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乱世の確率事象改変
彼女の望みのままに
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ている。一番田豊の性格を把握している彼女の言ならばほぼ間違いない。
 さすがにこの短期間で幽州を掌握しきる事は出来ないが、袁紹軍の予備兵力と孫策を使えば劉備軍の打倒は容易くなる。劉備は簡単に逃げる事も降る事も出来ない。大徳という期待の鎖は内からも外からも彼女を縛り付けてしまう。

「孫策も共に潰す為なら、二虎競食の計……とでも言うのでしょうか」

 稟の言った名に少し感嘆の息が漏れる。袁家が分裂していないのなら、まさしく劉備と孫策の二匹の虎を弱らせて仕留める為の策だと言える。しかし――

「それにしては……稟ちゃんが言いかけてましたが行軍の時機が早すぎますねー」

 二人の言うように最初から決まっていたとしても袁紹軍が行動するには早すぎる。幽州の内部を私達が操作したと言っても、もう少し時間を待てばいいはずなのだ。
 孫策軍は荊州攻略から既に離脱してはいるが未だ徐州に向かってないと聞く。民の扇動が上手く行っているようで何より。
 しかし何故、孫策軍が劉備軍と交戦していてこそ両袁家には利があるというのにわざわざ内部の平定に向かわせている今、攻めようというのか。
 思考を整理すること数瞬、ここまで早く行動を起こす理由が幾つも浮かび上がる。
 一つは私の性格を読んでの事。他は孫策の首輪をきつくする為と……
 ふと見ると、風がどこか物言いたげな視線を向けていた。彼女は気付いているのか。人の心の機微に聡い彼女ならば、入っている情報からしても、私と同じ答えにも行き着いているだろう。
 風に小さくコクリと頷くと、眠たげな目をさらに細めて言葉を紡ぎ出した。

「多分、黒麒麟さんが怖いのではないでしょうかー。袁家なら既に我らと幽州側であった話も入っていると思いますし、他と手を結ばれる、もしくは不可測の事態を作られる事を避けたかったんでしょうねー。何をするか分からないモノから排除するのは戦の常道ですからー」

 間延びした緩い声ながらも知性の輝く瞳で述べられた事に、桂花の表情が僅かに曇る。
 徐晃の事が単純にいけ好かないから、というのが一番に心の内にある。黄巾の時に行った対応を聞いてからずっと……桂花は男嫌いな事とは別に徐晃の事が許せないようだ。私と同じように、あの男が劉備の元に居る事が認められない。その才と在り方を知っているが故に。
 風と稟はそれを私達の話でしか知らないからどれだけ異常なのかと疑問を持っている程度であろう。直接劉備軍の中身を見なければ分かるはずもない。劉備と徐晃の二人を見れば、彼女達なら直ぐに理解するだろう。徐晃が大嘘つきであるという事と劉備が成長すれば私の一番の宿敵である事に。
 二番目は、嘗ての友がその男を恐れているという発言への不満。しかし桂花自身、先の交渉と現在の戦の情報があって徐晃の能力だけは前よりも高く評
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