暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
SAO
〜絶望と悲哀の小夜曲〜
希望と絶望
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見たことのないアイテム名が表示されていく。

「あの………」

戸惑いつつ口を開くと、少年は相変わらず、顔いっぱいの笑顔を浮かべな

がら言った。

「この装備で五、六レベルぶん程度底上げできる。後は、僕も一緒に行く

から大丈夫だと思う」

「えっ………」

口を小さく開きかけたまま、シリカも立ち上がった。

少年の真意を測りかね、じっとその幼い顔を見つめる。視線がフォーカ

スされたことをシステムが検知し、少年の顔の右上にグリーンのカーソル

が浮かび上がるが、SAOの仕様どおりそこにはHPバーが一本そっけなく表

示されているだけで、名前もレベルも判らない。

年齢は明らかにシリカのほうが上だった。だが、マフラーに埋もれた顔は

幼いながら何か強烈な圧力が放出されているようで、大人っぽく見えた。

さらに見つめるうちに、シリカはあることに気付いた。

派手じゃない。

真っ赤なコートなどと、目立つ装備をしているのに、装備者である少年

は、少しも周囲から浮いていない。むしろ溶け込んでいる。

シリカはおずおずと言った。

「なんで……そこまでしてくれるの…………?」

正直、警戒心が先に立った。

今まで、自分より遥かに年上の男性プレイヤーに言い寄られたことが何度

かあったし、一度は求婚さえされた。

十三歳のシリカにとってはそれらの体験は恐怖でしかなかった。現実世界

では、同級生に告白されたことすらなかったのだ。

まさか目の前の少年がやるとは思わないが、シリカは一歩後ずさった。

そもそもアインクラッドでは《甘い話にはウラがある》のが常識だ。

シリカの当然と言えば当然の問いに、少年はトレードウィンドウから顔を

上げずに即答した。

「じゃーさ、おねーさんは目の前に困ってるヒトがいたらどーすんの?」

その余りに直球な言葉に、シリカは数秒絶句し、その後ぷっと噴き出して

しまった。慌てて片手で口を押さえるが、込み上げてくる笑いを堪えるこ

とができない。

さすがに、少年も軽く傷ついたのか、いじけたようにそっぽを向く。

その姿が余計に笑いを呼ぶ。

──悪い人じゃないんだ。

必死に笑いを呑み込みながら、シリカは少年の善意を信じてみよう、と

思っていた。

ピナを生き返らせるためなら、惜しむものなんてもう何もない。

ぺこりと頭を下げ、シリカは言った。

「よろしくお願いします。助けてもらったのに、その上こんなことま

で……」

トレードウィンドウに目をやり、自分のトレード欄に所持しているコルの

全額を入力する。

少年が提示してきた装備アイテムは十種以上に及び
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