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誰が為に球は飛ぶ
焦がれる夏
参拾弐 強豪私学の意地
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めに来た真っ直ぐに藤次は手を出す。
クイックモーションから投げ込まれる球の勢いに思わず体が反応してしまった。

ブンッ!

高めのボールゾーンに138キロが突き刺さり、藤次のバットは三度空を切る。
琢磨はガッツポーズを作りながら全速力で自軍ベンチに駆けていく。

(手玉にとられてるやんけ…)

藤次は顔を歪めて天を仰いだ。
エースの高雄だけでなく、本来投手でもない琢磨からも打てなかった。

「くそっ!」

バットのヘッドを乾いた黒土に叩きつけた。




ーーーーーーーーーーーーー


「まだ、投げられるかい?」

8回裏のマウンドへ向かう真司に、ネクストで防具を取り付けながら薫が声をかけた。
真司はその言葉に大きく頷いた。

「もちろん。」

そう言い残して真司はマウンドに上がる。
気温も湿度も高い、灼熱のマウンド。
ここまで大会通算37回を投げている。
今日に限っては球数は既に100球は軽く超えて、汗は球のようになって顔中に浮かんでいた。
それでも投げ続けるエース・碇真司。

(投げる…何回だって、何球だって!)


その右腕が唸りを上げた。






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