暁 〜小説投稿サイト〜
魔法少女リリカルなのは 〜優しき仮面をつけし破壊者〜
オリジナルストーリー 目覚める破壊者
55話:彼のいない非日常(げんじつ)
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た。

(もうすぐ…年を越しちゃうなぁ…)

高台への階段に積もった雪を踏みしめながら、なのはは空を見上げた。
士が行方不明となって、もうすぐ一年になる。そして年を越して、新たな年を迎える事になる。

でもこのままいけば……その場に、彼はいない。

「うわっ…とと……危ない危ない」

その時雪に足を取られ、滑って転びそうになってしまう。慌てて両手をつき、転ばないようにバランスをとる。
元々運動神経はよくない方なのに、何してるんだろう…、と思いながら再び階段を上っていく。

士がいなくなる前は、毎朝魔法の練習をしていた場所。他の人は日常的にはあまり来ないので静かで、見下ろす海鳴の景色と木々を揺らす風が気持ちいいこの場所は、士も『景色がいい』と気に入っていた場所なのだ。
なのはは士がいなくなってから、時折この場所を訪れていた。と言っても何をする訳でもなく、三十分程ぼ〜っと海鳴を眺め、そして家に帰る。それだけの事だった。

だが、今日は違った。

(あれ…?人がいる?)

残り数段で高台、というところでなのはは高台に誰かいる事に気が付いた。しんしんと降る雪の中、誰か来ているとは思わなかったなのはは、若干そのことを不思議に思った。

腰より下まである長いコートを着たその人物は、転落防止の柵の手前で、海鳴を見下ろすように立っていた。
体格からして少し年上の…男の人、だろうか、となのはは思った。性別の判断に少し迷いがあったのは、おそらく後ろで束ねられた黒髪の所為だろう。
生え際よりも少し上のところで束ねられた髪は、最低でも首の付け根まで伸びているようで、遠目からでは判断しずらかった。そこから先はコートで見えないので、何とも言えないが。

そうやって思考している内に、なのはと男の間は六、七メートル程になっていた。
なのはの雪を踏む音に気づいてか、男はゆっくりと振り向き、なのはに顔を見せた。

「―――ッ…!」

瞬間、なのはは息が詰まる程に驚いた。
なぜならその男こそ、なのは達が必至になって探していた、彼―――



―――門寺 士だったのだから。


 
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