、彼は新人戦にて早撃ちに波乗りと氷柱破壊にて優勝してみせた名無し選手の正体がそこにいる織斑一真である。その証拠に、織斑選手の服装と声で分かるだろう』

烈かと思ったがどうやら主催者側の青木だったので、通達と共に俺の服装は防護服から黒い戦闘服にとチェンジした。その事で観客や各校は唖然としたのであるが、もちろん一条と吉祥寺も唖然としていた。まさか名無し選手がすぐ近くにいたからであるが、どうやって演出していたのかは分からず仕舞いである。なので、急遽相手校のメンバーを増やす事となったので、俺らはモノリスの前で待機となった。

「流石は青木副社長、この場でバラす所が一真君らしい。八高相手に森林ステージか・・・・」

「不利よね・・・・普通なら。それに急遽メンバー数を増やしたみたいだけど、一真君はどう対応するかだけど」

モニター画面へ目を向けたまま呟いた摩利に、同じくモニターを見ながら真由美が応えた。モノリス・コードは様々な条件付けされた野外ステージで行われる競技。九校戦で使用されるステージは、森林、岩場、平原に渓谷と市街地の五種類。八高は魔法科高校九校の中で最も野外実習に力を入れている学校であり、森林ステージは彼らのホームだと言われている。ステージはランダムに行われるが、特例試合で本来ならば不戦勝だったチームに有利なステージが選ばれた。

「それに一高と試合だけはルールが変わったらしいわ、第一条件がモノリスに隠されたコードを端末に打ち込む。打ち込んだとしても第二条件が発生しないと勝ちにはならないらしいわ」

「ああ。それなら知っているが、本当だったとはな。第二条件は一真君ら三人が相手選手を全て倒す事だったか」

「普通なら相手チームを戦闘続行不能にするか、モノリスに隠されたコードを端末に打ち込むかだけど勝利条件が変わったのか。モノリスが端末によって打ち込まれたら、照明弾で合図なんですって」

「一真君は魔法師であって魔法師ではない、それは私らしか知らないからな。黒い戦闘服になってからは、デバイスがどこにいったのか他校は困惑しているはずだ」

一真がエレメンツ使いであり、魔法であって魔法でない力を使うので第一高校首脳陣にとっては事実であり、森林ステージのような遮蔽物の多い環境はエレメンツ使いにとっては忍術使いなら最も得意環境である。その事実を知らない他校は、計算違いな事であるが、それ以上に名無し選手=織斑一真だと知った事で未知数な相手となるだろうと予想していた一条だった。

「名無しがアイツだとして、なぜ今まで隠していたんだ?」

「恐らく蒼い翼特別推薦枠としては、選手とエンジニアを両立させる事が不可能に近いからだと思うよ。僕のような人間は希少価値があるからね」

「そうだなジョージ、相手選手らは可哀想だがこの試合はアイツが勝つだろう」

防護服から黒い戦闘服姿となった俺はサングラスを外さないで、レオはモノリス付近にいて幹比古と一緒に走り込みをしたが途中で別れた。デバイスを持っている状態だと直線距離で八百メートルであるが、開始五分もしない内に八高のモノリス近くで戦闘が開始された。 
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