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【短編集】現実だってファンタジー
ルームアウト・メリー 後編[R-15]
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変わらぬ無表情で、彼女はそこにいた。
そう、彼女は興味が無い時には何もしないし、興味も持たない。ただ、次に興味が湧いたその時にだけ行動を起こす。それが結果的に、連続した現象のように映る。それが、メリーさん。



 = =


 
「私メリーさん。いま、貴方の病室にいるの」

言葉が出なかった。何となくだが、勝手に「もう会うことはないのだろう」と考えていた。いや、それよりも少女の姿であるのに「この子はあの時の人形である」という確信を持っている自分にも驚いているが。
驚く俺を尻目にメリーはこつこつと音を立てて歩き、ベッドから上半身だけを起こした俺に何やら風呂敷を差し出した。

「はい、これお見舞いの品」
「あ、これはどうもご丁寧に・・・・・・って、コラ」

受け取ってみると妙に重いから中身を確かめると、それは鉢植えに植えられた赤いシクラメンだった。昔から語呂合わせを重んじる日本では病室に鉢植えを持ち込むことは「根付く=寝付く」を連想させ不吉だと言われている。しかもシクラメンは4と9、つまり死と苦を連想させるため縁起が悪い。流石都市伝説、嫌がらせが一級だ。

「シクラメンの花言葉は『疑い』。赤いシクラメンだと『嫉妬』」
「最悪じゃないか・・・って、何か刺さってるな。栄養剤か?」
「貴方の取り落したサバイバルナイフ。現場からちょろまかしておいたわ」
「え・・・」

慌てて鉢から引きずり出すと、腐葉土の付着した銀色の断面が見える。確かに、現場に持って行ったナイフだろう。全く同じデザインの別物の可能性もあるが、それよりは現場から拾う方が早い。警察に見つかれば何故こんなものを持っていたのかと疑われていたところだ。いや、それより先に銃刀法違反か?

「というか、どっちにしろ病院に持ち込むものじゃないだろう・・・・・・」
「知らないわ。私がそうしたいと思ったんだから、誰かが悪戯好きな私を願ったのよ」

興味なさ気にベッドの隣にある椅子へ座ったメリーの横顔を見る。
肌理(きめ)が細かく艶のある白い肌。手入れの行き届いた美しい金髪。
ほんのりと桜色に染まった唇と宝石のような青い瞳。
幼さを残す頬の丸みと、顔の要所に見える女性らしい色気が見え隠れする。
最初にあった時の人形姿とは、特徴の一致する場所があっても別人と言って差し支えなかった。

それにその顔には生物的に見ると余りにも欠点が少なすぎる。無いと言っても過言ではない。言ってしまえばイラストやアニメの世界の人間のようだ。そう思い、メリーの言っていたことを思い出す。

「君のその姿も誰かが望んだ物だと言われれば、妙に納得できるな。何というか、理想を求めすぎた女の子って感じがする」
「そう?私にはよく分からないし、興味も湧かないわ。ただ、そうね・・・貴
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