プロローグ
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―――――どうか、みんなが僕を忘れますように・・・・・。
失うこと、傷つけることを恐れた僕はそう願った。大切な人、大切な場所。大切な思い出の全てから僕のことを綺麗に消し去るよう世界に願う。
全ては泡沫の夢のように。
―――――おやすみ・・・・。
意識が闇にとけていく。ゆっくりと重たくなる瞼のムコウに見えたのは、心を寄せた赤毛の少女。必ず帰るという約束を破ってしまった僕を彼女は責めるだろうか。
・・・・どうか、泣かないで。笑顔でいてほしい。
身勝手なことかもしれない。卑怯だと思うだろう。だけど、僕はこの世界にいてはいけない。僕がいればいずれ彼女も傷つけてしまう。そうならない為にはこうすることが最善の選択なんだ。
・・・・都合のいい言い訳だな。
自嘲的な笑みを浮かべながらも頬を伝う滴に気が付いてここに来る前に緑毛の彼女に言った言葉を思い返す。
―――――未練はあるよ。だからこそ、未練はない
未練・・・・ありまくりじゃないか。
光が天高く昇り、世界に広がる。全ては夢。この時、世界から“僕”という存在が消えた・・・・
はずだった・・・・―――――
「おっはよー!」耳元で急に聞こえた声に飛び起きる。その時素っ頓狂な声を上げてしまった。
「おお!起きたね起きたね。おはよーだよ不思議君」
声をかけてきた主は女性。一人不思議の国のアリスのような服装に兎の耳がついたカチューシャがこの空間との場違い具合がよくわかる。その女性は満面の“つくり笑い”で僕をまじまじと見つめている。
「・・・・えっと」
今がどういう状況か。いったいここはどこか。状況把握に頭が動き出すがいっこうに答えが出てこない。
・・・・わからない。全てが。
「不思議君。きみはこのちょーぷりちー天才科学者の束さんの興味を惹いたのだよ!おめでとー!」
両手を握られてぶんぶんと上下に振られる。テンション高すぎやしないか?
「えっと、今どんな状況か説明してもらえると嬉しいんですが」
敵意のようなものは感じられない。やたらと上手い作り笑いを除けばふつうの女性(?)だと判断しての言葉だ。
「束さんは條ノ之束っていうよ。ちょー偉い天才なのだ!ブイッ」
まったく説明になってないんだが。
「ん〜・・・・じゃあ、
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