暁 〜小説投稿サイト〜
セファーラジエル―機巧少女は傷つかない
『"Cannibal Candy"』
#5
[2/5]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初
ことを許されているのは、《魔王(ワイズマン)》の称号を得た者のみ。

 全ての魔術回路を『見る』ためには、あの《禁書》を閲覧する必要も出てくるだろう。クロスは《魔王(ワイズマン)》になること自体にさほど興味はないが、それによって得られる《禁書閲覧》の特権だけは欲しいものであった。


 ちょうどその時、カーン、コーン、カーン……と、授業の終了を示すチャイムが鳴った。クロスは読んでいた資料を基の場所に戻す為に立ち上がる。それと同時に、ドアががちゃり、と開き、見覚えのある男が入ってくる。

「……フェリクス・キングスフォート」
「やぁ、クロス。ここにいると思っていたよ。さぁ、ライシンと交えて話を使用じゃないか。ここじゃ難だ。風紀委員長室まで案内するよ」


 ***


「……?」

 次の授業のために、別の教室まで移動していたシャルは、ふと窓の向こうに見知った頭が三つあるのに気が付いた。

 ひとりはフェリクス・キングスフォート。学院の治安を守る《風紀委員》総括で、時折シャルに声を掛けてくれる爽やかな美男子だ。

 もう一人はライシン・アカバネ。馬鹿の中の馬鹿。本物の馬鹿。

 そして最後の一人は――――クロス・スズガモリ。

「何であのバカたちがフェリクスと一緒に……?」
「気になるのか」
「ば、馬鹿じゃないの!?」

 からかうように問うたシグムントをしかりつける。階段の手すりに泊ったシグムントの表情は、どこか面白いものを見るような色を含んでいた。

「明日からグリーンピースを食べさせるわよ!!……確かに、フェリクスはいつも優しくて紳士的だけど……」
「いいや。フェリクスのことではない。彼ら……クロスとライシンの方だ。彼らは面白い人間だ……。昨日、私の傷に最初に気付いたのはライシンの方だった。そして……覚えているか。クロスは、今朝方で会った時、こういったのだ。『シグムント。昨日は災難だったな。……調子はどうだ』とな」

 別に自動人形の調子を気遣うのはさほど珍しい事でもない。

「それが何なの?」
「彼は私を、一個の知性として扱ったのだ。本来ならば、あれはシャル、君に言うべき言葉だったのだ。『お前の人形、調子はどうだ』とな。……ライシンもだ。彼は自分の人形と、丸で一人の人間のように接している」
「……」

 シグムントはなおも続ける。

「シャル。一つ聞きたい。彼らは君をかばった。もし彼らと戦うことになった時、君は戦えるか?」
「……私は、女王陛下から気高き一角獣の紋章と、北の領地を賜ったブリュー家の令嬢よ。邪魔者は誰であろうと叩き潰すわ。……誰であろうと」


 ***


「では、取引の話をしよう」

 ソファに腰かけたフェリクスは、ライシンとクロス
[8]前話 [1] [9] 最後 最初


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