暁 〜小説投稿サイト〜
渦巻く滄海 紅き空 【上】
七十二 前夜
[1/7]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
「…――いよいよ明日、ですね」

酷く硬い声が白の空間に響き渡る。傍らでそう呟いた彼女を綱手はちらりと見遣った。強張った面持ちに、わざとらしく溜息をつく。

「そんなに身構えなくてもいいだろ。取って食われるわけじゃないんだから」
「緊張しますよ!相手はあの、大蛇丸なんですから!!」
むしろ食われるだけでは済みませんよ、と叫ぶシズネに、綱手は眉を顰めた。非難する。
「静かにしな。此処を何処だと思ってるんだい」

更に言い募ろうとしたシズネがハッと言葉を呑み込む。病院、それもアマルが寝入る病室の正面だったと改めて思い出し、彼女は口を噤んだ。


六日前、綱手とシズネの前に堂々と現れたのは、あの『大蛇丸』。綱手と同じく『伝説の三忍』の一人であり、今現在は木ノ葉の抜け忍だ。
やにわに出現するや否や、師たる三代目火影を『木ノ葉崩し』にて殺害したとわざわざ明言した彼は、その上で医療スペシャリストたる綱手へ三代目との戦闘で負った腕の治療をせがんできた。その際、予定外にもアマルに致命傷を負わせた大蛇丸は、彼女さえも取り引きの材料にした。
即ち、綱手の亡き弟と恋人及び弟子たるアマルを生き返らせてほしくば治療に応じるよう脅してきたのである。

事実、アマルは瀕死の重傷だった。
忌々しいが大蛇丸の付き人であるカブトの言う通り、出血は致死量を遙かに超えていたし、何時死んでもおかしくない状況だった。
大蛇丸の宣言通りアマルを見殺しになどさせられない。だからこそ綱手とシズネは共に全力で治療に手を尽くした。その甲斐あって、アマルは奇跡的に持ち直し、目を覚ましたのだ。

実際、カブトの診断は間違っていない。アマルの容態はせいぜい三日しかもたないはずで、普通の医者ならとっくに匙を投げていただろう。シズネの眼から見ても生還出来たのが不思議なくらいだ。
だが現にアマルは全快に向かっている。むしろその快復には目を見張るものがあり、シズネは驚くと共に改めて綱手の腕に感服していた。

やはり医療スペシャリストとして名を馳せた伝説の三忍は伊達では無い。


その張本人である綱手は、先ほどからずっと病室の扉を眺めている。室内のベッドにて横たわるアマルの無事を確認するかのように、視線を扉の白に固定したまま動かぬ彼女の横顔をシズネはおそるおそる窺った。
やがて意を決し、問い掛ける。

「――――取り引きに、応じるおつもりですか?」
返事はない。一向にこちらを見ない綱手に焦れて、シズネは声を潜めつつも張り上げた。
「大蛇丸…奴の怪我を治療したらどうなるのか、既に結果は見えています!腕が治り次第、アイツは―――」

シズネの必死の主張にも、綱手の様子は普段と別段変わりない。彼女の平然とした態度をシズネは訝しげに見つめた。
同じ三忍であるが故に、大
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