第三章 [ 花 鳥 風 月 ]
三十七話 傷つきし者達
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て笑いあう、僕が思っている以上にこの郷は沢山のものに支えられているんだな。そんな感慨に抱きながら。
「あっ!わたしそろそろ行くよ、これを届けて回らないといけないから」
にとりはそう言うと背負っているリュックを指差した。
「何か大荷物みたいだけど何が入ってるんだい?」
「ん?これ?ちょっと待ってね」
僕がそう聞くとにとりはリュックを下ろし中から何かの液体が入った掌位の小瓶を取り出し手渡してくる。
「これは“河童の妙薬”って言ってわたし達河童の里の特産品だよ!切れた腕だって繋がるって評判の傷薬さ!本来は郷とかで売ってるんだけど今回は無償で配ってるんだよ。さっきも言ったけどこんな時こそ助け合いだからね!あぁそれは七枷様にあげるから」
「ありがとう助かるよ、ちょうど紫が怪我をしていてね」
小瓶を弄びながらにとりにそう返すとにとりと岩さんが一瞬ポカンっとした表情をした後激しく反応した。
「えっ!紫さん怪我してるの!七枷様こんな所で油売ってないで早く帰ってあげなよ!」
「そういう事はもっと早く言うべきだな!こっちは我らに任せていい、早く帰るのだ!」
「えっ?う、うん分かったよ。それじゃ二人共後の事よろしく」
僕は二人の叱責を受けながら急かされるように神社へ向け走ったが、飛んで帰ったほうが早いと気付いたのは神社に帰り着いた時だった。
□ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■
「あっ!お帰りなさいませ七枷様!」
神社に帰り着き社務所の玄関を開けた所で僕を出迎えてくれたのは巫女服に身を包んだ百合だった。
「ただいま、ってどうしたんだいその格好?」
「はい、実は八坂様に『七枷様に助けて頂いた恩をお返しする為に御奉公させてください』と願い出たのです、そうしたら『なら此処に住む以上巫女として働いてもらうよ』と仰って栞さんからこの服を渡されました。その似合っていますか?」
百合はその場でゆっくりと一回転すると不安そうな視線を僕に向けてくる。
「似合ってるよ、でも袴は赤なんだね?というか赤い袴が家にあったんだ」
「栞さんが『青い袴は風祝の証なので譲れません!』と仰っていました」
あぁ納得、確かにあの子ならそう言うよね。気持ちは分かるけどね、風祝としての誇りと責任感があるんだろう。
「そういえば綺羅はどうしたんだい?」
「父は一度戻っていらした洩矢様と共に郷の復旧のお手伝いに向かいました。私は今紫様の御看病で手が離せない栞さんの代わりに夕餉の支度をしている所です。皆様の御口に合えばいいのですが」
来たばかりなのに真面目だねこの子は。綺羅も真面目だしもしかしたら血筋な
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