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少年と女神の物語
第九十六話
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 そう言ってみる先では、ちょうど武双がもう一つのドームの中に入っていくところでした。

「ええ、そうね。・・・武双君は、今ナーシャちゃんを助け出しに行っている。この上なく無防備に、相手の神様の中に入りながらね」

 次の瞬間、私たちはその場を一斉に飛び出した。手首でブレスレットが砕けましたが、そんなことは気にしないで。
 飛翔、跳躍、それぞれが使える長距離移動の術を使って神の元まで飛んで(跳んで)・・・一番最初にたどり着いた私が、攻撃を始める。

「狂乱せよ、我が名のもとに!」

 ずいぶんと久しぶりに権能を使って海を狂わせて、足場の足場としての機能を狂わせる。
 そうして神の意識が私に向いた瞬間に他のみんながいっせいに攻撃して、その意識をほんの少しずれさせる。
 さすがに、相手はまつろわぬ神。

 そんな存在が、この場で意識を向けるとしたら・・・今、あの中にいる宿敵であるカンピオーネ(武双)か、目の前にいるまつろわぬ神()でしょう。
 だから・・・

「英雄よ、迷妄せよ!」

 私が、おもだって戦うしかない。
 運よく、今戦っている神様は英雄神。そして、私は英雄を狂わせる神。
 ゼウス、アガメムノンなどと同じく鋼の神が相手である以上は・・・例外なく、狂わせることができる。英雄神とはかなり相性がいいんですよね、私。
 ただ・・・

「ほう・・・女神よ、キサマは中々に面白い神格を持っているようだ」
「面白い、ですか。ありがとうございます、と言っておきますね」

 そう言いながら、武双が即席工場(インスタント・ファクトリー)で作ってくれた槍を召喚して構えます。

「・・・その槍は、」
「行きます!」

 何か言おうとしていたところを遮って、自力で海の上を走って神に向かう。
 途中で色々と飛んできましたけど、それはほとんど家族が全力で逸らしてくれて、私は数回権能を使う程度で近づいていき、

「烈槍滅刃!」

 武双から習った槍の術で、一撃目を入れる。
 そこに狂乱の権能を乗せて確実にダメージを与えて、まだ慣れない二振り目の召喚。そして、

「滅槍烈刃!」

 珍しく成功した連撃、欲張ってもう少しやろうかとも思いましたけど・・・すぐに跳んで、槍状に迫ってきた流動体をよけます。
 上にいた立夏に回収してもらってから一度全員で離脱して、狂乱から立ち直ろうとしている神を見ます。

「・・・思っていたよりも早く、狂乱から抜けてきそうですね」
「うん。あの神様、英雄でありながら蛇でもあるみたいだから・・・蛇を強めて消しにかかったのかも」
「ありそうな話ですね・・・皆の方の攻撃はどうでした?」

 周りを見ながら尋ねると、立夏の飛翔でここにいるメンバーは揃って首を横に振り
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