SAO編
第二章 曇天の霹靂
4.鏡裏の黒幕
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後ろ姿が過りました。
ギィィン! とチマの大剣とノーブルヴァンパイアのレイピアが激しい衝撃音を響かせます。
思考に専念していたせいで、敵に注意を向けるのをしばし失念していました。
チマは私をフォローして相手の攻撃を受けたのです。
「ごめん、チマ!」
「そんなことはいいッス! それよりも向こう! キリュウさんたちの方が大変ッスよ!!」
「えっ!?」
チマの叫びに、わたしはノーブルヴァンパイアへソードスキルを放ち、距離を取ってから鏡の向こうを確認しました。
「ルネリーたち《聖水の効果が切れてる》っぽいッス!」
「!!」
鏡の向こうに見えるキリュウさんとルネリーの武器には、確かに支援効果付与を表わす白いライトエフェクトは確認できませんでした。
敵は実態の無いアストラル系モンスターなのに、聖水バフをかけ直そうともしていないところを見ると……。
――聖水のストックが切れたんだ。
いくらキリュウさんのプレイヤースキルが高いとはいえ、相手にダメージを与えられなければ苦境は必至。
この状況で私が出来ることは――――
「チマ!」
「なんスか!」
「あの鏡に向かって聖水を――――《投げて》っ!」
「投げっ、えぇぇっ、うぅ、あー、わかったッス!」
――嗚呼、チマの頭の中が手に取るように解る。
私の要望にオウム返しして、その理由の解らない要望に驚き、その理由を考えて、でも解らなくて、訊いてる暇もなさそうだからとりあえず言うことをきいておこう。という感じだろう。
確かに細かく説明をしてる暇はありません。あちら側の状況は特に厳しいだろうからです。
チマがポーチから聖水を出しました。ですが、彼女と姿見の間にはノーブルヴァンパイアが居ます。
このまま投げれば撃ち落とされる可能性が高い。
「ヤァァ!!」
だから私は、自分が投げるのではなくチマに任せました。
鞭スキル行動阻害技《バインド・グラスプ》。
二秒間だけ、完全に吸血鬼の動きを封殺します。
そしてその僅かな隙に。
「いまぁああああ!!」
サイドスローでチマが投げた聖水の小瓶が、ノーブルヴァンパイアの横を通り過ぎてキリュウさんとルネリーを映す姿見へと飛んでいきました。
――あれがただの姿見であれば、聖水は鏡に弾かれて割れてしまう。
だけど、違う。私の推測ではこの館にある姿見は全てとある性質を持っています。
私たちは勘違いしていたんです。
ルネリーとキリュウさんを吸い込んだ姿見は、パーティーを分断させるための罠、ではなかったんです。
特定の人数を吸い込んだから鏡の向こう側に行くことが出来なくなってしまった、というわけではなかったのです。
ルネリーや私たち
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