魔法科高校~黒衣の人間主神~
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九校戦編〈上〉
九校戦発足式
学校というのは、決まった教室を割り当てる事については百年前からあまり変わっていない。人間関係の構築・醸成を促進やコミュニケーション能力を上げたりするという点にも見られている。昔から血縁と並んで地縁が強力な人間的統合をもたらして来た事も分かる通り、場所的な所属が組織的な帰属に繋がるというのがクラスメイトとも言うが、現代で言うならフォーマルグループやインフォメーショングループに共通の傾向らしい。
「おはよう。聞いたぜ、織斑。凄いじゃないか」
「おはよう、織斑君頑張ってね」
「おはようございます、織斑君。応援しています」
「オッス。頑張れよ、織斑」
とこんな感じで普段からあまり親しくないクラスメイト達から、挨拶ついでに激励の言葉をもらうのだった。それほど友好関係は作れてはいるという結果だ。月曜日に教室到着してから、俺は次々とクラスメイトのエールを受け取っていたがどこから情報が漏れているんだ?と蒼太に聞いていた時にレオ達が来た。激励の言葉については、九校戦のチームの一員として選ばれた事なのだろう。
「皆、情報が早えなぁ」
「本当ですね。まだ先週決まったばかりで、正式発表にはなっていないのに」
「ホント。いったい、どこから聞き出してくるんだろうね?正直言って情報漏洩じゃないの」
レオも美月もエリカもボケているという顔ではなさそうだ、どうやらレオたちが情報を漏れさせた者ではなさそうだ。箝口令や守秘義務とかは敷かれてないからな、蒼太に聞いても両手でさあという感じだった。あの時会議の席に上級生しかいなかったから、部活の先輩たちに聞いたしかあり得ないと思った。さすがに会議に現れた零達也と九島烈についてまでは言われてないようだ。
「そう言えば今日が正式発表じゃなかったっけ?」
首を傾げたまま問い掛けるエリカだったので、蒼太に確認させるとそれは肯定だったので俺は頷いた。九校戦メンバー選定は、選手とエンジニアを含めて先週の金曜日にようやく完了したようだ。スケジュール的には先々週にメンバー選定終了のはずが、凄く遅れが出ていたのを蒼い翼関連の学校関係者から聞いた話だ。選手の方は先に選抜は終わっている為に、競技用CADやユニフォームなど、準備に最も時間を要する道具類の手配は進んでいるが俺が選手兼エンジニアに選抜されたので俺の分を用意しようとしていたが俺がやめさせた。俺は俺で準備すると言ったからである。納入された機器のチェックや実際の作動テストはエンジニアが決まっていなかったので、ほとんど終わっていなかったが、俺の部下達がそれを終わらしていると報告書に上がっていたから安心した。
「確か、五限目が全校集会に変更されていましたよね」
美月がそう言いながら、備え付けの端末で今日の予定を確認する。午前三時限、午後二時限の時間割は全学年共通のもので実験と実習と体育以外は、標準進行(標準的に定められた学習スケジュール)はあっても各生徒が自分のペースで個別に割り当てられた端末を使って学習を進める現代式の学校では、各時限の始業と終業はそれほど厳密に守られてない。代表チームに選ばれただけで、九校戦チーム発足式のためだけに全校生徒を集めるという事は学校側がイベントを重要視しているかを示している。
「一真さんも発足式に出るんでしょう?」
「うーん、それはどうだろうな?一番最後に紹介されると聞いている、何せ俺の場合は少し複雑だからな」
「何が複雑なんだ?」
「一真さんが選ばれたとしか聞いてませんから、私はエンジニア入りかと思ったのですが」
「まあそれについては、発足式の方で分かると思うよ。なあ蒼太?」
「はい。全ては発足式に分かると思われますが、発足式には零家の関係者が来ると聞いています」
