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魔法少女リリカルなのは~結界使いの転生者~

作者:DragonWill
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A's編
  調査開始

『現在の状況はどうなっているのかね?』
「現在、過去の資料の洗い出しと被害者の聞き込みを行っていますが、これといって特別な進展はまだ何も・・・」
『そうか・・・』

会議後、剛は局長に対して定時報告を行っていた。

『それと、今回の件だが・・・管理局の魔導師ばかりに犯人グループに相対させて日本、ひいては地球の魔導師のレベルを舐められては困るのでね・・・我々も総力戦で挑むこととに決定した』
「総力戦ですか?」
『ああ。三大魔導師組合(ギルド)にそれぞれ依頼した』
「それはまた・・・豪勢ですな」

実のところ言うと、今回の様な大きな事件になると零課単独で解決できることは稀である。

いくら国家機関とは言っても、零課はまだ設立されて一世紀も経っていない為、実力やノウハウが不足しがちなのだ。

これは地球の魔導師特有の氏族主義、秘密主義の影響も強い。

魔導師の名家は一族の繁栄を第一とし、自らの術を徹底して外部に対しては秘匿し続けた。

それは国家に対しても同様である。

時の権力者の寵愛を受けていた魔導師の一族はいわば通常の組織とは別の強い権限を持っていたため、国家の一組織としてではなく、国に属さない独立機関として一族だけで利益を独占していたのである。

これが、魔法の絶対性が崩れた現在で仇となった。

特定の一族が指揮するのではなく、あくまで政府主導の組織を設立しても、国自体はそのノウハウを全く持っていなかったのである。

しかし、零課はあくまで国直轄の魔法共団(オフィサー)であり、権力的には魔法組合(ギルド)よりも上の存在でなければならないが、組合(ギルド)の協力は必要不可欠である。

苦渋の選択として、零課は依頼という形で組合(ギルド)に協力を求めるのである。

しかしながら、特に三大組合(ギルド)の様な、昔から政財界に太いパイプを持つ所ともなれば、零課と言えども頭が上がらず、外部協力者でありながら実質的に現場の刑事よりも強い権限を持つと言うチグハグな状況になっているのである。

これがアメリカの様な国では逆に、大きな力を持つ一族が少なく、魔法の術式の知識は軍部に集約されるため、魔法共団(オフィサー)が強い力を持つのだが・・・。

『さらに、機動隊との交渉の結果、「黒狼連隊」二部隊を派遣してくれることになった』
「あんた海鳴を滅ぼす気ですか!!」

立場も忘れて剛は叫んだ。

叫ばずにはいられなかった。

『優秀な問題児の巣窟』と言われているあの黒狼連隊、それも二部隊が海鳴に来るとなれば誰もが叫ばずにはいられないだろう。

冗談抜きで海鳴が廃墟になりかねない。

黒狼連隊とは、対外的には『一騎当千の少数部隊』『戦闘に優れたエリート部隊』などとのたまっているが、実質は『戦闘しか出来ない無能者』の集まりである。

魔法戦闘は通常の部隊と違い、適正から戦闘方法が様々に分岐される。

そうなると、中には一人で戦場を蹂躙できる大規模な破壊などと言った部隊に組み込んで運用できないような魔導師も少数ではあるが存在するのである。

しかし、機動隊では統一された装備で組織だった運用をされることが望ましく、マンガなどに出てくるような、言わば『ヒーロー』を必要としないのである。

黒狼連隊は元々、『組織に必要のない、しかし一般人として市井に放置しておくにはあまりにも危険な力を持つ人材』を飼い殺しにするために作られた組織であり、所属する人間にも当然何らかの欠点があるから所属しているのである。

また『混ぜるな危険』と言うキャッチフレーズが似合うほど協調性のない人材ばかりなので、当然単独での任務が多く、しかもその任務も部隊の設立の理由から、上層部が任務中の殉職を意図して危険度の高い任務を割り当てているのにも関わらず、戦闘・生存能力が桁違いに高いためことごとく成功してしまい、それがエリート部隊と誤認されている所以である。

