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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百五話 嘲笑する虐殺者
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浮かべていた。周囲は総司令官代理と中将を交互に見ている。
「私は人を替えると言ったんです、艦隊を替えるとは言っていません。意味は分かりますね?」
パエッタ中将の顔が強張った。会議室の空気もだ。

「馬鹿な……」
パエッタ中将が喘ぐ。
「馬鹿?」
総司令官代理が楽しそうに笑う。
「いえ、いくらなんでもそれは、……無茶では……」
笑い声が更に大きくなった。パエッタ中将の顔面が紅潮している。屈辱を感じているのだろう、若年の総司令官代理に侮辱されたと思っている。

「馬鹿は貴官ですよ、パエッタ中将。何も分かっていない」
「……」
パエッタ中将の表情が歪んだ。総司令官代理はもう笑ってはいない、厳しい眼でパエッタ中将を見据えている。
「最年少の亡命者に全軍の指揮権を委ねた。前代未聞の出来事です、こんな無茶が今まで有りましたか? 私が総司令官代理に就任した時点で同盟軍はどんな無茶でも許される組織になったのです。そうではありませんか、グリーンヒル本部長代理」

全員の視線がグリーンヒル大将に向かった。グリーンヒル大将は一瞬だけ煩わしそうな表情をしたがパエッタ中将に視線を当てた。表情には好意を示す物は欠片も無い。
「パエッタ中将、私はトリューニヒト国防委員長、シトレ総司令官よりヴァレンシュタイン総司令官代理の要求は最優先で叶えられるべきものであると聞いている」

パエッタ中将の顔が紙の様に白くなった。とりなしを頼むかのように周囲に視線を向けたが誰もがその視線を避けた。馬鹿な話だ、今頃になって慌てふためいている。ヴァレンシュタイン中将を総司令官代理に任命したのはトリューニヒト国防委員長とシトレ元帥なのだ。総司令官代理に敵意を表すという事は軍の二大実力者、トリューニヒト国防委員長とシトレ元帥を敵に回すという事なのにその事がまるで分っていない。確かに馬鹿と言われても仕方ないだろう。

「パエッタ中将、もう一度命じます。先行してフェザーン回廊の出入り口を封鎖してください。封鎖を破ろうとする船は軍民を問わず拿捕、抵抗する場合は撃沈してください」
「はっ」
パエッタ中将が顔を引き攣らせながら命令を受諾した。容赦はしない、そんな感じだな。これで総司令官代理の威権は確立された。誰も彼に逆らおうとはしないだろう。

「カールセン大将」
「はっ」
偉丈夫のカールセン大将が総司令官代理に軽く頭を下げて恭しい態度を取った。明らかにその威権を認める態度だ。
「大将にもフェザーン回廊の封鎖をお願いします」
「承知しました」
皆が驚いている。パエッタ中将だけでなくカールセン大将も?

「回廊封鎖の責任者はカールセン大将、パエッタ中将はカールセン大将の指示に従うように」
「……」
屈辱かもしれない、兵卒上がりのカールセン大将の指揮下に入ると
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