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或る皇国将校の回想録
第三部龍州戦役
幕間3 嗚呼、華の近衛衆兵鉄虎第五〇一大隊
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ば早急に合流せねばならない、現状だとまともに戦えるのは白兵戦だけである。

「最短経路となると……第三軍の露払いでもしますかな。森に逃げ込めばどうにかなりそうですし」

「とはいえ、引き際に血を流すのは好みじゃない。綱渡りの手助けをするのはやぶさかではないがな」
 新城は顎を掻く。
「うん、こういう時にこそ面倒を押し付ける相手も居る事だ。僕らは僕らで得手勝手に動くとしよう」
 某所で尻に帆をかけた青年中佐が怖気を走らせたかどうかは定かではない――



同日 午前第七刻 二尺
第21師団砲兵連隊 第四大隊 大隊長 アリエフ少佐


 第21師団砲兵聯隊第四大隊に与えられた任務は中央の戦線を支える21師団第1旅団の支援である。
「北領と同じで楽な仕事だと思っていたのだがな」
 歴戦の砲兵将校、アリエフ少佐は自身の所属する戦域が混乱しきっている事を把握し、即座に戦術判断を下した。
 当然、事前に与えられていた命令の遂行し敵を叩くのみである。攻めるのであれ、護るのであれ、そうしなければ眼前の猟兵の戦列は崩壊する。
 無論、状況はある程度把握している。危険な猛獣が背後で暴れ狂っている事も、南方の蛮軍が攻勢に出ている事も――北方で騎兵どもが凱歌を謳いながら攻め上っている事も。
 で、あるならば<帝国>軍は常勝無敵、ならばひたすらに前衛を支えればいい。我々は勝ち、敵は退くのだから。
 矜持と妥当な戦術判断による決断は近衛総軍の前進を阻み、第1旅団の各連隊の統制を保たせることにより第三軍の進撃を遅らせる役を確と果たしていたが――

「大隊長殿!後方から猛獣使いが!」
「なんだと!?撤退するのではないのか?」
 敵陣の最奥に浸透した重装備を持たない部隊、全軍撤退を命じられたであろうにそれが反転しながらも攻勢を行う。
アリエフにとってみれば沙汰の外である。常識的に考えれば、一刻も早く撤退するのが当然だ、戦闘を行えば宝石より貴重な時間を浪費する、取り残され包囲殲滅される危険を冒す筈がない――と言うのが常識だが。

「まさか――背天の技か?」
 導術に対する情報の欠如は、アリエフ個人に帰する欠陥ではなかった――むしろ拝石教文明圏そのものの欠陥であった――だが、それが彼の戦術論理の致命的な瑕となった事は疑いの余地はない。
 即断できぬ程の情報の欠如、それは逡巡となり、誤断を避けるための反応の遅れという最悪の結論を導いていしまった。
 状況の変動に追いつけず、先の状況で確信を持って選んだ選択肢に縋ってしまったのだ。
 無論、なにもしなかったわけではない、だが救援要請と護衛隊の戦闘用意と言うだけではあまりにも不足していたのは自明の理であったのは小半刻もせずに彼らはその身をもって知る事になった。




「追
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