そんな部隊を、しかも二部隊最初から投入するのはまさに狂気の沙汰である。

だが、裏を返せば『海鳴の被害を度外視してでも解決しなければならない』と言うことであり、過去の闇の書事件の被害を考えての結論である。

『決定事項だ。彼らは3日以内には全員現場入りすると思うので後はよろしく』
「ちょ、ちょっと待ってください!!おい・・・『ブツン!!』」
『ツー。ツー。ツー』

反論の隙も与えず切られる電話。

「ふっざけんなーーーーーーーーーーーーーーーー!!」

剛にしては珍しく叫んでいた。





翌日、日本三大組合(ギルド)の封杖院、陰陽堂、占星巫術団のメンバーが到着した。

「明美さんはお久しぶりですね。残りの二人は初めまして。時空管理局アースラ艦長のリンディ・ハラオウンです」

挨拶を済ませたリンディはメンバーに対し異世界の存在や今回の事件について説明していく。

占星巫術団からは以前の面識もあって明美が医療スタッフとして参加し、封杖院からは次期当主の守宮禊と秘書の結城弥生が結界班に、陰陽道からは次期当主の土御門有吉が戦闘員として参戦している。

「初めましてリンディさん!!兄様もお久しぶりです!!」
「禊・・・・・兄に会えてうれしいのは分かったから、少し落ち着いて・・・」

ウルフカットの小柄な女性が元気に挨拶するのを、少し眠そうな瞳の女性がたしなめた。

「・・・・・・やれやれ、異世界の魔導師と聞いて期待してみれば、ガキみてえな奴と弱ッちそうなその他大勢・・・しかも、捜査本部長はこの無能ときたか・・・」

クロノや剛に対しあからさまな侮蔑の視線を向ける優男風な青年。

「おい!!有吉!!それ以上の兄様への侮辱は守宮への挑戦と受け取るぞ!!」
「上等だ・・無能を無能と呼んで何が悪い?俺たち土御門がてめえら軟弱な守宮に後れを取るとでも?」
「何だとぉ!?」

今にも掴み合いになりそうになる険悪な二人。

「あ・・あの・・・」
「ほおっておけ」

止めようとするリンディを剛が制した。

「でも・・・」
「あの二人の仲は昔から・・・いや、守宮と土御門は300年に渡って仲が悪い」
「そうなのですか?」

守宮と土御門の不仲を知らぬ者はモグリだと言われるほどこの業界では有名な話である。

彼らの不仲は300年前まで遡りる。

当時退魔家業に関していては殆ど土御門の一族の独占状態であったが、当時の土御門家は人材の落ち目にあっており、凡夫な退魔師しかいなかったのが原因で強大な化物を退治できずに幕府が困り果てていたところ、守宮初代当主が封印と言う形で化物を封じたのが始まりだと言われている。

その功績を持って幕府に取立てられ、退魔業を任され始めた守宮の一族は目覚ましい活躍を遂げ、その勢力を伸ばしていった。

土御門の退魔業は圧倒的な攻撃一片倒しな戦い方が主流で、戦闘力や化物を倒すことのみに至上の価値を見出しているため、あたり一帯を吹き飛ばしてしまうこともよくあった。

対して守宮は倒すのではなく封じ込めることを得意とし、化物の殲滅より被害を抑えることを戦いの目的にしていたため、二つの一族が戦えば、守宮の方が圧倒的に被害が少ないのだ。

そのため、徐々に幕府は退魔業を土御門から守宮に専任するようになっていったのだ。

これに面白く感じなかったのが当然土御門家である。

彼らは実に1000年以上の長きに渡って化物から市民を守ってきた自負があるにも関わらず、それを新参者の守宮に奪われたのだ。それも、自分たちが下術、軟弱者と見下し、総勢力でも圧倒的に下回る存在にだ。

土御門は何かと守宮と張り合い、守宮も土御門の野蛮さに嫌気がさしていると言った現状である。

「ふん!!とにかく、俺の邪魔だけはするなよ!!」

そう言って部屋を出て行く有吉であった。





学校が終わり、子供たちが帰宅してきた。

アリサの家のリムジンが月村の敷地に入り、なのはたちが屋敷に入っていく。

先日の襲撃にあったが4人であったが、幸か不幸か蒐集は免れていた。

そのため、ヴォルゲンリッターにまた襲撃される可能性が非常に高く・・・むしろ彼女たちの魔力量を考えれば襲撃されない方が不自然であろう・・・なのはたちを零課で保護することが決定した。

