A's編
第三十二話 前
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という軽い音を立てて地面に着地する。朝日が昇ったばかりの朝の空気は、まだまだひんやりとしているが、それが心地よいと感じる程度には気温は上がっているようだ。
「あら、ショウくん、起きてきたのね」
声のしたほうを振り向いてみれば、そこには金色の髪をショートカットにした女性が丸太に座って、火にかけた鍋をかき混ぜていた。
「おはようございます、シャマルさん」
はい、おはよう、と柔らかい笑みを浮かべて返事してくれるシャマルさん。
返事をもらったあと、僕はきょろきょろと周囲を見渡した。僕が寝ていた馬車には僕しか残っていなかった。つまり、おこしに来てくれたシグナムさんとここにいるシャマルさん以外の仲間も周囲にいると思ったからだ。
しかし、彼らの姿はどこにも見えなかった。
そんな僕の様子が可笑しかったのだろうか、シャマルさんは、何か面白いものを見たようにクスリと笑うと仕方ないなぁ、というような色を帯びた口調で口を開く。
「はやてちゃんとヴィータちゃんなら、水浴びに行ってるわよ」
「近くに湖でもあったんですか?」
「ええ、昨日の夜にシグナムが見つけたらしいの」
「そうですか」
なるほど、旅の途中で体をきれいにできる場所というのは貴重だ。特に昨日は戦闘も行ったから、彼女たちとしてはさっぱりしたかったのだろう。しかも、シャマルさんの口調からするとシグナムさんとシャマルさんは昨晩の内に水浴びは済ませてしまったようだ。
「ショウ君、気になる年頃でしょうけど、のぞきに行っちゃだめよ」
「行きませんよ」
くすくす、と子どもを見守るお姉さんのような口調で、でも、どこか少年である僕をからかうような口調で注意してくる。シャマルさんがこういうことでからかうことは、いつものことであり、思春期を迎える直前の少年であれば少しは動揺するかもしれないが、その年齢ははるか昔に通り過ぎてしまった。
そもそも、僕と同じ9歳の女の子に欲情するほど、鬱屈した趣味は持っていない。いや、そう思えるのも僕が少々特殊だからだろう。10年前の僕では思いもよらなかっただろう。突然、目が覚めたら幼子になっていて、まあ、なるようになるさ、とか考えていたら、漫画や小説のように異世界の飛ばされるなんて。しかも、聖剣を抜いた勇者として呼び出されたのだから、世界は何を考えているのかわからない。
「どうした、ショウタ。まだ寝ぼけているのか?」
少々、現状について考え事をしていたのだが、傍から見れば寝ぼけているようにしか見えなかったのだろう。バカにしたような声でもなく、ただ現状を確認するかのような無機質な声をかけてきたのは青い毛の犬耳と尻尾を持ったこの世界では獣人と呼ばれる種族のザフィーラさんだ。
「そんなわけあ
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