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ソードアート・オンライン 〜無刀の冒険者〜
番外中編
蒼空のキセキ4
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 デスゲーム、『ソードアート・オンライン』において必要不可欠なプレイヤースキルとして、「己の力量を正しく把握する」という技術を上げることに、異論がある人はいないだろう。このHP全損が現実世界の死へと直結する世界に置いて、油断や慢心は文字通り命取りとなる。

 そして、この世界がはじまり、幾年月。

 未だこの世界で生き抜く……戦い抜く人間たちが皆その力を正しく有していたのか?
 その答えは、残念ながら「ノー」と言わざるを得ない。

 自己評価を正しくできていないプレイヤー。
 ギルド《冒険合奏団》にはそんな人間が、少なくとも二人いた。

 もっともそれは、まったく逆の意味で、だったのだが。





 『変幻』。それは、彼女の特異な戦闘を讃えてつけられた呼び名。

 『ソードアート・オンライン』とは、「(ソード)が持ち主を象徴(アート)する世界」だ。魔法というファンタジー系RPGにおいて重要なポジションを占めるスキルが存在しないこのMMOにおいて、『愛用の武器』というのは文字通りその人物の代名詞と言える。

 『黒の剣士』キリトが漆黒の大剣、『エリュシデータ』を使い。
 『閃光』アスナが白く輝く細剣、『ランベントライト』を振るうように。
 あるいは『武器を持たない者』という変わった存在である『旋風』シドでさえ、彼の奇妙なほど細長い手足が彼を象徴していたと言えるかもしれない。

 彼女はそんな世界において、自らの特定の武器を持たなかった。
 戦いの世界に置いて、特定の武器を持たない戦士。

 もちろん、それはシステム的に不可能ではない……むしろ、ある程度までは推奨されているといっていいだろう。相手の武器を奪うMobに対する対抗手段として『持ち替え』のスキルがあるように、一種類の武器だけでなく複数の武器を使う技術を求める、といった形で、だ。

 だが、それをメインの戦法として扱おうとすれば、それはまさに茨の道。

 火力。防御。探索。あらゆる面でそれは定石通りの成長をしたプレイヤー達が当たり前にできることを、非常に困難にする。だからこそその定石が「定石」と呼ばれるのだ。そこから外れた道をすすむのは、単なる物好き、酔狂の類。デスゲームであるこの世界では、気狂いと言われても違わないかもしれない、変わり者。

 そんな「変わり者」、ソラ。
 だが彼女は、そのスタイルで堂々と『攻略組』に渡り合っていたのだ。





 「やぁっ、とぉっ……命中っ!!!」

 高らかに叫ぶソラ。その声の通り、投げられた投擲槍は飛行する巨鷲の腿を貫いていた。直後に上がる、けたたましい悲鳴。それはクエストボス、《いにしえの巨鷲》にその一撃が決して少なくないダメージ量を与えたことの証だった。

 
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