事情を知ったバニングス家と月村家も協力し、登下校時は必ずアリサの家のリムジンを使用し、放課後は全員月村の屋敷にお泊りしている。

「にゃぁぁぁ~~。退屈なの」
「なのはちゃんたち大変だね」
「私も最初は魔法が使えなくてなのはが羨ましかったけど、こうしてみると今は使えなくて良かったって思ったわ」
「すずかちゃん、アリサちゃん、他人事だと思って~」

常に友達と一緒であるため、寂しくはないのだが、こう何日も軟禁状態が続けば辟易するのも当然である。

そこに・・・。

「大変そうだね~。なのはちゃん」
「「「那美さん!?」」」

月村家にやってきたのは八束神社で巫女のアルバイトをしている美由紀の友人、神咲那美であった。

「どうしたのですか?」

「なのはちゃんが退屈してると思って、この仔を連れて来たんだよ」
「く~~ん。なのは・・・」
「「「クーちゃん!!」」」

那美の後ろから頭かに狐耳を生やし、金髪に巫女服のなのはたちと同じくらいの年の少女が出てきた。

少女の名は久遠と言い、さくらの様な人狼の血を引くのではない、れっきとした妖狐である。

そう・・・かつてPT事件の際に八束神社で子犬を取り込んで暴走したジュエルシードを封印した際に知り合った子狐である。

あの事件以降、お互いに魔法や妖怪について秘密のままに友達になっていたのだが、夏休み中に久遠に掛けられていた封印が解けてしまったのである。

元々、久遠は昔恋人であった少年が流行り病の人柱として殺された際に憎しみのあまり暴虐を働いた悪鬼羅刹であったのだが、封印され力の大部分を封じ込められていたのだ。

かつて10年前にも封印が解けたことがあり、その時は那美の両親の犠牲と彼女の姉の神咲薫の尽力によりどうにか封印されたのだが、その封印が緩み解けてしまったのだ。

現在の神咲一灯流は当時ほどの力はなく再封印は不可能であった。

そのため、封印が完全に解ける前に久遠を殺そうとする薫となのはたちの間にひと悶着あったのだがここでは割愛しよう。

結果だけ言うならば、駆けつけて来た剛や那美たちが久遠を抑え込んでいる隙になのはが久遠を封印することでどうにか事態は納まったのである。

そして、久遠の正体と魔法についてお互いに知った彼女たちは、今もこうして友達を続けているわけである。余談ではあるが、その時ユーノと龍一は遺跡旅行で日本にすらいなかった。

「にゃははは・・・クーちゃん。来てくれて嬉しいの」
「久遠もなのはたちに会えて嬉しい・・・」

なのはたちが久遠とじゃれていると・・・。

「久遠か・・・久しぶりだな」
「剛♡」

剛が久遠の元にやってきた。

なのはたちの護衛役の禊と司法取引で捜査協力しながら娘に会いに来たプレシア、そしてさくらも一緒に来ていた。

久遠は剛に向かって一目散に駆け寄り、抱き付いて頭を擦り付けた。

「「「!?」」」

禊、プレシア、さくらの頭上に電撃が落ちたような幻覚が見えた気がした。

「に、ににに、兄様!!」
「どうした?」
「三葉さんと結婚した時から怪しいとは思っていましたが・・・やっぱり小さい子が好きなロリコンだったんですね!?」
「人聞きの悪いことを言うな!!」
「・・・そんな、今までプロポーションには自信がある方だと思っていたけど、それが最大の仇になるなんて・・・」
「プレシア?・・・何を勘違いしているんだい?」
「私も協力するから、一緒に矯正していこう?ほら、獣耳がいいのなら私がいくらでも・・・・」
「ストップだ!!それ以上は言ってはいけない気がする!!」

