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それぞれの白球
加持編 血と汗の茶色い青春
第五話 俺の野球、是礼の野球
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冬のトレーニングの甲斐があって、是礼の一軍は春休みの練習試合で圧倒的な力を発揮した。まるで選抜を逃した鬱憤を晴らすかのような、冬に鍛えた体の力を爆発させるかのような勝ちっぷりだった。1試合平均3本のホームランをぶちかまして、負けなしのまま春季大会に入った。

だが、ここでまた落とし穴が待っていた。
春季大会の一回戦で、今度は公立校の鷹宮に足下を掬われたのだ。

この試合に先発した白神は冬月のオヤジから「盗塁を許したら即交代」という縛りを課された。昨秋横浜戦で7盗塁を許した課題の修正を測る為で、「この程度の相手、サクッと潰してこい」という意味もある。
3回まで3-0とリードして、白神のピッチングも順調だった。しかし4回の先頭に四球を出してしまい、そして、あろう事か盗塁を許してしまった。

鷹匠さんの送球は完全にアウトのタイミングだったのだが、ショートが球をこぼしてしまったのだ。正直、ショートのエラーなのであるが、約束通り白神は即刻交代させられた。そして後を継いだ準備不足のピッチャーが打ち込まれて6点を一気に失った。

「盗塁されたら即交代」なのだから、いつでもイケるように控えは準備しておくべきなのだが、ブルペンも完全に鷹宮を舐め切っていた。大失態に冬月のオヤジがブチ切れると、絶好調だったはずの打線に焦りが出て、鷹宮のエースのスローカーブを引っ掛け続ける。結局、4-6で負けて夏の大会のシードすら手に入らなかった。

学校に戻った俺たちに課されたのは、ベースランニングダイヤモンド100周。冬月のオヤジから、様々な罵倒を受けながら走った。

「そもそもお前がしょうもない縛りを設けなきゃ普通に勝ってただろうよ!」

俺はそう叫びたい気持ちを堪えて走るしかなかった。自分は試合そのものには一切関与せず、スタンドで見ていただけ。それでも、チームの結果を自分の結果と受け止め、その責任を試合に出ていた人間と同じように背負って走らねばならない。これがチームスポーツだった。



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この負けは、罰走そのもの以上のダメージをチームに与えた。ノーシードから埼玉を勝ち上がらねばならないという事で、この夏の甲子園出場にも暗雲が垂れ込め始めた。グランドにはどんよりとした空気が漂っていた。練習試合でいくら勝っても、公式戦ではイマイチ勝ち切れない。モチベーションが低下し、いくらやっても無駄なんではないかという考えも浮かびつつあった。そんな鬱憤を、新入生相手にぶつけ始めるような先輩も居て、彼らの醜さときたらなかった。

「また、やってますね」

ある日の全体練習後の自主練習で、鷹匠さんがつぶやいた。その視線の先では、3年の背番号二桁の先輩が1年を
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