零家と聞いても今一反応が薄かったので、俺は蒼い翼の社長は誰だ?と言ったら気付いたようだった。一年生だと俺しか選ばれていないという情報しか入っていないが、九校戦メンバーに入っているとしか聞いていないようだった。選手は一年生もいるが、エンジニアスタッフは俺だけであるからな。デバイス調整には経験が必要不可欠なので技術スタッフが上級生から選抜されるのが、当然の結果だが俺の技術力が異常だからなのである。無論、俺がデバイスのハードとソフト開発分野で第一線のプロとして活躍していると考えれば、たかが高校の大会でのエンジニア何か役不足とも言えるが上級生や同級生もこの事はもちろん知らない。ISにエヴォルトシステム開発や各ガンダムの武装開発や、対ドウター戦で使用している特殊伸縮警棒とガイアメモリで疑似聖剣とISのヘッドギア応用をした量子変換で様々な武装を取り出せる事と各ビットを操る事が出来るヘルメットを開発した俺である。
「一科の連中、か~な~り、口惜しがってるみたいよ」
つい先日、定期試験でプライドを盛大に粉々された一科生がこの大抜擢でますます苛立っているという情報は既に俺の元にも届いている。俺が出てきた瞬間に野次やら飛んでこないか心配だが、こういう対策として十師族の現当主の誰かが零達也が書いた手紙を読む事になっていると聞いている。まさか烈か?いや、ここ最近呼んだばかりだからさすがにないから残りは四葉家か七草家のどっちかだな。
「ま、選手は一科生しか選抜されないとは聞いているが果たしてどうかな~?」
新人戦の代表選手は全員一科生なのだから、俺がもしエンジニアのスタッフ入りだとしても目くじらを立てる必要はない。これは選ばれた側の理屈で工学系志望の一科生にとっては慰めにもならない。嫉妬される側ではないが、嫉妬は理屈ではないからな。
「ま、大丈夫でしょ。今度は石も魔法も飛んでこないと思うけど、一真君のそのセリフは何か引っかかるな~」
「俺の性格は分かっているだろうに、ま、発足式に全て分かるさ」
そんで四時限目終了後に、俺は指定された時間に講堂の舞台裏に行くと先に来ていた深雪と沙紀が待っていた。その後ホントは技術スタッフのユニフォームであるブルゾンを着るらしいが、俺は選手兼エンジニアという事は一部生徒である生徒会役員しか知らされてない。選手側のユニフォームはテーラード型スポーツジャケットを羽織っている会長がいたけど、その顔は何だかいつもの会長ではなかった。その理由はすぐに理解した。そこには零家関係者である四葉家現当主の四葉真夜と七草家現当主の七草弘一がいたためであるからだ。
「なるほどね、会長の緊迫した顔は真夜と弘一が来ているからか」
「一真君!いついたの?」
「さっき。それより・・・・よう真夜に弘一。お前らが来てくれて助かるぜ!」
と言いながら、俺は二人がいるところに行って手を挙げて挨拶する俺だった。そして真夜の手には零達也の手紙を持っているから、その手紙を全校生徒に発表するという事なのね。選手兼エンジニアだからなのか、選手とエンジニアの専用服はないので蒼い翼が特別に作らせたジャケットを蒼い翼関連の服を作る会社に頼んだオリジナルのを持ってきた青木副社長。
「これが特別に作らせたジャケットでございます、無論第一高校の紋章を付けていますが左右の肩の辺りには蒼い翼のシンボルマークである6対12枚の銀の翼が刺繍されております。これについては、我が社特別推薦枠の者だけが着れるモノです。九校戦発足時から蒼い翼特別推薦枠を取った者には、その証としてこのジャケットを着るのですが生憎今まで特別推薦枠に値する人間がいなかったのでこれを知る者は九校戦大会委員と我が社だけです」
「これが幻と言われたジャケットかぁー、今まで出なかったのは当然と言えば当然よね」
「これが証と言われても全校生徒は知らないからね、だから僕たちが来た訳なのさ。今回は僕の妻としてではなく、四葉家当主としてだから納得はいくけどねー」
そう言ってジャケットを羽織った後に、俺達は最後のエンジニアがバッチを付け終てからが出番である。今回は講堂で選手とエンジニアが立つ壇上ではなく、空間の中で待機となっている。司会進行する会長でも知らない台本が存在するが、それがいつなのかで喚いていた会長であった。どこで出てくるかは、選手とエンジニアとの間に突如出現するとだけ言っといてから俺達は空間切断先にある異空間の一室で待機となった。空間に入って行った青木副社長と四葉真夜と七草弘一と蒼い翼製のジャケットを羽織った俺は、始まるまでコーヒーでも飲みながら発足式が始まる時間まで待った。
