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ボロボロの使い魔
『絆を繋ぎ止めるもの』
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だが今、橘の身を案ずる事もせず自分に対する敵意と苛立ちのみを視線に含めぶつけてくる彼女を前に
その評価が自分の中で音を立て崩れ落ちていくのを感じる

「何で?!どうして!そんな事を聞いているのよ貴方は!」





自分の当然の疑問を同じく怒声で返され
ルイズの苛立ちは一層募った

どうしてこうしても、自分はあいつの名前など知らないのだから仕方ない
いや…あいつが全て悪い
主人である自分を放り出して好き勝手にしているのが悪い
自分が教室で惨めに笑われ、掃除をしていたときか?
この女は人の所有物である使い魔と逢い引きし、へらへらと名前を教えあって いたというのか?!

使い魔の出来の悪さに関しては諦めがあった
所詮は昨日今日の出会いに過ぎない、そんな存在に入れ込む理由もない

だが、同じく諦めていた筈の『もしかしたら、友人になり得たかもしれなかった』彼女が関わっていた事実は想像以上にルイズの頭に血を上らせた

「結局、あんたも同じねモンモランシー…あの色ボケ女、ツェルプストーとね!」







それを聞いた瞬間、モンモランシーの中で何かがキレた

「ヴァリエール…!」

怒りのあまり目眩がしたなど彼女の人生において初めてである
そして、今の自分の行動も

「貴女は…貴女って人は…!」

言葉を紡げないまま掴みかかる
掴んでどうするかなどは考えていない
だが頭に登った血が冷静になる事を許さない

「っ!いきなり何よ…離しなさいよ!」

突然の爆発と蛮行に驚きながら、しかしルイズもされるがままと言う訳では無い
彼女を引き離すべく細腕を掴む
だがそこに込められている予想以上の力は揺るがず益々ルイズの襟首を締め上げる
これを容易に引き剥がせない事を判断したルイズの左腕は今度はモンモラン シーの腕ではなく彼 女自慢の縦ロールの巻き髪を引っ張った。

「っ!?」

流石に顔を歪め、だがそれでもその手を離そうとはしなかった
それほどまでにモンモランシーにとってルイズの暴言は許しがたいものがあったのだ


キュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストー

才能と美貌、そして少々奔放な性格で良くも悪くも有名人であった彼女が学園をやめる事は当時ちょっとした騒ぎになった
何人もの友人達が『何故、やめるのか』と尋ねれば
彼女はいつものように艶のある笑顔で
『素敵なダーリンを探しに行く』と一様に答えた

モンモランシーにとってキュルケはお得意様でもあったから特製の香水を餞別変わりに
自分もやはり彼女に尋ねたのだ

『そんなに素敵な人なの?』

『えぇ、とっても』

『後悔しないの?』


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