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偽典 ドラゴンクエストV 勇者ではないアーベルの冒険
第8章 そして、伝説へ・・・
最終話 帰還
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葉が落ち、冬の季節が訪れたことを思い起こす。
100歳を過ぎ、妻に先立たれた俺は、体調を崩し、入院生活を続けていた。
もう、長くない。
もうすぐで、妻に再会できるかなと思った。

退職して、多くの友人達とも見送ったり、疎遠になってしまったため、見舞いにくる相手もない。
子供達も、それぞれ独立しているため、本当にたまにしか、顔を出さない。
俺には、ゆっくりとした時間が与えられた。
俺は、その時間で、かつて過ごした異世界のことを思い出す。
何十年も前のことなのに、かつて冒険した異世界のことが、急に鮮やかに思い出してきた。
毎日病院で出される食事の内容など、すぐ忘れるのにもかかわらず。

あちらの世界のみんなは、どうしているのだろうか。
ソフィアはともかく、一緒に冒険していた仲間達は、今の俺よりも一回り若かった。
まだまだ、元気かもしれない。
平和になった世界で、どのように暮らしているのだろうか。
ひょっとしたら、人間同士の争いが起こっているかもしれない。

彼女たちなら、簡単に死ぬことはないだろうが、争いは、憎しみと悲劇しか生まれない。
そうならないことを祈った。



どのくらい、時間がすぎたのだろうか。

体が、動かなくなってきた。


意識が、ゆっくりと、今の自分の頭髪のように、あるいは霞がかかったかのように、薄くなってきた。




どうやら、お迎えが来たようだ。









苦しまずに死ねることに感謝しながら、俺は、目を閉じて深い眠りについた。
















「アーベル!アーベル!」
騒がしい声に、安らかな気持ちを遮られたことに、少しだけ怒りを覚えた俺は、ゆっくりと瞼を開ける。
「よかった・・・・・・」
もはや、自分の意志では満足に動かせない体を強く揺さぶる少女の姿を見て、
「!」
ここが、ドラクエ3の世界であること、住み慣れた家にいること、少女が何十年も前に別れたはずのテルルであることに気が付いた。

視力が回復し、周囲をみると、セレンや父親のロイズそしてソフィアもいた。
全員、俺が別れた時と変わらない姿だ。
俺自身の姿も、あのときと変わってはいなかった。


「ほんと、十数年ぶりかしらね。
アーベルが顔を赤くして、慌てたのは・・・・・・」
途中から言葉を詰まらせながら、数十年ぶりに再会する女性が俺をやさしく包み込む。
暖かい匂いが、優しく包み込んでくれる。





「・・・・・・ああ、ただいま」
俺の一つの人生が終わり、アーベルとしての人生の続きが始まった。
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