暁 〜小説投稿サイト〜
とらっぷ&だんじょん!
第一部 vs.まもの!
第13話 きゅうそくおわり!
[1/7]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話

 真夜中、ノエルが毛布の中で寝返りを打ち、ディアスが忌まわしい故郷の事で懊悩(おうのう)し、エレアノールが顔を覆う両手の指の間から涙をこぼし、レイアが思い詰めた顔で豆だらけの掌を見つめ、オルフェウスが机の中の小瓶を凝視している、そんな真夜中、ウェルドは真っ黒い穴についての夢を見ている。
 それは与えられた球体に潜む虚無の装置であり、知られざる門をくぐったものは皆、黒い穴としか形容しようがない空間へとゆっくりゆっくり落ちていき、見ている者にはそれが次第に赤くなっていき、ついに動きを止めるように見え、けれどそれは実際には赤くなってもいなければ、動きを止めてもいない。
 そのトラップに引き寄せられたものは、黒い穴の驚異の重量によって引き延ばされ、元の形をなくし、細い細い見えざる糸のようになって、穴の中をどこまでも落ちていく。その先にはきっと、白い穴としか形容使用のない空間が、表裏一体のものとしてあるのだろう。
 夜空に月よりも白い穴が穿たれて、銀色に光る糸が地上に垂れ落ちる。土の上に渦巻く糸は月の見えざる指により、本来の形に織りあげられる。
 透きとおるなめらかな肌。
 尖った顎。
 小さくて形のいい鼻。
 織りあげあられた少女は黒い瞳で月にほほえみ、命を確かめる。
 少女が歩く足下で、砂埃が渦を巻く。
 鳥達は不吉な気配に眠りを破られて、甲高い声で騒ぐ。
 雲が月をかすめる。
 少女は歩く。足音もなく、神話めいた存在感で、カルス・バスティードの無人の通りを辿り、新人冒険者達の宿舎を開け放つ。
 雲の光が少女の影の不在をあからしめる。
 影を持たぬ者は床板に足を乗せるが、それを軋ませることもない。一歩、また一歩、ウェルドの部屋に近付いてくるので、
「フィリア!」
 飛び起きたウェルドは部屋の戸を開け放つ。が、そこにはもちろん……
 そこには誰もいない。

 ※

 その日、思いもしない人物がクムランの家の戸を開けた。
「やっほー、遊びに来たよ!」
 先頭はジェシカ。続いてパスカとルカ。今の今まで遺跡に潜っていたという様相だ。静かなクムランの家は一気に華やいだ。
「こんにちは、みなさん。来てくれて嬉しいです」
 クムランが本を閉じ、笑いかけた。
「いやー、いっつもあたし達、バルデスのおっさんのところにしょっちゅう顔出してるんだけどさ、ウェルド達はクムランさんの所によく行ってるって聞いてさ。たまにはいいかなって思って! あ、迷惑じゃないよね。こんなかわいい女の子が来てくれてさ!」
「もちろんです。いつでも歓迎しますよ」
 遺跡から収集された祭具の復元作業に取り組んでいたウェルドとノエルは、ピンセットを置き、テーブルの上の破片に白い布をかけた。
「なにやってんの? ずいぶん地味な作業だね」
「ああ。遺跡で拾っ
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