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遅くなった」

「ううん、大丈夫だよ、ルシル。ここまでの作業なら私一人で十分だったから」

ルシリオンに、シェフィ、と呼ばれた少女が彼の愛称、そして報告を告げ振り返る。あどけなさの残る少女で、足首まで流れるシアンブルーの長髪はツーサイドアップ。桜色の瞳は大きく、吸い込まれそうなほどに綺麗だ。
紫色のハイネックロングワンピース・白のクローク。頭には毛皮(ファー)の無い露西亜帽(パパーハ)。少女の名はシェフィリス・クレスケンス・ニヴルヘイム。アースガルドと同盟を結んでいる世界の一つ、“氷零世界ニヴルヘイム”の第二王女だ。

「このヨツンヘイム連合の新兵器・・・私たちの知らない技術で造られてる。でも解析も終わったし、製造方法も判明。この程度なら改良して、全く新しい形での戦力を開発できるよ」

「さすがだな。まさか連合も、自軍の兵器を捕縛され、あまつさえ解析された挙句に利用されるなんて思ってもいないだろうな」

ルシリオンとシェフィリスの見詰める先、ホールの一番奥にソレは居た。
西洋甲冑のような深紅の鎧を全身に纏った、全長が50mはあるだろう巨人――その上半身。腹から下は無く、両腕も肩からごっそりと無い。原型を留めている上半身と頭部も無傷ではなく所々がひび割れ、または崩れていて、機械部品をさらけ出していた。ソレの背後の壁に大穴が空いていることから、無理やりホールへ運び込んだらしい。

「Automatic operation's Magic use Tactics attack, Intelligent battle System・・・ 頭文字をとってA.M.T.I.S.・・・アムティスって呼ぶみたい」

「アムティス、ねぇ。連合が連合統一言語(ヨツンヘイムご)ではなくてアースガルド語を使う、か。皮肉だな。どれどれ。2タイプがあるようだな。近接型のセイバータイプと遠距離型のアーティラリータイプ」

ルシリオンがシェフィリスの周囲に展開されている半透明の空間モニターを覗き込む。アムティスの詳細なデータが表示されている。ルシリオンはそれらのデータを眺める。現在、アースガルド同盟軍とヨツンヘイム連合軍の戦況は、連合に傾いている。要因としては、両組織が取り込んでいる味方の数だ。
アースガルドは、同じ原初世界である“氷零世界ニヴルヘイム”と“煉生世界、ムスペルヘイム”。そして“光煌世界アールヴヘイム”。“無圏世界ニダヴェリール”。“闇庭世界スヴァルトアールヴヘイム”。その他140強の世界と同盟を結んでいる。

「新しい仲間を戦場に投入すれば、きっと同盟軍も少しは楽になるかもしれないよね」

ヨツンヘイム連合。
“極凍世界ヨツンヘイム”と“戦導世界ヴァナへイム”、“夢幻世界ウトガルド”、“深森世界スリュムへイム”を筆頭とし、
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