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それぞれの白球
加持編 血と汗の茶色い青春
第五話 俺の野球、是礼の野球
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走らせていた。3年で二軍に居るような人は、競争意識もすっかり萎えて、むしろ下級生には優しくなる傾向がある。一軍でベンチ入りを争わなければならないような人こそ自分を脅かす新戦力の台頭を嫌って、このように後輩には殊更に厳しくなるのだ。

「どうして、こう上手くいかないのでしょうか…」

鷹匠さんは遠くを見るような目をした。
そして、その視線を俺に向けてきた。

「加持君は、どうしてだと思いますか?」

その時の鷹匠さんは相変わらずの男前で、顔いっぱいに優しさが滲んでいた。この優しそうな顔には、正直さで応えなければいけないと俺は思ったんだ。そして、是礼においてはあり得ない事を俺はした。

「…正直にお話ししたいと思います。無礼な点がございましても、お許し頂けるでしょうか?」
「良いですよ、どうぞ」
「自分は、このチームが一皮剥けない原因は鷹匠さんにあると思っております」

鷹匠さんの目が意外そうに見開かれた。
俺はそのまま、思ってる事を話した。

「我々の打線の中で、最も打力があるのは、間違いなく3番の鷹匠さんです。しかし鷹匠さんは試合を決めるチャンスになりましても、次の打者につなぐ事だけを考えて慎重に球をお選びになられます。鷹宮戦もそうでした。そして4番の大井さんは主将という事もあってか、チャンスになると気負いすぎてしまわれるのです。大井さんがチャンスを潰しているように見えておりますが、鷹匠さんももう少し、大井さんを楽にしてあげても良いのではないでしょうか?それができるほどの打力がありますので」

鷹匠さんは俺の話を黙って聞いてくれていた。
俺は続けた。

「守備においても、鷹匠さんは冷静に過ぎます。リードは非常に考えられておりますし、捕球、送球も非の打ち所はありませんが、もう少し積極的に周囲を引っ張っても良いのではないでしょうか?このチームになってから、ビッグイニングを作られる事が目立ちます。ピンチになっても、鷹匠さんだけは冷静なのですが、スタンドから見ておりますと、そもそもチームの輪から鷹匠さんが外れているかのように見えてしまうです。高みから、見物しているような…。もっとチームを引っ張ろうという姿勢を見せて頂ければ、と思う事がありました。」

言いたい事を全部言った後、俺は鷹匠さんの反応を待った。殴られるかもしれない。結構生意気な事を言った。でもそれでも良いと思った。
しょうもない意見を言って失望されるよりは良いと思った。

「…なるほど…確かに僕には、自分の仕事だけしてれば良い、後は誰かの責任だという、逃げの気持ちがありました」

予想通り、鷹匠さんは怒りはしなかった。
真摯に受け止めてくれた。

「チームの柱と見られている以上、自分のプレーだけではなく、同僚のプレーの責任をも背負わねばなら
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