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【短編集】現実だってファンタジー
ルームアウト・メリー 後編[R-15]
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守る価値があったのか。他に何か思う所があったんじゃないのか。考えて、一つだけその思う所に行き当った。

「認めてほしかったんだ、一人の人間だって・・・親父と母さんの所有物じゃないんだって」

俺はマリオネットは嫌だ。自分の意思がある。リードで繋がれて与えられるだけの犬とは違う。あんたたちの都合にだけ振り回されるほど子供じゃないんだ、と。俺はきっとそれを認めてほしくて、俺が本気だと思わせたくて、あんなことを思いついたのではないか。

ただそれだけか、と青年はため息をついた。余りにも稚拙で、短絡的だ。
言ってしまえば今までのは餓鬼の癇癪で、一人前だって認めろと言ってやりたかっただけ、なのかもしれない。

「もう二度と認めてもらえなくなったな・・・・・・こんな事なら、もっと早く帰ってくるんだったよ」

親父はなぜ今になって、力づくでも俺を呼び戻したのか。母さんは何故首を吊っていたのか。結局疑問は振出しに戻り、何度も何度も往復を繰り返した。

と、病室の扉が開く音と女性の声がした。

稜尋(いつひろ)さ〜ん!入りますよ〜!」
「あ、はい!」

声に聞き覚えがある。確か看護師の人だ。
何かこれから検査でもあるのだろうか。ベッドの周囲のカーテンが閉まっているから見えないが、返事は返した。やがてカーテンがめくられ、看護師の人が入ってくる。
ここの看護師はきっと質がいい。こうして家族を失った俺を腫れ物扱いせず、むしろその仕事に対する熱意を陽のエネルギーとして放出しているような明るさがある。とても言葉を交わしやすい。すぐに用件を聞いた。

「なにか用事ですか?また検査、とか」
「いいえ、面会です。病室が何所か分からないと言うので・・・」

言いながら、看護師は後ろにいるらしい誰かの方を向く。
今、俺に面会とはいったい誰だろう。職場には有給を取ってあるし、この事件はニュース沙汰にはなっていない。ひょっとしたら地元の友達かもしれないが、所詮親父に選定されたうわべだけの友達だ。そこまで義理堅いかは疑問だった。

いや、職場の知り合いも友達も決してありえないことではないのだが、ともかく俺には誰が見舞いに来たのか見当もつかなかった。看護師の人は身をかがめて話をしている。態々屈めるという事は、相手は余程小柄なのだろうか。

「じゃ、私はお仕事に戻るね?帰りの道は分かるでしょ?」
「うん。アリガトね、看護師さん」

そういって看護師は病室を去り―――そこで俺は、あっ、と声を上げてしまった。
その姿を見て、その声を思い出し、まさか、と思った。
そして、面会に来た人間はこう告げるのだ。

「私メリーさん。いま、貴方の病室にいるの」

そこにいたのは小学生くらいで、可愛らしいフリル付きのドレスを着た金髪碧眼の少女。

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