暁 〜小説投稿サイト〜
Monster Hunter ―残影の竜騎士―
8 「ふりそそぐ空」
[2/14]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初
む。この曲芸染みた光景も慣れればなんてことない、ただ便利ってだけ。
 朝の紅茶も欠かせないわね。しっかり3分蒸したアールグレイもどきは、ストレートで飲むのがいい。紅茶も中々手に張らない嗜好品だし、まったく、金ばっかりかかる世界だわ。残ったポットの中身は魔法瓶の中へ。なんでって? もちろん仕事場に持ってくのよ。紅茶のひとつでも持ってかないとやってられないわ。これも特注したもので、数十万かかったのよね。まあそれだけあって、保温性はなかなかのものだけど。……ゼロが5つもお尻にくっついた値段ぶんどっといて保温性悪い、なんて言ったらタダじゃおかないわ。殴り込みよ、殴り込み。

「さってと、仕事行きますかー! あ゛ぁ〜もぉ〜めんどくさっ!」

 重い鎧はきらいだ。半年くらい前に作った白地のワンピースを着て、外へ出る。シンプルだけど袖にレースが付いている、お気に入りだ。

「憎たらしいくらい良い天気だわね。日焼けしないかしら」

 考えること5秒。……日焼け止めって、どこ置いてたっけ。ええと…化粧台? あら、無いわ。今日は探し物が見つからない日ね。
 狭くない部屋のあちこちをひっくり返して、ようやく目的のものを見つけたときは時計の長針は円盤の反対側を向いていた。……あら、目は悪くないはずだけど。見間違いかしら。
 …何度見ても変わらない。気づいたら30分経ってたみたい。あちゃー、まぁたやっちゃった。

「……んー。ま、いっか」

 私が白と言えばカラスだって白くなるのだから。まあ、そんなこと言わないけど。きっとまた溜め息で終わるでしょう。便利便利!
 それにしても半年に一回の定例会って、なんで私まで召集されなきゃいけないのかしら。そういうのって上の方で処理すべき問題でしょ。脳筋集めて何を議論させようってのよ。あ、言っとくけど私はお(つむ)の方も完璧だからね? いい? 間違えたらぶっ飛ばすわよ、覚悟なさい……なんて、誰に啖呵切ってんのかしら、私。やだ、変な人になっちゃうじゃないの!
 っていうかまだ前回のから半年もたってないわよね。何これ、イジメ? ここから王都まで一体どれくらいの距離あると思ってんのかしらあのクソジジイ共。かといって変態が暮らすような都なんかに住む気はさらさら無いけど。
 さて、今回は何週間で帰ってこられるのかしらね……。あーもうっ、めんどくさー!  安寧の日々に浸っていたぁーいのにぃー!

「いってきまぁーす…」

 だるそうにそう言って、私は誰も返事をしない我が家をあとにした。

 燦々と降り注ぐ太陽。ワンピースと同じくらい白い、抜けるような肌に日差しが反射して、青い空に映える。道行く途中町民に笑顔で見送られながら少女は身の丈を超える大剣を担いでてくてくと歩いていくのだった。その足取りは、重い。


[8]前話 [1] [9] 最後 最初


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