「そういえば深雪は制服のままだったが、ジャケットを着ないのか?」
「深雪さんは選手でもありますが、送り出す側でもあるので進行役だそうだよ」
「一見そのジャケットは選手側のだけど、八枚の花弁に6対12枚の銀翼だからなのかいつもより目立つと思うよ」
第一高校の校章で一科生の象徴ではあるが、学校同士の対抗戦というお遊戯だと俺は思われがちだがまあいつも通りにやれば大丈夫さ。ユニフォームの形状はバリエーションがないのでどの学校のメンバー象徴であるかを識別するデザインだ。濃い緑のジャケットだが、左胸と左右の肩にある紋章を見れば一発で分かる事だ。深雪は大役なのでプレッシャーを与えないようにしたそうだが、緊張するのは最後の人が終わり次第だろう。発足式が始まる時刻となったので、俺達はいつでも出れるように準備だけはしてから時間通りに進行していた。そこにいるはずの一真がいない事に疑問を持つ二科生達やレオ達だった。小さい声で話していたので、周りには聞こえない声だったけど。
「(なあなあ、一真どこにいるんだ?)」
「(あたしに聞かれても分からないわよ?まあさっきまではいたんだし、それに壇上の左右には護衛の蒼太さんと沙紀さんがいるよ)」
「(最後のセリフがどうにも引っかかります)」
レオ達の気持ちと同じように、一科生にも動揺が広がっている。発足式に二科生の織斑がどこにもいないという事を、九校戦のメンバー入りだという事だけを知らされているからである。場違いだと悟ったのか、ここにはいないのか?といろいろと考えている一科生であった。準備会議で腕前を見せているので、エンジニアチームの方の皆も同じ考えを持っていた。本来だったら一番端っこにいる五十里先輩のところにいるはずなのだが、その本人は選手とエンジニアの間にいるけど。
その間のにも一人一人、選手紹介が進められている。プレゼンターは会長だが、会長本人も五十里先輩のところで空白になっている。ここから先は蒼い翼のアドリブで始まるからだ。紹介を受けたメンバーは、競技エリアへ入場する為のIDチップを仕込んだ徽章をユニフォームの襟元部分に付けてもらう事になっている。その役目は舞台栄えがするという理由だけで、深雪が選ばれたのだった。選手だけで四十名(深雪と会長を除いて三十八名)だからなのかかなりの手間だが、淑女教育と英才教育の成果なのか深雪はにこやかな表情を崩さず器用な手つきで徽章を取り付けて行く。
「さすが奏さんと優斗君がしたという英才教育の成果がここに出ているわよね」
「俺は何もしていないけどな、任務中に娘が生まれたと聞いた後にあっという間に二十歳になったのだから。もちろん月中基地本部でやったらしいから、俺が任務中の時でも父親の顔を見なくとも俺が父親だと感じ取ったらしい。初対面の時な?」
「普通なら子供が生まれた後は、しばらく子供に父親の顔を覚えさせなきゃいけないのに、初対面時からお父さまだったもんね」
「俺達は普通の人間ではないという証拠にもなった。お陰で大天使化の時は女神って感じだったからな」
そう話していると、息遣いの聞こえてきそうな至近距離で深雪から笑顔を向けられた男子生徒は、ほとんどが顔を真っ赤に染まっていて崩れそうな顔を必死に引き締めていたけど。それを見た真夜は奏にそっくりな笑みねと言われたから、さすがの俺でも笑みをするのだった。父親の気持ちが分かる弘一は、俺の肩を組んではその気持ちは分かるぞ?と言ってきたのでハリセン一発お見舞いした俺だった。話が脱線しかけたが、それが男子だけならば全校の女子生徒から後々嫌がらせを受ける羽目になるが、同じように徽章を取り付けてもらった女子生徒まで半数以上が先程と同じく顔を赤く染めて照れ隠しのような感じだったり落ち着きを無くしていたのだった。
観衆、特に上級生の反感ではなく微笑みを誘っていた。徽章は全てのスタッフに配られるので、作戦スタッフの紹介が終わり続いて技術スタッフの順番になっても俺は登場していない。空間から見ているので、席割りは相変わらず自由で一科生が前で二科生が後ろと全校生徒が自然分裂しているが、その前半部分に異分子が混じっていた。それがレオ、エリカ、美月のワンセットだったけど。首を振りながら俺を探しているように見えた。あと幹比古もいたが、後ろは見覚えあるなーと思ったら何と1-E組全員が一塊に陣取っていたのだ。一科生の白い目お構いなくだったが、まあそうさせたのは俺の護衛である蒼太がやってくれたようなもの。そして五十名の徽章授与が終わった所で左右にいた蒼太と沙紀がマイクを持ちながら壇上に上がっていくのだった。
