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剣の丘に花は咲く 
第十章 イーヴァルディの勇者
第七話 矛盾が消えるとき
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 ハルケギニアの大国ガリアにある数多の城の中でも、アーハンブラ城ほど珍しい城はないと言っても良かった。何が珍しいのかと言えば、幾つもあるが、特に珍しいのは、アーハンブラ城は人の手によって造られたものではなく、エルフの手によって造られたという点である。
 元々はこの砂漠の小高い丘の上に建てられたアーハンブラ城は、今から千年前ハルケギニアの聖地回復連合軍が多くの犠牲をもってエルフから奪った城であった。アーハンブラ城を奪った聖地回復連合軍は、その先に国境を制定し、半ば強引にエルフたちにそれを認めさせることに成功した。エルフとの国境の境に建つアーハンブラ城は、それから千年の間、幾度となく行われた聖地回復と言う名の下に行われた戦いの拠点として使われ、戦いの度にエルフに取り返されたり奪い返したりを繰り返された。しかし、生地回復連合軍がアーハンブラ城を奪い返した数百年前の聖戦が最後となり、現在はガリア王国の城の一つとして扱われていた。その聖戦が行われていないこの数百年の間、アーハンブラ城は城砦としては規模が小さいという点により、軍事上の拠点から外れたために、今では城は廃城として扱われるようになってしまったが、城が建つ丘の麓に広がるオアシスがあったことから、段々と宿場が増えていき、今ではそれなりの大きさの交易地となっていた。
 




 エルフの手による細部まで作りこまれた幾何学模様の彫刻が刻まれたアーハンブラ城の城壁は、夜の空に輝く満点の星と二つの月の光を受け、淡く幻想的な光を発していた。そんな光に照らされた、異国情緒に満ちたアーハンブラ城の麓に広がる宿場町にある小さな一軒の居酒屋『ヨーゼフ親父の砂漠の扉』亭に訪れる客の口からは、最近アーハンブラ城についてのある噂がよく酒の肴としてよく口に上がっていた。それも旅行客や旅の者の口からではなく、この宿場町に住む地元の者の口からであった。
 いくら古くエルフが建てたとは言え、アーハンブラ城は既に廃城であり、異国の者ならばともかく、地元の者にとっては見慣れたものであるため、わざわざそれが話題になることはなかった。では何故そんなことになっているのかといえば、つい先日のことであるが、王軍の一部隊が城に入城したためである。
 酒の肴として上がるくらいである。アーハンブラ城の噂は幾つもありそして突飛なモノが多かった。
 そんな中、一人の商人が、酒を片手に店の主人に顔を寄せにやにやと笑いながら声を掛けていた。

「なあなあ親父知ってるか? 今噂で持ち切りのアーハンブラ城に兵士がやって来た理由をなぁ」

 居酒屋の主人はグラスを拭きながら、カウンターの向こうを横目でチラリと見る。商人の顔はこれまで飲んだ酒により顔が赤く染まり、目は揺れて濁っていた。主人は内心溜め息を吐きながら商人に顔を向ける。こういう手合いは相手
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