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渦巻く滄海 紅き空 【上】
五 砂上の少年
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た。


「砂隠れ。さっさと行け。二度は言わない」
「我愛羅……行こう」
姉と兄に促され、我愛羅はしぶしぶ砂を瓢箪の中に戻す。憎々しげに君麻呂を睨みつけたまま、彼は塔に向かって歩き出した。





我愛羅達の後ろ姿を見送った君麻呂は傍の茂みに目を向ける。今までじっと息を潜めてきたキバ達は彼の気配に神経を尖らせた。
人をあっさり殺した我愛羅の術を、これまたあっさりかわし平然とする君麻呂の存在に緊張する。

(砂隠れも…音隠れも…ヤバイ…)
つうっとキバの顎を汗がつたっていく。手にじわりと嫌な汗が滲んだ。
(どうするどうするどうする……っ)
もしここで襲われたら殺されるかもしれない。そもそも戦いを見に行こうと言い出したのは自分である。自分が囮になって二人を逃がすか?けれど三人とも全滅する可能性もある…と恐怖に駆られるキバの葛藤は無駄に終わった。

なぜなら君麻呂は何をするでもなく、キバ達がいる茂みから離れて行ったからだ。完全に気配が消えた事に安堵した彼らはほっと息をつく。
「音隠れの奴に…助けられたな…」
ぼそりとシノが呟いた。同じ心境なのか、キバとヒナタもその言葉に頷く。

「とにかく…何モンかは知らねえが、砂隠れと音隠れ……コイツらはヤバイな…」
キバの切実な言葉が木立の中で空しく響いた。














試験開始から二日目の早朝。

大蛇丸と別れたナルトは生い茂る木々の中を上忍ましてや下忍には到底視界に捉えることの出来ない速度で走っていた。
(大蛇丸は確か……イタチの弟に呪印をつけたと言っていたな)
先ほどのアンコと大蛇丸の会話から大蛇丸の意図を読んだナルトは、イタチの弟―うちはサスケがいる木ノ葉の第七班を探していた。

ナルトは今回大蛇丸が企てている計画の内容を聞いていない。
当の大蛇丸もナルトがまさかこの計画に参加するとは思っていなかったらしい。
大蛇丸にとってナルトは、味方につけばかなりの戦力になるが同時に最も敵に回したくない人物である。そのためあちらこちらに飛び回る彼とつかず離れずの態度をとっているのだ。計画もナルトが加われば楽に事が進むのだが、計画の進み具合でいつ彼が敵に回るか読めないと判断した大蛇丸は計画の一切をナルトに知らせなかった。
しかし計画の事を耳にしたナルトは大蛇丸に無断で君麻呂と多由也を携えて中忍試験に赴いた。

草忍に扮している大蛇丸が驚愕の表情を一瞬浮かべていたのを思い出して、ナルトはくくっと喉の奥で笑う。思い出し笑いをしながらも走る速度が一向に衰えないのは流石といえるだろう。


「ん?」

ふと緑豊かな森には似つかわしくない赤が視界に入り、ナルトは速度を落とした。前方の幹を蹴って空中で後転し、巨木の枝に
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