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魚屋繁盛
第四章

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 そのご隠居のことをだ、準也は麻琴に言うのだ。
「あの人が間に入っていつも喧嘩が止まるだろ」
「ええ、いつもね」
「だからな、ここはな」
「吉松のご隠居さんとお話してよね」
「そうしてみるか?」
 こう麻琴に話す。
「そうするか」
「そうよね、それじゃあ」
「行くか、二人で」
「けれどお店に普通に二人で行くのはね」
 そうして行くのはとだ、麻琴は準也に注意した。
「私達二人が一緒にいると」
「ああ、親父達に見つかったら元も子もないな」
「そう、だからね」
 それでだと言う麻琴だった。
「止めておきましょう」
「そうだな、それじゃあな」
「ご隠居さんと二人でお会いするにしても」
 それでもだというのだ、二人の父達を止められる唯一の存在である彼と会ってもだというのである。
「場所は考えないと」
「じゃあ何処でお会いしようか」
「そこからね」
「ああ、そうだな」
 二人はこのことから考えることになった、そして。
 準也は今度はこう麻琴に言った。
「神社だな」
「駅前の?」
「ああ、あそこの裏でな」
 会おうというのだ。
「会おうか」
「あそこの裏なら人気がないしね」
「しかも神主さん口が堅いしな」
 職業柄そうであるのだ、宗教家は様々な人から相談を受けるがその中には口外してはならないものも多いからだ。
 それでだ、彼は言うのだ。
「あの人なら俺達の話を聞いてもな」
「喋ったりしないから」
「ああ、だからいいだろ」
「そうね、それじゃあね」
「吉松の隠居さんに連絡して来てもらってね」
「俺が行くな」
 準也自らそうするというのだ。
「それじゃあな」
「ええ、わかったわ」
 こう話して打ち合わせをしてであった。
 まず準也が商店街のおもちゃ屋に行った、そして。
 その隠居に会った。隠居は百歳になろうとしているが本当に元気だった。喋り方もしっかりとしており髪の毛も真っ白だがあまり減っていない。
 その隠居にだ、準也は出された茶を啜りながら言った。
「ちょっと駅前の神社の裏まで一緒に」
「何じゃ、そちらの家のことか」
「ええ、まあ」
 そうだとだ、準也は詳しいことは話さずに隠居に答えた。
「そのことで」
「ふむ、ではな」
「来てくれるんですか」
「どうせ暇じゃ」
 それでだ、隠居も行こうというのだ。
「だからな」
「それじゃあ」
「行こうぞ、いや歩くのも若い子と話をするのもな」
「お好きですか」
「健康によい」
 それでいいとだ、隠居は飄々とした笑顔で準也に応える。
「だからじゃ」
「じゃあお願いします」
「うむ」
 隠居は応えそうしてだった、準也に案内されて駅前の神社の裏に来た。そしてそこで待っていた麻琴を見て言った。
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