剛が彼女たちの誤解を解くころにはすっかり日が暮れてしまっていたが、騒ぎの原因の久遠は子狐に変身し、剛の腕の中で気持ちよさそうにしていた。

「いいなー久遠・・・」

ただ混乱する現場で最近子犬フォームを会得したアルフだけが羨ましそうに久遠を見ていた。





一方、クロノはユーノと龍一を引き連れてある場所に訪れていた。

「闇の書について調査をすればいいんだよね?」
「ああ、これから会う二人はその辺に顔が聞くからな・・・」

目的地に到着したクロノが扉を開ける。

「久しぶりだな、アリア、ロッテ」
「久しぶり~クロ助!!」
「うわっ!?」

クロノが中にいた二人の女性(猫耳があったので使い魔だろう)に声を掛けると、髪の短い方の女性がクロノに飛びつき抱きしめた。

身長の低いクロノはちょうど顔が胸に当たってしまう為、真っ赤になりながら引き離す。

「ロッテ!!放せこら!!」
「何だとこら!?久しぶりにあった師匠に冷たいじゃんかよ!?」
「うわああああ!!アリア何とかしてくれ!!」

どうやら髪が短い方がロッテ、長い方がアリアと言うらしい。

「久しぶりなんだし好きにさせてあげてよ。それにまんざらでもないだろ?」
「そんなわけ・・・」

クロノが最後まで言い切る前に、ロッテに押し倒されてソファーの影に消えてしまった。

しばらくして、満足したロッテがクロノを解放した。

「なんであんなのが僕の師匠なんだ・・・」
「まあ、なんだ・・・強く生きろ」

クロノの人生に疲れたような重いため息に龍一はそっと答えておいた。

「おや、おいしそうなネズミっ子がいる」
「ひっ!!」

ロッテは次のターゲットをユーノに決めたらしいがユーノは龍一の後ろに隠れてしまった。

まあ、すずかの屋敷の一件のせいで若干猫嫌いなユーノには獲物を狙うようなロッテの目はトラウマものだろう。


|閑話休題(まあ何はともあれ)。

挨拶が済み、一同は闇の書調査の話へ移る。

「なるほど、闇の書の調査ね」
「事態はお父様から聞いているから、できる限り力になるよ」
「よろしく頼む」
「それで、頼みって?」
「彼ら二人の無限書庫での調査に協力してやってほしいんだ」
「「!?」」

クロノの頼みに驚きを隠せないリーゼ姉妹。

無限書庫。

それは『世界の記憶を収めた場所』とも言われ、あらゆる世界のあらゆるデータが揃っている本局にある施設である。

本局ができるよりもはるか昔から存在していたとも言われ、その実態のほとんどが謎に包まれている。

望むものすべての答えがあるが中身のほとんどが未整理のままであるため、見つけるのには専門のチームを組んでも何年もかかると言われる場所である。

そのため、通常は事件が起こってから調べても資料をそろえるよりも先に事件の方が終わってしまうのだが・・・・。

「まあ、クロノがわざわざ連れて来たんだからまあ何かあるんだと思うんだけど、大丈夫なの?」
「そっちのフェレット擬きはスクライアの出身だ」
「あの遺跡発掘の名門の?」
「そうだ」

クロノの暴言に反論しようとして龍一にたしなめられるユーノ。

「分かった。二人が入れるように手配しておくね」
「ああ、助かる」





デバイスの整備室でエイミィは困り果てていた。

レイジングハートとバルディッシュは修理自体はすでに完了したにも関わらず、エラーコードを発し、どんなコマンドも受け付けなくなってしまったためである。

「はあ、どうしよう。龍一くんの分のデバイスも作らなくちゃいけないのに・・・」

余談だが、龍一も礼装の飛穿・二式が破壊されてしまったことにより、またの襲撃に備え、デバイスを新調することとなったのである。

『『システムに重大なエラーがあります。このエラーを解決するためにCVK-792を含むパーツを組み込んでください』』
「っ!?レイジングハート、バルディッシュ、本気なの!?」
『『Please(お願いします)』』
「CVK-792、ベルカ式カートリッジシステム」

整備室にエイミィの息を飲む音が響いた。
 
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