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東方攻勢録
第十話
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 人一倍正義感の強い聖は精神的にかなりきているようだ。そんな彼女を村紗はずっと慰めていた。
「……早く助け出してあげないといけませんね」
「そうだな……紫、もう今日は解散して後日また話をしよう。皆さん疲れてるだろうし……」
「……それもそうね」
 それぞれ決意を心の中に秘めつつ、一同は部屋を後にするのだった。

 その日の夜妖夢が話をしたいと言ってきたので、二人は俊司の部屋に集まっていた。最初は簡単な雑談ばかりしていたのだが、次第に話題は再思の道での出来事に変わっていった。
「……あそこではいろいろありすぎましたね」
「そうだな……」
 和やかだった雰囲気が次第に重くなっていく。
 再思の道での戦いは勝利に終わったはずだった。だがその戦いに復讐の念を持っていた俊司は、復讐相手に相討ちという形で殺された。そして俊司に恋心を抱いていた妖夢も、彼の死で精神が壊れ自殺寸前までいってしまった。思いだしただけでも体が震えてしまいそうだ。
「俊司さん……少し考えたことがあるんです」
「……考えたこと?」
 妖夢は少しためらいながらもそれを言った。
「また……俊司さんが……どこか行ってしまうんじゃないかって。また、離ればなれになっちゃうんじゃないかって……」
「妖夢それは――」
「わかってます。でも……怖いんです。そう考えると……とても……とても……」
 妖夢はそう言いながら静かに泣き始めた。
 もう会えない寂しさを味わいたくはないのが彼女の本音だった。たとえ俊司が亡霊だったとしても、革命軍はなにか対策を考えているのではないか。考えたくもないことが妖夢の脳裏をよぎっていた。それにせっかく思いを告げられたばかりだ。それで俊司がなんらかの方法でこの世から消え去ってしまえば、今度こそ自殺しかねないくらい精神を崩壊させてしまうだろう。
 それにそう思っていたのは彼女だけではない。俊司だって今回のような亡霊になるなんて事が続くなんて思っていなかった。それに目の前で誰かが自分をかばって殺されるなんてこと二度と見たくはない。ましてその相手が恋人ならなおさらだ。
「……妖夢」
 俊司は泣き続ける彼女の頭を優しくなでると、そっと自分の懐に引き寄せた。
「俊司……さん?」
「俺だって怖いよ……妖夢。もうあんな思いはしたくないからさ」
 不安にさせないためにも無理やり笑顔を作り出す。それを見た妖夢も泣くのをやめ、静かに彼を抱きしめた。
「なあ妖夢。約束してくれるか?」
「……なんですか?」
「俺は君に背中を預ける。だから妖夢も俺に背中を預けてくれるか?」
 そう問いかけると、妖夢は無言のまま静かにうなずいてくれた。まあわざわざ問いかけなくても答えは決まっていただろう。しかしお互いの意志を確認出来た二人は、少し重荷が減った気がしていた。

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