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偽典 ドラゴンクエストV 勇者ではないアーベルの冒険
第8章 そして、伝説へ・・・
最終話 帰還
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・・・・失言?
何のことですか?」
後輩は最初の時ほどではないが、俺の言葉に驚いている。

「え?」

「先輩・・・・・・」
「いやぁ、その、なんだ」
俺は、後輩が俺のそばにすり寄ってきたので、少しずつ体をずらしながら、
「クリスマスイブに、付き合っている相手がいるかと聞いたのだが」
「・・・・・・、先輩?」

「あれだけ、怒ったのなら鈍感な俺でも、さすがに気づく」
「・・・・・・」

「ようやく、気持ちがわかったよ」
「?」

俺は、自身を持って頷く。
「失恋して傷ついたところに、俺が塩を塗るようなことを言ったのだ。
すまない、許してくれ」
俺は、後輩の目をみてから大きく頭をさげる。
さすがに、からだがまだ言うことを聞かないため、頭だけしか下げていないのだが。

「先輩・・・・・・」
彼女の顔は、急に虚をつかれた表情を示し、

「あなたという人は!
本当に、あなたという人は!」
怒りの感情を爆発させた。
「許して、くれないのか?」
俺は、自分が、虎の尻尾を踏んづけてしまったことを理解した。
「良い機会です、入院中は覚悟してください!」
彼女は、俺の謝罪に対して、説教を開始した。



この、後輩による第1回説教大会は、後輩の声に反応して何事かと駆けつけた看護師が、俺の病室に駆けつけて、必死に謝る俺の姿と、泣きながら、怒りながら、笑うという絵にもかけない表情で俺を叱り続ける後輩の姿を確認するまで続けられた。

「意識が回復したなら、すぐにナースコールを呼んでください」
「はあ、すいません」
俺と同じくらいの年齢で、異様に顔が整っている看護師から冷静な注意を受ける。
ひょっとしたら、付き添いの後輩への注意かもしれないが、俺は素直にあやまる。
今のところ、体の動きが鈍いこと以外、体調は問題ないが、それでも迅速な対応が必要なのかもしれない。医学的知識や回復呪文の無い俺には、目の前の看護師に頼るしかないのだ。

「それと、痴話喧嘩は退院してからにしてください」
「?」
俺は、首を傾げる。
俺は、ほとんどしゃべっていない。
意識が戻らない状況であれば寝言を言うことも無いだろうし。

「先輩の前で、変なことを言わないでください!」
看護師の言葉に、
「そんなことを言ってもいいの?」
看護師は、細目を少しだけ大きくし、口を少しだけゆがめて、笑みを作る。

「言わないで!」
後輩は、思わず叫んでいた。

看護師は、口に指を当てて、静かにするように注意すると、後輩は両手で口をふさぐ。
「先生を呼びますから、静かに待つように」
「はい」
後輩は、素直に看護師の言葉に従った。


残念ながら説教大会は、この後も病院内だけでも3回は開かれた。
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