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皇太子殿下はご機嫌ななめ
第49話 「男子誕生」
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クシア・フォン・ブランケンハイム様が、無事男子を出産されました。元気な男の子です!! 帝国万歳〜!!」

 ■帝国某所 とある居酒屋にて■

 客が来ねぇな〜。とぶつくさ言っていた店主は、放送を聞いた途端、従業員に声を張り上げた。

「おい、お前ら酒だ。酒の用意をしろっ!!」
「は?」
「なにトロトロしてんだ!! 来るぞ、あっという間に席が埋まっちまうぞ」

 今一反応の薄い従業員達に業を煮やしたのか、店主はもう一度声を張り上げた。

「なんなんです?」
「皇太子殿下になー。子どもが生まれたんだよ!!」

 店主の言葉が終わる前に、最初の客が飛び込んできた。

「おやじー。酒だ。祝杯を上げるぞ」

 放送を聴いた途端、思わず家を飛び出してきたのだろう。中年の男が勢いよく席に座り込む。
 いつもなら店主の顔色を窺うように、おずおずと酒を注文する陰気な男だった。ねずみに似た顔のしみったれた男だと、店主はいつも思っていたものだったが、普段とは違う陽気な声だ。

「帝国万歳!!」

 黒ビールの大ジョッキを掲げて、一気に飲み干す。
 そのすぐ後からも客が飛び込んできた。
 いつもなら店を閉める頃なのだが……。ドンドン人がやってくる。
 どいつもこいつも口々に帝国万歳と、声を張り上げつつ酒を飲み干していった。

「よし、飲もう」

 ねずみ面の陰気な男が、見ず知らずの客と肩を組んで陽気に歌いだす。
 調子はずれな歌だった。
 だが誰も笑わない。
 それどころか一緒になって歌いだした。
 戦争に行った息子を案じる親も、皇太子の子どもが生まれたことを祝う者も、一緒になって歌う。
 あっという間に、お祭騒ぎになってしまった。
 オーディンのあちらこちらで同じようなお祭騒ぎが行われている。それを止める者もまたいなかった。

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