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乱世の確率事象改変
諦観の元に
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少しでも気休めになればと思って自分の思った事を口に出してみた。すると詠ちゃんが少し眉根を寄せて続ける。
「霞の軍を抑え込んだし、外敵からの侵略を跳ね除け続けてきた事を見ても公孫賛の軍は確かに相当強いわ。でも甘い。何が問題かは……秋斗も分かってるわね」
 話を向けられて私の頭をくしゃりと一撫でしてから秋斗さんは口を開いた。視界の端で雛里ちゃんが何故か顔を伏せた。
「月、気遣いありがとな。まず一つ目、白蓮の軍は戦略視点も戦術視点も薄く、優秀な軍師と呼べる者が一人もいないんだ。
 二つ目、白蓮の凄い所と弱点はたった一人で土台を積み上げた所なんだ。そして、自分が将も軍師も王も……全てを担ってきたが為に前線に立たざるを得ない。兵はその姿をこそ見てきてしまったから。
 如何に星と牡丹がいてもそこだけは止められないし、それを見逃すほど袁家は甘くない」
 続けようとしたが、そこまでで彼は口を閉じた。その先に続く言葉が何であるかは、分かってしまった、気付いてしまった。
 正々堂々と戦うのが袁家であったなら、私達はここにいないだろう。どのような手を使おうとも勝ちに来る。そして袁家であるなら、捕まれば最後、権力の代行者のすり替えの為に公孫賛さんだけは確実に殺されてしまうということ。逃げた場合も――――。
 初めから、あの洛陽の時点で希望など無かったのだ。私はそれを……董卓という被害者の立場から、一番残酷な形で突きつけてしまった。
「あ……ああ、ご、ごめんなさい、そんなつもりじゃ無かったんです」
「クク、月は優しいな。あまり気にするな」
 ゆっくりと優しく頭を撫でてくれる手は暖かくて、余計に申し訳なくなってしまう。
「まあ、いい機会だ。そのまま理を詰めて行くのもいいだろう。少し付き合ってくれるか?」
「別にそれはいいけど……」
「で、では……秋斗さん……眠くなったらすぐに眠れるように寝台の上で煮詰めましょう」
 雛里ちゃんの唐突な提案に、秋斗さんはしまったというような顔をした。
 それをみた詠ちゃんはクスクスと笑ってポンと肩に手を置いて諦めろと暗に伝える。
 そんな三人の様子に、沈みかけていた私の心も少し落ち着き、最近では決まってしまった配置で並んだ。
 いつも通り他愛ない会話を織り交ぜながらも、軍議会場となった寝台の上での夜は更けていった。
 

 †


 桃香様の部屋に来て幾刻、沈黙が場を支配していた。
 愛紗さんも、鈴々ちゃんも何も話す事が出来ない。
 夜に一人では壊れそうな時があるからと言ったあの人の言葉の通りに、私達は主の為に何か出来ないかと思い、ここに来ただけ。
 弱々しく微笑む桃香様の表情は儚げで、でも瞳には光が溢れていた。
「ふふ、心配、掛けちゃったね。ありがと、一人にしてくれて」
 声は力強く、私達の耳に
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