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渦巻く滄海 紅き空 【上】
五 砂上の少年
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危うげなく着地する。
前方の木の枝上に誰かが倒れている。その人物の赤髪を見てナルトは思わず呟いた。
「多由也…?…―いや違う」
下忍の少女が気絶している。なんとも曖昧な体勢で彼女は枝の端に倒れていた。少女の全体重を支えるには細い枝では難しいらしく、今にも折れそうである。

その時突風が吹いて少女の身体がグラリと傾いた。

「チッ」
ナルトは舌打ちすると少女の身体を抱き止めた。
(木ノ葉の忍びでも音忍でもないな…砂忍にも女がいたがあれよりは幼いか…)
考え事をしながら後ろ手にクナイを投げる。ザクリと何かが貫通する音が響いた。
(とりあえずコイツを下に降ろすか)
そう結論付けてナルトは少女を横抱きにしながら跳び降りる。


彼の立ち去った木の幹には、大きなムカデが一匹縫い付けられていた。







赤髪の少女――香燐は誰かに抱き止められた衝撃により意識を取り戻した。自身を抱える相手の存在を確認しようと薄く目を開ける。


そして彼女は恋に落ちた。


端整な顔立ちに、突き抜ける空に似た蒼い瞳。そしてまるでどこかの王子のように風に靡く美しい金髪。
自身を助けた男の、全てが眩しく感じられる。更に、背後から襲い掛かろうとしていた大ムカデを見向きもせずにクナイ一本で仕留めた彼の手際に益々惚れた。


男の事を知りたいと、気絶しているふりをしてこの状況に甘んじる香燐。彼女はある意味、うちはサスケに盲目的な春野サクラと似通っていた。

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