「マイクテスト、マイクテスト、うんOK。七草会長さん、ここからは私達が仕切らせてもらいましょう」
「七草会長さんから司会を任されました織斑一真様と織斑深雪様の護衛をしております蒼太と沙紀がお送りいたします」
突然の所から護衛者が壇上に上がってきたので、何だ?と思いきや今年度一年の護衛付き生徒の護衛者がいきなり司会をしていたのだった。
「それでは主役を登場させましょうか、照明をオフにしてくださいな」
と講堂の照明を落としたところで俺達は何もない空間から出現した事にまだ気付いていない、選手とエンジニア達はいきなりの事で暗くなったが恐らくこれから始まる事を予想していたかのように落ち着いて見せた。一方観衆である全校生徒たちはいきなりの照明が落ちて暗くなったので、パニックになったがすぐに七草会長が静粛にと言ったのだった。そして真ん中に俺と青木副社長がいて、左右には四葉真夜と七草弘一がいる。配置完了となったので照明を再び明るくしたら、俺達がいた事に驚く観衆と九校戦メンバー諸君だった。
「皆さま静粛にお願い致します、では左右にいる御方から紹介させて頂きます。男性の御方は七草家現当主七草弘一様、女性の御方は四葉家現当主四葉真夜様でございます。織斑一真様の隣にいらっしゃるのは蒼い翼本社副社長をしています青木雄一郎様でございます」
十師族現当主の者を紹介した瞬間に、静かになった後に蒼い翼の副社長を紹介したら七草会長達がいるところも大騒ぎとなった。そして俺が選手とエンジニアの間にいる事で不満が爆発しそうになったが、青木副社長にマイクを渡したのでマイクスタンドを用意した深雪であった。そして壇上の前で話始めたのだった。
「皆さんこうやって話すのは、実に入学式以来となりましょうか。私が来たのは他でもありません、ここにいる彼である織斑一真を九校戦メンバーに入れたのは蒼い翼特別推薦枠として入れた事です。これについては零達也社長がご推薦なられたのです、そしてここには零社長から織斑一真様に送られた手紙がここにあります。この手紙にはこう書かれております。『ここにいる織斑一真を国立魔法大学付属第一高校九校戦メンバーである選手兼エンジニアとして零達也本人が推薦する。なお今年から男女別となったので、一真だけは女子のところで競技をやる事。無論ハンデはあるがそれについては後程である』とね。その証拠に織斑一真様には我が社推薦枠として特別なジャケットを着ております。一見選手のジャケットのように見えますが、第一高校の紋章と共に6対12枚の銀翼である我が社のシンボルマークが見えるでしょう」
そう言った後に用意されていなかったが、四葉真夜が俺に徽章を付けたのだったので思わず深雪はそれは私の仕事ですと言っているような感じであった。まあそれはいいとして、徽章授与された後に俺達はエンジニア側の端っこにいた五十里先輩の横に整列した。四葉家と七草家当主と蒼い翼副社長が壇上から降りると、司会を返した蒼太達だった事で拍手喝采となった。観衆は罵声でも浴びせようと思ったらしいが、七草会長が拍手した事で1-Eのクラスメイト全員が拍手をした事と十師族の内二人も左右から観衆を見ていた。
「そこの一科生の諸君?もし我らの一真様にブーイングをしてみなさい、貴方たちごと潰すわよ?」
「僕達は十師族の者であり、織斑家を支え合っている者同士だ。同じ一年で二科生だけでブーイングはやめたまえ、その前に九校戦で見せる一真様の実力を見た後に言いたまえ。これは四葉と七草と九島の忠告である!」
四葉家と七草家の現当主がそう注意した後に、青い顔をした。四葉と七草だけではなく九島というのを出して忠告したからである。まあ現時点で十師族では頂点とも言われている四葉家と七草家だからなのかもしれないけど。俺のバックにはその他にもあるという事を知らしめた発足式だった。
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